
親や祖父母の家を相続することは、単なる財産の引き継ぎではありません。そこには家族の歴史や思い出、日々の暮らしの積み重ねが詰まっています。柱に残る子どもの成長の跡、食卓を囲んだ日々、庭の木々など、家という空間には、家族の記憶が刻み込まれているのです。
そのため、「家をどのようにするのか」という問題は、単なる資産の分配を超えて、家族の絆や人生観が交錯するテーマになります。しかし、法律上は、家も不動産という資産であり、登記や評価、税金、名義変更といった現実的な手続きが不可欠です。
感情だけで話を進めると、登記が終わっていなかったり、兄弟間で名義をめぐる争いが起きたりすることがあります。家の相続を放置すると、思い出の場所が「空き家」となり、維持管理が難しくなるかもしれません。老朽化や固定資産税の負担、近隣への迷惑などの問題が表面化して、結果的に「負の遺産」になってしまうこともあるのです。
つまり、家の相続は「大切な記憶をどのように守るのか」と「現実的な責任をどのように果たすのか」の両立が求められます。感情と法律の両方を理解しながら、冷静に手続きを進めることが、家族の未来を守る第一歩です。今回の記事では、家を相続するときに必要な手続きの流れ、評価の考え方、相続税のポイント、そしてトラブルを防ぐための実践的な方法をわかりやすく解説します。
何をすれば良いのか?家の相続の基本

家を相続する際には、ただ「家に住む」や「名義を変更する」だけでは済みません。家は現金や預貯金のように簡単に分けられるものではなく、建物や土地といった不動産として法的手続きを伴います。
さらに、家には家族の思い出や歴史が詰まっているため、感情的な判断だけで進めると、登記や相続税、名義変更などの手続きで、トラブルが起こるかもしれません。ここでは、家を相続するときに、まず押さえておきたい基本の考え方と、実際に行う手続きの流れを紹介していきます。
家は「不動産」として相続される
相続の対象となる財産は、現金や預貯金、株式などの金融資産だけではありません。自宅や土地といった「不動産」も、法的にはすべて相続財産に含まれます。つまり、被相続人(亡くなった方)の名義で登記されている建物・土地は、原則として、相続人に引き継がれることになります。
一方で、不動産の場合は「誰が相続するのか」が決まっただけでは不十分です。遺産分割協議書で、相続人の間で合意が成立しても、登記簿上の名義(所有者)を変更しないと、実際の権利関係は、法的に変わりません。
たとえば、名義が亡くなった方のまま放置されていると、売却やリフォーム契約などの手続きができず、トラブルになる可能性があります。そのため、家の相続では、まず「誰がどの不動産を相続するのか」を明確にしたうえで、速やかに法務局で相続登記を行うことが、非常に重要です。
家の相続手続きの流れ
家を相続する際には、法律上の権利関係を整理して、登記や税務申告までを正しく行う必要があります。ここでは、家の相続における、主な流れを順を追って説明します。
- 相続人の確定
まず行うべきは、「誰が法的な相続人になるのか」を明確にすることです。被相続人(亡くなった方)の戸籍を出生から死亡まで遡ってすべて取得して、配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹など、法定相続人を確定します。
戸籍の取り寄せには、本籍地の市区町村役場での請求が必要です。特に、離婚・再婚や認知などがあった場合は、思わぬ相続人が判明するケースもあるため、慎重な確認が欠かせません。
- 遺言書の確認
相続人が確定したら、次に行うのが遺言書の有無の確認です。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などの種類があり、内容が有効であれば、法律上、遺言の内容が最優先されます。
特に近年は、自筆証書遺言を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」の利用が増えています。遺言書の有無を調べる際には、法務局での検索制度を活用することも可能です。勝手に遺言書を開封してしまうと、過料の対象になる場合もあるため、家庭裁判所での「検認」手続きを経てから、内容を確認しましょう。
- 相続財産の調査
相続人と遺言書が確認できたら、次は家や土地の所在・評価を調べます。固定資産税納税通知書や登記簿謄本(登記事項証明書)を取り寄せて、被相続人名義の不動産の範囲と、評価額を把握します。同時に、預貯金・株式・生命保険など他の財産も調査して、全体像をまとめる「財産目録」を作成するとスムーズです。
この時点で、家が共有名義になっている場合や、抵当権(住宅ローンなど)が設定されている場合には、後の手続きに影響するため注意しなければなりません。
- 遺産分割協議
相続人全員で「誰がどの財産を相続するのか」を話し合い、全員の合意を得るのがこの段階です。家を相続する場合、「その家に誰が住むのか」「ほかの相続人への代償金をどのようにするのか」など、感情的なトラブルが起こりやすい場面でもあります。
合意がまとまったら、遺産分割協議書を作成して、全員の署名・実印押印を行います。1人でも反対する相続人がいると、協議は成立しないため、その場合は、家庭裁判所での調停や審判に進むことになります。
- 登記申請(名義変更)
遺産分割協議で取得者が決まったら、法務局で相続登記を行います。この手続きをもって、法的に家の名義が相続人へ移転します。申請には、遺産分割協議書・戸籍・登記原因証明情報・固定資産評価証明書などの書類が必要です。
2024年4月からは、相続登記が義務化されました。相続開始から、3年以内に登記をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることもあります。そのため、早めの準備と専門家への相談が重要です。
- 相続税の申告・納付
最後に、相続税の申告が必要なのかを確認します。相続税には「基礎控除額」があります。3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) が非課税枠です。 この額を超える場合には、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、税務署へ申告・納付を行なわなければなりません。
不動産は評価額が高くなりやすく、思ったよりも、課税対象になるケースもあります。特例として、小規模宅地等の特例などを活用すれば、家にかかる税額を大きく減らすことも可能です。
相続登記義務化について
これまで相続登記は任意でしたが、2024年4月の法改正により義務化されました。相続によって不動産を取得した人は、「相続があったことを知った日から3年以内」に登記申請を行う必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料を科される可能性があるのです。
登記を放置すると、家を売却・担保設定・名義変更できなくなり、「所有者不明土地」として、扱われるかもしれません。また、相続人の一部が亡くなると、権利関係が複雑化して、登記や分割がほぼ不可能になるケースもあります。
一方で、登記を済ませておけば、正式な所有者としての権利が守られて、将来の売却や相続もスムーズに行えます。2024年の義務化は「罰則」ではなく、次世代への円滑な承継を促す制度ともいえるのです。家を相続した場合、できるだけ早めに、登記の手続きを進めましょう。
どれくらいの価値になる?家の評価と税金について

