
人生の終わりを迎えたあとに、残されるのは「遺品」です。それは単なる物ではなく、故人の生きた証であり、家族との思い出が詰まったかけがえのない記録です。しかし、残された遺族にとっては、その整理が精神的にも体力的にも大きな負担となります。特に、現代では高齢化の進行や単身世帯の増加により、遺品整理の必要性が急速に高まっています。
こうしたなかで注目されているのが、「遺品整理士」という専門職です。遺品整理士は、単に物を片づけるだけでなく、故人の想いを尊重しながら、遺族が安心して次の生活へ進むための支援を行う存在です。また、法令や倫理に基づいた正しい手続きや、デジタル遺品など、新しい課題への対応も求められています。
今回の記事では、遺品整理士の役割、実際の作業の流れ、信頼できる業者の見分け方、そしてデジタル時代における新たな遺品整理のあり方について、解説していきます。
遺品整理士とは何か

遺品整理士とは、故人が生前に使っていた品々を整理して、遺族に代わって適切に仕分けや処分を行う専門職です。清掃業者とは異なり、故人の思い出や遺族の感情に深く関わる業務であるため、専門的な知識と倫理的な配慮が求められます。具体的には、遺族の立ち会いのもとで遺品を整理して、貴重品や形見を見つけ出し、不要なものは、法律や自治体のルールに従って廃棄・リサイクルします。
また、遺品のなかには、遺言書や通帳などの法的書類が含まれることもあるため、法令遵守の姿勢が欠かせません。遺品整理士の存在意義は「物の整理」ではなく、「人の想いを丁寧に引き継ぐこと」にあります。
| 遺品整理士の業務内容 | 詳細 |
| 遺品の仕分け・整理 | 貴重品や思い出の品、不用品などに分類 |
| 貴重品の捜索 | 権利書・通帳・印鑑など重要書類や品物の探索 |
| 不用品の回収・処分 | 法的規則や遺族の意向に沿って、適切に処分・買取の提案 |
| 遺品供養 | 遺族や宗派に合わせて、供養品の手配・実施 |
| 部屋の清掃・原状回復 | 清掃・ハウスクリーニングや特殊清掃にも対応 |
| 家財道具の搬出 | 家具や家電など、大型品の安全な搬出 |
| 行政手続きサポート | 不動産会社仲介・家屋解体手続きなどの代行 |
| 遺族への配慮 | 心情への寄り添い、負担軽減と報告・説明 |
「清掃」ではなく「心の整理」
遺品整理は、単なる物理的な片付けではなく、亡くなった方の人生を振り返り、遺族が心の区切りをつけるための重要な過程です。思い出の詰まった品を一つひとつ手に取りながら整理することで、悲しみや喪失感と向き合い、同時に故人への感謝の気持ちを、具体的な形として残せます。このプロセスは、遺族にとって心理的な整理の時間です。そして、故人の人生や思い出を尊重する時間でもあります。
遺品整理士は、こうした心理的プロセスを丁寧に支える役割を担います。作業の効率やスピードだけでなく、遺族一人ひとりの感情や思いに合わせた「心のペース」を尊重します。たとえば、特定の品に強い思い入れがある場合には、その整理に時間をかけることや、供養の方法について、相談に乗ることもあります。
また、遺品整理を通じて、心の整理が進むと、相続手続きや今後の生活設計にも、良い影響を与えるでしょう。感情が落ち着き、遺産の分配や書類の整理、住まいの片付けといった現実的な手続きを、冷静に進めやすくなります。遺族にとって、精神的にも物理的にも負担が軽減されます。遺品整理は「物を整理する作業」以上の意味を持ち、心の整理と生活の再構築を同時に支える、重要なプロセスなのです。
遺品整理士の資格と認定団体
遺品整理士は国家資格ではなく、一般社団法人遺品整理士認定協会による民間資格です。資格取得には、法令・廃棄物処理・リサイクル・供養の知識などを学び、レポート提出と審査を経る必要があります。この資格を持つことで、依頼者は「一定の倫理・技術水準を満たしている」専門家に依頼できる安心感を得られます。
また、資格者は業界のガイドラインに従い、作業中に発見した現金・貴金属・重要書類などを適切に扱う義務を負います。遺品整理が増える現代において、資格の有無が信頼性を測る大切な基準になるでしょう。
遺品整理の実際の流れ

