暗号資産を相続するときの注意点|パスワードの復元・相談先ガイド

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暗号資産の相続は手続きが複雑で、パスワード紛失等のリスクもあります。相続手続きでは暗号資産の把握は不可欠のため、復元に強い専門家や弁護士への相談がおすすめです。

暗号資産は預貯金や現金、不動産などの資産と同様に、所有者が亡くなられた際には「相続財産」の対象となり、相続税が課税される可能性があります。

暗号資産の取引を行っている方は増加していますが、預貯金や不動産など昔からある資産と比較すると、相続の方法や財産の調査については広く認知されておらず、相続人が苦労するケースは決して少なくありません。

そこで、本記事では暗号資産の相続について、金融庁のアドバイスも交えながら復元方法や相談先をわかりやすく解説します。

目次

なぜ「暗号資産の相続」は複雑?押さえておきたい3つの注意点

弊社コラムでは、過去に暗号資産の相続について触れてきました。暗号資産は年齢・性別にかかわらず多くの人が取引していますが、一般的な株式投資と比較すると敷居は高く、相続財産に含まれていると「どのように扱うべきかわからない」という人が多い傾向があります。そこで、本章では暗号資産の相続で、押さえておきたい3つの注意点を紹介します。

1.遺産相続が総額・種類の確定が必要

相続手続きは、遺産分割や相続税申告などの手続きを進めるために、被相続人(亡くなった人)の財産をすべて洗い出し、総額を確定する必要があります。

暗号資産も法的に「相続財産」として扱われるため、相続人は被相続人が生前暗号資産の取引をしていなかったか、しっかりと調査する必要があります。

また、相続税の申告が必要となった場合、暗号資産の評価額の算出には注意が必要です。
国税庁のガイドラインでは、財産評価通達上「評価方法の定めのない財産」に準じて、相続開始日時点の時価で評価することが多いとされています。(活発ではない市場の場合は評価方法が異なる)

ただし、暗号資産の評価は相続税および暗号資産換金時の売却益に対して、最大55%課税という重い課税状況があり、2025年の衆議院予算委員会でも国会でも問題視されています。(※1)

今後相続税・所得税の課税や評価については法改正が行われる可能性もあるため注意が必要です。

(※1)参考URL 衆議院予算委員会ニュース 【第217回国会】令和7年2月28日(金)、第17回の委員会が開かれました。

2.暗号資産が預貯金などより手続きが複雑

銀行や証券口座のように、金融機関に書類を提出すれば手続きが進む相続財産とは異なり、

暗号資産は、本人のウォレットや取引所アカウントに厳重に紐づいており、第三者がアクセスするためには注意が必要です。

取引所によっては、スムーズな相続手続きが可能ですが、あまり有名ではない暗号資産は手続きに時間を要するケースもあります。海外取引所を利用していた場合、日本法だけでなく外国の利用規約や現地法の確認も必要となるおそれがあり、注意が必要です。

h3 3.家族が暗号資産にアクセスできないおそれがある

暗号資産の相続で多いトラブルが、「パスワードや秘密鍵がわからない」というケースです。

暗号資産はブロックチェーン上で管理されており、パスワードや秘密鍵を失うと金融機関のような「再発行」や「再設定」の仕組みが存在しません。被相続人のスマートフォンやパソコンにウォレットデータが残っていても、

  • 暗号化されていて開けない
  • シードフレーズを紛失している
  • デバイスが破損している

といった理由で、資産が取り戻せなくなるリスクがあります。これらは「資産が存在していても誰も触れない」状態となり、相続財産の喪失や相続税の未計上による追徴課税につながるおそれもあるのです。

そのため、相続後に家族が慌ててデバイスを操作するのではなく、専門家にデジタルフォレンジック(復元)を依頼することが推奨されます。

相続人がやるべき!暗号資産の確認ステップとは

暗号資産の相続で多いトラブルは、「存在に気づかない」「パスワードがわからない」ケースです。相続人として、まず行うべきは「どこに・どのような形で暗号資産が保有されていたか」を確認しましょう。本章では、3つの基本ステップを紹介します。