家や土地を相続するとき、多くの人が気になるのが「この家はいくらの価値になるのか」という点です。実際に不動産を相続する場合、税金の計算に使われる金額は、売買価格や不動産会社の査定額とは異なります。相続税では、国税庁が定めた基準によって算出される「相続税評価額」をもとに計算が行われるため、実際の市場価格よりも低い評価になるのが一般的です。
しかし、その算出方法や評価の考え方には一定のルールがあり、土地や建物の条件によっては、評価額が大きく変わることもあります。ここでは、相続税評価額の基本的な仕組みから、土地・建物ごとの評価の注意点、さらに節税につながる特例制度までを紹介します。
相続税評価額の考え方
相続税を計算するときの基準になるのは、実際の売買価格ではなく「相続税評価額」と呼ばれる特別な金額です。これは、国税庁が定めたルールに基づいて計算されるもので、実際の市場価格よりも低くなるのが一般的です。
まず、土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。路線価方式とは、国税庁が毎年発表する「道路ごとの1㎡あたりの価格(路線価)」をもとに計算する方法です。たとえば、路線価が1㎡あたり20万円で、土地の面積が200㎡なら、20万円 × 200㎡ = 4,000万円がその土地の評価額になります。
土地の形や奥行き、地域の用途によって、補正が加わることもあります。一方で、路線価が設定されていない地域では「倍率方式」で計算します。これは、市区町村が出している固定資産税の評価額に、地域ごとに決められた倍率を掛けて求める方法です。
建物の評価額は、固定資産税の評価額をそのまま使います。固定資産税の評価額は、一般的に、市場価格の6〜7割程度に設定されています。こうして土地と建物の評価額を合計して、その他の財産(預貯金や有価証券など)を加えたものが、相続税の計算のもとになります。
一方で、すべての財産に税金がかかるわけではありません。相続税には「基礎控除額」という非課税枠があります。基礎控除額は次の式で求めます。
- 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、相続人が2人の場合は、3,000万円+600万円×2=4,200万円までが非課税です。つまり、遺産の合計が4,200万円以下なら、相続税の申告や納税は不要になります。しかし、土地や家の評価額は地域や形状によって、大きく変わるため、正確に知るには、税理士や不動産鑑定士などの専門家に、相談することが大切です。
土地・建物ごとの評価の注意点