遺品整理の現場では、ただ物を片づけるだけではなく、故人の人生や家族の想いに寄り添いながら、丁寧に手続きを進めることが求められます。ここでは、実際の遺品整理がどのような流れで行われるのかを、主な工程ごとに整理して解説します。相談から見積もり、仕分け・搬出、供養や清掃に至るまでの一連の流れを知っておくことで、業者を選ぶ際の判断基準にもなります。
| 現場の流れ | 遺品整理の概要 | ポイント |
| ① 相談と見積もり | 遺族からの相談を受けて、現地で遺品の量・部屋の状態・希望範囲(仕分け・供養・清掃など)を確認して、見積もりを提示する。 | ・業者の姿勢を見極める段階 ・丁寧な対応・遺族の想いを尊重する姿勢がポイント ・費用形式(トラック単位・部屋単位)と内訳明細の確認が重要 |
| ② 仕分けと搬出 | 貴重品・思い出の品・日用品・処分物などを分類して、遺族立ち会いのもとで「残す」「供養する」を判断する。 | ・数日かかることもあり、遺族の心情に配慮して進行 ・搬出後はリサイクル・リユースを優先して、環境負荷を軽減 |
| ③ 供養と清掃 | 写真・仏具・手紙など処分しにくい品は、寺院や供養業者と連携して、合同供養・個別供養を提案 | ・作業後の清掃で、次の入居・売却に備える ・清掃を含むのかで費用が変わるため、事前確認が必要になる |
相談と見積もり
遺品整理士にとって、遺品整理の第一歩は、遺族からの相談です。初回の面談では、遺品の量、部屋の状態、希望する作業範囲(仕分け、供養、清掃など)を確認して、現地で見積もりを出します。遺族側は、この段階で業者の姿勢が確認できます。丁寧に話を聞き、遺族の想いを尊重する業者ほど、信頼できるといえます。費用面では「トラック○台分いくら」「一部屋いくら」といった形式が多いですが、内訳の明細を必ず確認しておくことが大切です。
仕分けと搬出
実際の作業では、貴重品・思い出の品・日用品・処分物などを分類します。遺族の立ち会いのもとで「これは残したい」「これは供養したい」と判断を進めます。作業には数日かかることもあり、遺族の心情に配慮して、時間を調整することも、遺品整理士の重要な役割です。また、搬出後はリサイクルやリユースを優先して、環境負荷を抑える努力も求められます。
供養と清掃
遺品のなかには、写真・仏具・手紙など、簡単に処分できない品があります。遺品整理士は、寺院や供養業者と連携して、合同供養や個別供養を提案やサポートを行います。また、遺族にとっては、作業後の清掃を通じて、次の入居や売却に備えることも重要な工程です。遺品整理と一緒に、清掃を含むのかで費用が大きく変わるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容 |
| 処分が難しい遺品 | 写真・仏具・手紙など、感情的・宗教的価値が高い品 |
| 遺品整理士の対応 | 寺院や供養業者と連携して、合同供養・個別供養の提案が可能 |
| 作業後の工程 | 清掃を行い、次の入居・売却に備える |
| 費用に関する注意点 | 清掃で費用が大きく変わるため、事前確認が必要 |
遺品整理士が扱う財産と法律知識

遺品整理の現場では、現金や通帳、印鑑、株式証書など、相続財産にあたる重要な品が見つかることがあります。これらは遺品整理士が勝手に処分することはできず、発見した場合には、必ず遺族または遺言執行者に引き渡して、記録を残さなければなりません。信頼できる業者は、作業報告書にすべての発見物を明記して、透明性を確保することで、後々のトラブルを防ぎます。
また、遺言書が見つかった場合には、開封せずに家庭裁判所での検認手続きを受けることが必要です。誤って開封してしまうと、法的効力が失われるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。遺品整理は、相続手続きと密接に関連しています。
ファイナンシャルプランナー(FP)や司法書士、税理士と連携することで、遺産分割や税務申告などの手続きを、スムーズに進めることが可能です。遺品整理後に、不動産や預貯金の相続登記を行う場合には、専門家との協力が不可欠です。遺族は、整理の段階から相続手続きまでを見据えた対応が求められます。
悪質業者との違いと見分け方