1.「被相続人が取引していた可能性」を探る

「うちの親は暗号資産なんて興味なかった」と思い込むことは大変危険です。
暗号資産は少額から始められるうえ、近年では安定した成長のため投資している人は多く、家族が知らないうちに取引をしているケースは少なくありません。

まずは、被相続人のスマートフォンやパソコンのメール・LINE・ノートアプリなどを確認しましょう。


暗号資産取引所(例:bitFlyer、Coincheck、Binanceなど)からの通知メールや入出金履歴が残っていることがあります。見落としがちな紙片やUSBメモリ、バックアップ用の外付けHDDにも注意が必要です。

また、生前に利益を確定している場合は所得税の課税対象のため確定申告をしている場合があります。生前の確定申告の控えを確認することも怠らないようにしましょう。

2.取引所口座かウォレットかを確認する

暗号資産は、大きく分けて「取引所口座」と「ウォレット」の2種類に保管されます。

  • 取引所口座国内の取引所にログインして管理されているもの。ID・パスワードが分かれば、運営会社に相続人としての開示請求を行うことが可能です。
    死亡診断書や戸籍謄本などを提出し、正式な手続きを踏めば、残高確認や出金が認められる場合があります。
  • ウォレット(個人保管型)PCやスマホ、専用端末(ハードウェアウォレット)に直接保管されるタイプです。
    この場合、取引所を介さないため、秘密鍵やリカバリーフレーズがないと資産にアクセスできません。
    物理デバイスの破損や暗号化ファイルのロックにより、専門技術が必要になるケースもあります。

暗号資産の知識に自信がない、不安がある場合には相続開始後速やかに専門家へ相談することがおすすめです。

3.アクセスできない場合は、技術的な復元相談を検討

パスワード・秘密鍵が分からない場合、自力での復元はほぼ不可能です。誤った操作をすれば、ウォレットデータそのものを破損するリスクもあります。

こうしたケースでは、暗号資産のフォレンジック(解析)やリカバリーを専門とする技術者への相談が有効です。

Goodreiでは、ウォレットファイルや暗号化されたバックアップの復号、デバイス障害からのデータ復旧など、安全な方法でアクセスを試みるサポートを行っています。

ウォレットのパスワード・秘密鍵がわからないときの相談先

「ウォレットにアクセスできない」「パスワードがわからない」「秘密鍵が見つからない」といった悩みに直面したら、まずは慌てず専門家へ相談しましょう。

手探りで操作してしまうとウォレットが初期化されたり、データ破損によって資産が完全に失われるリスクがあります。本章では主なおすすめの相談先を解説します。

暗号資産調査の専門家

暗号資産復元の分野には、フォレンジック(デジタル解析)を専門とする技術者が対応できます。復元や調査の実績を持つ専門家へ依頼することがおすすめです。

例として、「goodrei」では、犯罪捜査でも使われる専門のツールを用いて調査を行っているため、高い精度で暗号資産の情報を発見しています。


暗号資産以外にも、被相続人のデジタル資産全般(ネットバンキングなど)の検索も可能です。

※必要に応じてデジタル資産サイトへ誘導を入れてください。

弁護士

パスワードやウォレット情報がわからないだけではなく、大切な被相続人の資産が隠されているおそれがある場合は、弁護士への相談も検討できます。

弁護士に相談することで、

  • 被相続人が保有していた暗号資産の法的調査
  • 相続人の地位を証明する書類の準備全般
  • 国内外の取引所への開示請求・出金手続きの代理
  • 遺産分割にまつわるトラブルなど

といった相続手続き全般を安全に進めることができます。ただし、弁護士に相談する前に、依頼する弁護士が暗号資産を含んだ相続に詳しいか、しっかりと調べておくようにしましょう。

まとめ

暗号資産の相続は、預金や不動産と比べて法的にも技術的にも新しい課題を多く抱えています。相続税の評価やアクセス権限の確認、ウォレットのパスワード復元など、いずれも専門知識が求められる領域のため注意が必要です。

特に、パスワードや秘密鍵を知らないまま放置することは「被相続人の資産を失う」ことになってしまいます。ブロックチェーン上のデータは、所有者が鍵を失えば永久に取り出せなくなるため、早期の対応が重要です。


家族が安心して相続財産を受け継ぐためにも、万一のときには専門家へ相談しましょう。

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