土地や建物の評価額は、使い方や権利関係によって大きく変わります。つまり、同じ広さの土地や同じ家でも、どのように使われているのかで、評価額が異なるということです。まず、土地の評価は「その土地をどのように利用しているのか」で決まります。
自身や家族が住んでいる土地(自用地)は、国税庁が定める路線価や倍率をもとに、標準的な方法で評価されます。一方で、他人に貸している土地(貸家建付地)の場合は、賃貸によって、自由に使えない分、評価額が下がることがあるのです。
また、借地権がついている土地では、土地の所有者が自由に利用できないため、借地権の分を差し引いて、評価額を計算します。このように、土地は「誰がどのように使っているのか」で価値が変わります。
建物も同様に、使われ方や状態によって評価が異なります。築年数が古くても、相続税の計算では、固定資産税評価額をもとに評価するため、「価値がゼロになる」ことはありません。老朽化していても、一定の評価額が残る点に注意が必要です。
節税につながる特例制度
家や土地を相続するときは、税金をできるだけ減らすために「特例制度」を上手に使いましょう。代表的なのが「小規模宅地等の特例」と呼ばれる制度です。この制度は、亡くなった方が住んでいた土地を、配偶者や同居していた子どもなどが引き継ぐ場合に使えるものです。内容は非常に大きく、最大330㎡(およそ100坪)までの土地について、相続税の評価額を80%も下げることができます。
たとえば、評価額が5,000万円の土地であれば、特例を使うと評価額は1,000万円になります。つまり、税金を計算するもとになる金額が5分の1になるため、支払う相続税も大幅に少なくなります。さらに、配偶者が相続する場合には「配偶者控除」という別の制度もあります。
これは、配偶者が受け取る財産のうち、1億6千万円まで、もしくは配偶者の法定相続分が非課税になる仕組みです。この制度を使うと、配偶者に相続税がかからないケースも多くあります。しかし、これらの特例は自動で使えるわけではありません。土地の広さや使い方、同居していたのか、登記名義などに細かい条件があります。
相続人が複数いる場合は、誰が特例を受けるのかを話し合って、書面に残す必要もあるでしょう。このように、「小規模宅地等の特例」と「配偶者控除」を組み合わせることで、相続税の負担を大きく減らして、家や土地を無理なく次の世代に引き継ぐことができます。
| 特例・控除名 | 節税内容 | 主な条件 |
| 小規模宅地等の特例 | 自宅の土地最大330㎡の評価額を80%減額 | 配偶者や同居の子が相続/細かい要件あり |
| 配偶者控除 | 1億6千万円まで、もしくは法定相続分が非課税 | 配偶者が相続人/申告手続きが必要 |
遺産分割の現実

家は現金や預金のように簡単に分けられるものではなく、物理的に1つしかないため、相続において、最も揉めやすい財産のひとつです。長年住んできた家や思い出の詰まった実家は、感情的な価値も大きく、相続人それぞれの意見が対立しやすくなります。
そのため、誰が家に住むのか、売却して現金化するのか、あるいは共有するのかといった判断は、法律や税務だけでなく、家族間の調整も必要なテーマです。ここでは、家を相続する際に生じやすいトラブルの現実と、代表的な分割方法、それぞれのメリット・注意点を整理します。
「家は分けられない資産」だから揉める
家は現金や預貯金のように、簡単に分割できる資産ではありません。現金であれば、相続人全員で均等に分けることも可能ですが、家は物理的に1つしかなく、複数に分けられないため、相続人の間で意見が対立しやすい財産です。
たとえば、長男が長年住んでいる実家をそのまま譲るのか、それとも売却して現金に換えて、相続人全員で分配するのかといった選択肢があります。住む人と売却を希望する人の間で意見が食い違うと、話し合いが難航します。遺産分割協議が長期化するケースも少なくありません。
さらに、家は単なる不動産以上の意味を持っています。親や祖父母との思い出、家族行事の記憶、子ども時代の生活の記録などが詰まっており、感情的な価値が非常に大きいことも特徴です。親が長く住んでいた家や代々受け継いできた実家の場合、相続人同士で「思い入れの重さ」が異なるため、感情的な対立が表面化しやすくなります。
また、家の評価や管理方法、税負担の分配なども加わるため、単純に「どちらが住むのか」で済まない場合も多いです。共有名義にしたまま放置すれば、登記や売却、固定資産税の支払いといった権利行使が制限されます。さらなるトラブルに発展するかもしれません。このように、家は「分けられない資産」であるがゆえに、相続における争いの火種になりやすいのです。
家の相続における主な分割方法