遺品整理の需要が高まる一方で、残念ながら、悪質な業者によるトラブルも増えているのです。なかには「格安」「即日対応」などの宣伝文句で依頼を集めて、遺品を不法に投棄したり、貴重品を持ち去ったりする例もあります。遺品整理は、法的・倫理的な責任を伴う仕事であるため、業者選びを誤ると、遺族が不利益を被るかもしれません。
まず注意すべきは、「安さ」だけで業者を選ぶことの危険性です。極端に安い見積もりを提示する業者のなかには、処分費用や人件費を不正に削り、不法投棄などの違法行為に及ぶ場合があります。このような場合、最終的に、遺族が廃棄物処理法違反などで責任を問われる可能性もあります。費用の安さよりも、内容が明確で適正なのかを重視することが重要です。
信頼できる業者を見抜くには、さまざまな基準があります。まず、見積書に作業内容と料金の内訳が、具体的に記載されているかを確認しましょう。遺品整理士の資格証や古物商・産業廃棄物収集運搬などの、許可証の提示も重要なポイントです。
また、行政登録があるのか、口コミや実績に透明性があるのかも判断材料となります。遺品整理士を選ぶ際は、価格の安さよりも「安心して任せられるか」を基準にすることが、後悔しないための第一歩です。
| 区分 | 内容 | 注意・判断ポイント |
| 現状 | 遺品整理の需要増加に伴い、悪質な業者によるトラブルも増えている | 「格安」「即日対応」など、極端な宣伝に要注意 |
| 悪質業者の手口 | 不法投棄・貴重品の持ち去り・不明確な請求など | 遺族が廃棄物処理法違反で、責任を問われる恐れもある |
| 危険な業者の見分け方 | ・極端に安い見積もりを提示 ・作業内容があいまい ・契約書や見積書に明細がない | 「安い」より「内容が明確で適正」かを優先 |
| 信頼できる業者の特徴 | ・見積書に作業内容と料金の内訳が記載されている ・遺品整理士、古物商、廃棄物収集運搬の許可証を提示している ・行政登録、口コミ、実績が確認できる | 書類提示の有無は信頼性を示す重要な要素 |
| 対応姿勢 | 遺族の希望を丁寧に聞き取り、強引な営業をしない | 丁寧な説明・誠実な対応が信頼できるサイン |
| 業者選びの基本 | 「安い」ではなく「安心して任せられるか」で判断 | 後悔しないための最重要ポイント |
デジタル遺品整理の重要性