家の相続では、現物として分けられない資産であるため、複数の相続人が納得できる方法を選ぶことが重要です。代表的な分割方法には、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4種類があります。
まず、現物分割は、家をそのまま1人の相続人が取得する方法です。手続きが比較的シンプルで明確ですが、他の相続人に対して「公平感」が不足する場合があります。たとえば、長男が家を取得すると、次男や娘は、金銭的な補償を受けない限り、不満を抱く可能性があります。家に住む人が決まっている場合や、ほかの財産とのバランスが取れる場合に適した方法です。
次に、代償分割は、家を1人が相続して、他の相続人に、相当額の金銭を支払う方法です。現物分割の不公平感を解消できるメリットがありますが、代償金を支払う側に十分な資金が必要です。資金が不足している場合には、住宅ローンや金融機関からの借入を検討する必要があり、手続きがやや複雑になります。
換価分割は、家を売却して現金化して、その金額を相続人で分割する方法です。公平性が高く、相続人全員が納得しやすい方法ですが、売却価格は市場動向に左右されるため、思った価格で売れないリスクがあります。また、売却手続きや仲介手数料など時間とコストがかかる点も、考慮しなければなりません。
最後に、共有分割は、複数人で家を共有名義にする方法です。一見平和的に見えますが、実務上は、トラブルの温床になりやすい方法です。修繕や売却の際に、全員の同意が必要となるため、意見がまとまらない場合、管理が困難になります。売却や処分ができないケースもあるのです。そのため、相続人同士の信頼関係が強固でない限りは、避けた方が無難です。
このように、家の分割方法は、それぞれメリット・デメリットがあり、相続人の人数や財産状況、感情面を踏まえて、慎重に選択する必要があるでしょう。
| 分割方法 | 内容 | 特徴・注意点 |
| 現物分割 | 家をそのまま1人が相続する方法 | ・手続きが明確でシンプル ・他の相続人との不公平感が生じやすい |
| 代償分割 | 家を1人が相続し、他の相続人へ代償金を支払う方法 | ・公平性を保てる ・代償金の支払い能力が必要になる |
| 換価分割 | 家を売却して現金に換え、その金額を分ける方法 | ・最も公平性が高い ・売却価格は市場に左右され、手続きに時間がかかる |
| 共有分割 | 家を複数人で共有する方法 | ・一見平和的だが、将来の売却・修繕などで意見が分かれやすい ・トラブルのもとになりやすく、避けるのが無難である |
【実家を継ぐ・売る・貸す】それぞれの選択肢について

家を相続した場合、次の世代に引き継ぐのか、売却するのか、あるいは貸すのかといった選択肢があります。それぞれにメリットと注意点があり、慎重に判断することが重要です。
まず、家を継ぐ場合です。自宅として使用する場合や、将来的に子どもに引き継ぐ場合、維持コストが発生します。具体的には、固定資産税や都市計画税、光熱費、定期的な修繕費などが挙げられます。また、老朽化が進むと、修繕やリフォームの費用も増加するため、財政計画を立てたうえで、維持する必要があります。しかし、家族の思い出や居住の利便性といった非金銭的価値も享受できる点がメリットです。
次に、売却する場合です。家を現金化することで、相続人間で公平に分けられます。維持コストも発生しません。しかし、売却時には、相続登記の完了が前提となります。これを怠ると、家の売却ができません。また、売却益が出た場合には、譲渡所得税が課税されるため、税負担も考慮する必要があります。市場動向によっては、希望価格での売却が難しい場合もあります。
さらに、貸す場合は、賃貸経営として収益化できる選択肢です。家を活用しつつ、定期的な家賃収入を得られる点は魅力ですが、空室リスクや賃貸管理、建物の老朽化への対応など、長期的な管理の手間と費用も発生します。また、賃貸契約上のトラブルや、税務上の扱いにも注意しなければなりません。
このように、家を継ぐ・売る・貸すのいずれの選択肢にもメリットとデメリットが存在します。相続人の生活状況や財政状況、将来のライフプラン、家族の思い出や感情的価値を総合的に考え、最も適した方法を選ぶことが重要です。
| 選択肢 | 内容 | 注意点・ポイント |
| 継ぐ場合 | 家を引き継いで、所有し続ける | ・固定資産税・修繕費・光熱費など、維持コストが発生する ・長期的な負担を見込む必要がある |
| 売る場合 | 相続した家を売却する | ・相続登記(名義変更)の手続きが必要になる ・売却益が出た場合は、譲渡所得税が課税される |
| 貸す場合 | 家を賃貸に出して、収益化する | ・安定収入が得られる可能性がある ・空室リスクや管理コストに注意しなければならない |
家の名義変更と登記手続きのポイント

家を相続した際には、単に住むだけでなく、正式な手続きとして名義を変更する「相続登記」が必要です。この手続きを行わないまま放置すると、売却や賃貸、リフォームなどの行動が制限されるだけでなく、固定資産税の負担や相続人間のトラブルなど、さまざまな問題が生じる可能性があります。ここでは、相続登記に必要な書類や手続きについて、簡単に解説します。
家の相続登記に必要な書類
家を相続した場合、所有権を正式に移転するためには、相続登記が必要です。相続登記を申請するには、さまざまな書類を揃える必要があります。まず、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本です。これは、相続が発生したことと、被相続人の身元を証明するために必要で、戸籍をさかのぼって確認することで、相続人を正確に特定できます。
次に、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書です。戸籍謄本で相続人の身分関係を確認して、印鑑証明書で、署名の正当性を証明します。複数の相続人がいる場合には、全員分が揃っていることが必要です。また、遺言書または遺産分割協議書も重要な書類になります。
遺言書がある場合は、その内容に従って登記を行います。遺言書がない場合や遺産分割で合意した場合には、相続人全員で署名押印した遺産分割協議書を提出することで、どの相続人が家を取得するのかを法的に証明できます。
さらに、固定資産評価証明書も必要です。これは、登記手続きや相続税の計算の基礎となる、土地や建物の評価額を証明する書類で、市町村役場で取得できます。これらの書類を揃えたうえで、法務局に相続登記の申請を行うことで、正式に所有者として、登記簿上の名義を変更できるのです。
相続登記は、手続きが複雑で書類の漏れがあると、申請が受理されないこともあるため、早めに確認して、必要に応じて専門家に相談することがおすすめです。
| 書類名 | 目的・使われ方 | ポイント |
| 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡まで) | 誰が正式な相続人なのかを確認する | 戸籍をすべてそろえる点が重要(抜け漏れを注意) |
| 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 | 相続人の本人確認と署名・押印の正当性を証明 | 協議書に押す実印と印鑑証明書が、一致していることが必要 |
| 遺言書、または遺産分割協議書 | 遺産の分け方を示す基礎資料 | 遺言書があれば、それを優先する。遺言書がなければ、相続人全員で書類をつくる |
| 固定資産評価証明書 | 相続した不動産の価値を証明して、登記費用(登録免許税)の算出に使用 | 市区町村役場で取得が可能 |
「家の相続」で専門家の力を借りるべきタイミング