近年、遺品整理の現場では「デジタル遺品」への対応が欠かせなくなっています。スマートフォンやパソコン、クラウド上に残されたデータは、形のない遺品でありながら、故人の財産や個人情報として、重要な意味を持ちます。
銀行口座やSNS、暗号資産などのデジタル情報を適切に管理しないまま放置すると、金銭的損失や情報漏えいの原因になるかもしれません。こうした背景から、専門のデジタル遺品業者を活用した安全な整理が、今の時代の新しい遺品整理の形として、注目されています。
デジタル遺品の存在
現代では、多くの人がスマートフォンやパソコンに、さまざまな個人情報を保存しています。ネット銀行の口座情報やクレジットカード、SNSのアカウント、クラウド上の写真や文書、電子マネー、さらには暗号資産などが、重要な「資産」として扱われる時代になっているのです。こうした情報を整理せずに放置しておくと、個人情報の流出や、不正利用のリスクが高まります。課金や自動引き落としのトラブル、さらには、資産の紛失や回復不能といった問題につながるかもしれません。
デジタル遺品業者について
デジタル遺品業者を活用する最大の理由は、故人のスマートフォンやパソコン、クラウドサービス上の重要なデータや資産を、安全かつ確実に管理できる点にあります。通常の遺品整理では対応が難しい、パスワード解除やデータ復旧、不要データの安全な削除といった専門的な作業を任せられるため、貴重な情報や資産を失うリスクを大幅に減らせるのです。
特に、クラウドサービスや暗号資産の管理は、操作を誤るとデータや資産を取り戻せなくなる可能性があるため、専門知識と経験が不可欠です。個人情報や金融情報を扱うことから、情報漏えいのリスクも伴います。
こうしたリスクを避けるために、情報セキュリティ体制が整った業者を選ぶことが、安全で確実なデジタル遺品整理には欠かせません。デジタル遺品業者を活用することで、単に整理するだけでなく、故人の資産や個人情報を、次世代へ適切に引き継ぐことが可能です。
| 項目 | 内容 |
| 通常の遺品整理との違い | デジタル遺品業者は、パスワード解除、データ復旧、不要データの安全削除といった、専門的な対応が可能になる |
| 主なメリット | 貴重な情報や資産を失うリスクを、大幅に軽減できる |
| 特に重要な対象 | クラウドサービスや暗号資産など、操作ミスで資産を失う可能性があるもの |
| デジタル遺品業者の選定ポイント | 情報セキュリティ体制が整っている業者を選ぶこと |
デジタル遺品業者を活用する利点
デジタル遺品の整理は、一般的な遺品整理とは異なり、専門的な知識と技術を必要とします。特にスマートフォンやクラウド上のデータには、個人情報や金融情報が含まれていることが多く、誤った操作がトラブルの原因になることもあります。そのため、これらの作業は専門のデジタル遺品業者に依頼するのが最も安全な方法です。
信頼できるデジタル遺品業者は、データの解析や復旧だけでなく、遺族に代わってアカウント削除や契約解約までを代行してくれます。なかには、遺品整理士と連携して「実物の整理」と「データの整理」を、同時に進められる体制を整えている業者もあります。こうした連携サービスを活用すれば、遺族の負担を大幅に減らして、故人の情報を安全に管理できます。
デジタル遺品を扱う業者を選ぶ際は、個人情報保護の方針や、作業報告書を発行しているのかを確認すると安心です。情報漏えいを防ぎながら、専門的かつ誠実に対応してくれる事業者を選ぶことが、現代の遺品整理では欠かせない要素になります。
遺品整理士に依頼するメリット

遺品整理士に依頼することで得られるメリットは、大きく分けて「心理的負担の軽減」「法的・専門的知識の活用」「作業効率と安全性の確保」この三点にまとめられます。遺品整理は、遺族にとって非常に感情的な作業であり、故人との思い出が詰まった品々を整理するたびに、悲しみが再燃することも少なくありません。
遺品整理士に依頼すれば、こうした精神的な負担を軽減しつつ、作業を客観的かつ計画的に進められます。第三者が間に入ることで、家族間での意見の衝突を防ぐ効果も期待できます。また、遺品整理士は廃棄物処理法やリサイクル法、個人情報保護法などの関連法令に精通しており、遺品の適正な処理を行います。
自治体のルールに違反しないように、整理が進められるのです。多くの遺品整理士は、司法書士や税理士、行政書士などの専門家と連携しており、相続登記や遺産分割協議などの手続きもスムーズです。作業効率と安全性の面でも、遺品整理士の存在は重要です。大型家具や家電の搬出は慣れていないと、事故やケガのリスクを伴います。
遺品整理士は、搬出経路の確保や養生、搬送の専門知識を持っているため、安全かつ効率的に作業を行えます。ゴミの分別やリユース・リサイクルのルートを熟知しており、処分コストを抑える工夫も可能です。このように、遺品整理士に依頼することで、精神的、法的、物理的な面で、遺族の負担が軽減できます。
| 遺品整理士に依頼するメリット | 内容 | 具体的な効果・ポイント |
| ① 心理的負担の軽減 | 故人との思い出の品を整理する際の、精神的負担を軽減する | ・第三者が介入することで、冷静かつ客観的に進められる ・悲しみの再燃を抑えられる ・家族間トラブル(意見の衝突)の防止になる |
| ② 法的・専門的知識の活用 | 遺品整理士は関連法令に精通している(廃棄物処理法・リサイクル法・個人情報保護法など) | ・法令遵守で適正な処理が可能 ・自治体ルールに合わせた整理 ・司法書士・税理士・行政書士との連携で、相続手続も円滑になる |
| ③ 作業効率と安全性の確保 | 専門知識と経験をもとに、安全・迅速に作業を実施する | ・大型家具・家電の搬出を安全に対応する ・搬出経路の確保・養生を徹底している ・分別・リユース・リサイクルの最適化で、コスト削減する |
遺品整理士の料金相場と費用

遺品整理を依頼する際、最も気になるのは料金です。遺品整理の費用は、部屋の広さや遺品の量、作業内容によって大きく変動します。また、供養や清掃、特殊清掃の有無によっても、料金は異なります。そのため、事前に料金相場を理解して、見積もりの内訳を確認することが大切です。
- 部屋タイプ別の料金目安
遺品整理士に依頼した場合の一般的な料金の目安は、部屋の広さや荷物の量によって、異なります。ワンルームや1Kの小規模な部屋であれば、作業費や処分費を含めて、3万円〜8万円程度が相場です。1LDKや2Kの部屋では、5万円〜12万円、2LDKや3Kの場合は、10万円〜20万円程が目安となります。
3LDK以上の広めの部屋では、20万円〜40万円程度になることがあります。これは、基本的な整理作業の場合の目安です。荷物が多い場合や大型家具・家電が多い場合は、追加費用が発生します。
また、孤独死や事故物件のような特殊清掃が必要な場合、追加で10万円〜数十万円の費用がかかることもあります。特殊清掃では、消臭・除菌・感染防止措置などの専門的な作業が必要です。そのため、一般的な整理費用よりも高額になる傾向があります。
| 部屋タイプ | 料金(※目安) | 備考・追加費用 |
| 1R/1K | 3万円〜8万円 | 荷物量・作業内容で変動する |
| 1LDK/2K | 5万円〜12万円 | 荷物が多い・大型家具多数で、追加費用がある |
| 2LDK/3K | 10万円〜20万円 | 作業人数・時間によって増減する |
| 3LDK以上 | 20万円〜40万円 | 荷物量・広さで、さらに高額になる場合がある |
| 特殊清掃 | 10万円〜数十万円 | 孤独死・事故物件などの消臭・除菌作業を含む |
- 料金の内訳
作業費は、整理・仕分け・搬出にかかる人件費です。次に処分費として、不要品の廃棄やリサイクルにかかる費用が含まれます。自治体のルールに従った適正処理が求められるため、料金には、処理費用も反映される仕組みです。
清掃費は、作業後の簡易清掃や床・壁の掃除、場合によっては、特殊清掃が含まれます。また、写真や仏具、手紙などの供養を希望する場合は、供養費も料金に加わります。作業に使用するトラックや、遠方の場合の交通費も費用の一部です。見積もりを取る際には、これらの内訳が明確になっているのかを、必ず確認しましょう。「一式いくら」といった曖昧な見積もりは、追加費用が発生するリスクがあります。
| 料金の内訳 | 内容例 |
| 作業費 | 整理・仕分け・搬出の人件費 |
| 処分費 | 廃棄・リサイクル・自治体の処理費用 |
| 清掃費 | 作業後の簡易清掃、特殊清掃を含む場合がある |
| 供養費 | 写真・仏具・手紙などの供養希望時 |
| トラック・交通費 | 車両利用・遠方からの出張費 |
- 費用を抑えるポイント
料金を抑える方法としては、遺族自身で事前に整理・仕分けを行うことが有効です。残すものと処分するものを、明確に分けておくことで、作業量を減らせます。また、リサイクルや買い取りに対応する業者を選ぶと、不要品の一部を買い取ってもらい、総費用を下げることも可能です。さらに、複数の業者から相見積もりを取り、料金だけでなくサービス内容も比較すると、費用対効果の高い業者を選ぶことができるでしょう。
| 費用を抑えるポイント |
| 残すもの・処分品の事前分別で、作業量を削減する |
| 買取サービス対応の業者選択で、費用を減額する |
| 複数業者の見積もり・サービス比較で、費用対効果を最大化させる |
- 見積もり時の注意点
遺品整理を依頼する際は、必ず見積書を確認してください。口頭だけでのやり取りでは、トラブルに発展する可能性があるため、必ず書面で記録を残すことが重要です。また、貴重品や現金の取り扱いについても、事前にルールを確認することで、安心して作業を任せられます。
| 見積時のチェックポイント |
| 見積書を必ず書面で、確認・記録する |
| 貴重品・現金の取り扱いルールを事前に確認する |
| 曖昧な見積りは、追加費用のリスクがある |
孤独死・事故物件における特殊清掃と遺品整理