家を相続するときには、法律・税金・登記など、さまざまな手続きが関係します。内容が複雑なため、自分だけで対応しようとすると、手続きの間違いや相続人同士のトラブルにつながることがあります。特に次のような場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。
まず、遺言書が複数ある場合や内容があいまいな場合です。どの遺言を優先するのか、どう分けるのが正しいのかを判断するには、法律の知識が必要です。こうしたときは弁護士に相談すると、正しい手続きの流れや分割の進め方を整理できます。
次に、家や土地の評価額が高く、相続税がかかる可能性がある場合です。相続税の計算は、土地の評価や特例の適用などが複雑で、誤ると後から追徴課税されるおそれがあります。税理士に相談すれば、正確な評価や節税の方法を確認でき、法律に沿って無駄のない形で手続きを進められます。
また、相続人の間で意見が合わない場合にも、専門家の力が役立ちます。弁護士は話し合いの調整や調停の手続きを通して、公平な解決を図ってくれます。司法書士に依頼すれば、登記や名義変更などの手続きを正確に進めてもらえるため、手続き上のミスを防ぐことができます。
相談費用の目安は、1時間あたり1万円ほどです。早い段階で専門家に相談しておくことで、後からのトラブルや手続きのやり直しを防げます。特に相続人が複数いる場合や、相続財産の金額が大きい場合は、早めの相談が効果的です。
このように、相続は家族の感情と財産の問題が重なりやすいため、適切なタイミングで専門家に相談することが、円滑で公平な相続を実現するための重要な一歩になります。
デジタル遺品も相続財産の一部に

近年、相続の対象は、現金や不動産などの有形財産だけでなく、パソコンやスマートフォン、クラウド上のデータ、SNSアカウントなどの「デジタル遺品」にも広がっています。これらは形が見えないため、見落とされていますが、写真や動画、メール、オンライン銀行口座、暗号資産など、内容によっては、相続財産として扱われる場合もあります。
しかし、パスワードが分からなかったり、データが膨大で整理が困難だったりすると、相続人だけで適切に管理するのは、非常に難しいのが現状です。デジタル資産の整理を怠ると、思わぬトラブルの原因にもなります。
たとえば、故人のSNSアカウントやクラウドストレージにアクセスできず、写真や重要書類が取り出せない、不要な情報が放置されて、プライバシーや法的リスクが生じる、あるいはアカウント管理をめぐって、相続人同士で争いが生じるなどです。
こうした状況は、家族に大きな心理的負担を与えるだけでなく、相続手続き全体を遅らせる原因にもなります。そこで活用したいのが、デジタル遺品の専門業者です。これらの業者は、データの復旧・整理・削除・アカウントの引き継ぎなどを、専門知識と技術をもって安全に行います。
法律やプライバシーに配慮しながら作業するため、家族が直接触れずに済む分、トラブルのリスクも大幅に低減できます。また、遺族が感情的になってしまい、整理が進まない場合でも、専門業者を通じて、冷静かつ効率的に作業を進められます。家の相続手続きと同時に、デジタル遺品業者を活用して準備しておくことは、現代の相続において、欠かせない対応といえるでしょう。
まとめ

家の相続は、単に財産を引き継ぐだけの手続きではなく、家族の思い出やつながりを未来へ受け継ぐ行為でもあります。その一方で、法律・税金・登記など多くの要素が関係するため、感情だけで進めてしまうと、思わぬトラブルにつながることも少なくありません。だからこそ、早めの準備と冷静な判断が欠かせません。
まずは、相続登記をきちんと行い、所有者を明確にしておくことが重要です。登記を放置すると、時間の経過とともに相続人が増えて、権利関係が複雑化してしまいます。その結果、家を売ることも貸すことも難しくなり、「使えない財産」になってしまう恐れがあります。
また、家の維持費や税金といった現実的な負担を考慮しながら、「誰が住むのか」「売却して分けるのか」など、家族でしっかり話し合うことも大切です。感情や立場の違いがあるなかで、公平な方法を決めるには、冷静な対話が欠かせません。遺言書や家族信託を活用して、生前に意思を明確にしておけば、相続人間の争いを防ぐことができます。
そして、迷ったときは、司法書士や弁護士、デジタル遺品業者などの専門家に相談することが最も確実な方法です。専門家の助言を受けながら進めることで、法的にも税務的にも、正しい形で、安心して家を引き継ぐことができます。家族の思いと財産を守るために、早めの準備を心がけて、次の世代が安心して暮らせる形で大切な家を残していくことが、何よりの相続対策になるでしょう。
この記事の監修者

石坂貴史
マネーシップス運営代表・FP
証券会社IFA、2級FP技能士、AFP、マネーシップス運営代表者。デジタル遺品や相続をはじめとした1,100件以上のご相談、記事制作、校正・監修を手掛けています。金融や経済、相続、保険、不動産分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。
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