孤独死や事故物件では、遺体の発見が遅れることによって、室内に強い臭気や汚染が残る場合があります。このような状況では、通常の清掃では対応できず、専門的な「特殊清掃」が必要になるのです。特殊清掃では、作業員が感染防止のための防護措置と一緒に、臭気除去や床材の交換など、高度で安全な作業が行われます。
遺品整理士は、こうした特殊清掃業者と連携して作業を進めることが多く、遺品整理と清掃を同時に行うことで、室内の原状回復を早期に実現します。それによって、賃貸や売却の準備を整えることが可能です。
また、孤独死の場合には、警察や行政が関与することもあります。遺品整理士は、これらの機関とのやり取りを円滑に進める知識も持っています。廃棄処理証明書や作業記録の提出などを通じて、後続の手続きをスムーズに進められるように、配慮されているのです。特殊清掃と遺品整理の連携により、遺族の負担を最小限に抑えつつ、安全かつ適切に現場を整理することが可能です。
これからの遺品整理士の役割と展望

日本では単身高齢者の増加に伴い、遺品整理の需要が年々高まっています。その背景には、高齢化社会における生活様式の変化や、家族構成の変化があります。こうした状況下で、遺品整理士には、単なる整理作業者としての役割だけでなく、「生前整理や終活のアドバイザー」としての機能が求められるようになっているのです。
遺品整理士は、単に物を片づける人ではなく、「人生を締めくくるパートナー」としての存在です。遺族の心情に寄り添いながら、法令や倫理を遵守して、社会的信頼を積み重ねることが大切です。こうした姿勢により、遺品整理士は安心と尊厳を支える専門職として、社会のなかで、ますます存在感を高めていくことが期待されています。
また、現代の遺品整理では、物理的な遺品だけでなく、スマートフォンやクラウド上のデータといった「デジタル遺品」の整理が不可欠です。SNSやオンライン口座、電子マネー、暗号資産などは、放置すると、情報流出や不正利用のリスクがあります。
そのため、専門のデジタル遺品業者との連携も欠かせません。デジタル遺品業者は、データの復旧や削除、アカウント管理を安全に行う技術を持っています。遺品整理士と協働することで、遺族の負担を大幅に軽減しながら、故人の資産と情報を安全に保護できるのです。
特に、金融関連のデータや暗号資産、クラウド契約などは、専門的な知識が必要です。遺品整理士だけでは対応が難しい場合が多く、「遺品整理士とデジタル遺品業者」の連携体制が、今後の標準的な形となるでしょう。
まとめ

遺品整理士は、故人の想いと遺族の未来をつなぐ専門職です。単に物を片づけるのではなく、心の整理・法的整理・情報整理を一体的に支える存在として、現代社会で欠かせない役割を担っています。
特に近年は、スマートフォンやクラウドに保存されたデータ、電子マネー、ネット口座など、形のない「デジタル遺品」の重要性が増しています。これらは適切に処理しなければ、情報漏えいや不正利用のリスクにつながります。そのため、遺品整理士とデジタル遺品業者が連携して対応することが、今後の遺品整理の新しい標準になるでしょう。
依頼先を選ぶ際は、資格や法令遵守の姿勢だけでなく、デジタル遺品への対応力や情報管理体制も確認することが大切です。信頼できる専門家に依頼すれば、故人の尊厳を守りながら、遺族の心理的・法的負担を最小限に抑えられます。
遺品整理は、「もの」ではなく「人生」を整理する仕事です。デジタル時代において、その使命を果たすためには、専門職同士の連携と、倫理に基づいた誠実な対応が求められます。
この記事の監修者

石坂貴史
マネーシップス運営代表・FP
証券会社IFA、2級FP技能士、AFP、マネーシップス運営代表者。デジタル遺品や相続をはじめとした1,100件以上のご相談、記事制作、校正・監修を手掛けています。金融や経済、相続、保険、不動産分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。
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