「もし認知症になったら、スマホの中身はどうなるんだろう」
「契約しているネット銀行や有料サービス、家族は把握しているのかな」

そんな不安を、一度でも感じたことはないでしょうか。
介護福祉士として15年、介護施設で認知症の方やそのご家族と向き合ってきた方にお話を聞く機会がありました。
その経験からお伝えしたいのは、認知症が進む前に「デジタル終活」を始めることが、ご本人、ご家族ともに負担を大きく減らすということです。
スマホの中身、ネット銀行の口座、契約中のサブスクリプション。
これらは認知症が進行してからでは、整理するのがとても難しくなります。
今回は、なぜ「認知症が進む前」が大切なのか、具体的に何をすべきなのかをお伝えします。
なぜ「認知症が進む前」なのか?介護現場で見てきた現実
認知症の進行と「意思決定能力」の変化
認知症が進行すると、本人が自分の意思で物事を判断することが少しずつ難しくなっていきます。
厚生労働省の最新推計(2024年5月発表)によると、2025年時点で認知症高齢者は約471万人。65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と推計されています(出典:厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の有病者数等の推計に関する研究」)
ここで大切なのは、認知症は突然発症するものではないということです。多くの場合、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる段階を経て、ゆっくりと進行していきます。MCI の人を含めると約1,000万人規模と推計され、認知症は決して他人事ではない状況です。
つまり、「気づいた時にはもう遅い」状況が起こりやすいのです。
介護現場で実際に見てきた、3つのリアル
介護現場で、このような場面を何度も目にする光景。

1. スマホのパスワードが思い出せない
ご利用者の方がご家族と一緒に来られて、「親のスマホが開けない」とご相談を受けることがあります。ご本人はパスワードを覚えておらず、ご家族はあきらめるしかない状況。
2. ネット銀行の口座が見つからない
ご家族が遺品整理をしていて、「紙の通帳がない口座があった」と気づくケース。ネット銀行は通帳が発行されないため、ご本人にしかわからないことが多いです。
3. 月額サービスが解約できない
動画配信サービス、健康食品のサブスク、有料アプリ。ご本人が契約していたサービスが、亡くなってからもクレジットカードから引き落とされ続けることもあります。
これらはすべて、「認知症が進む前」なら本人が話してくれて、対応できた可能性が高いです。

認知症が進む前にやるべき「デジタル終活」3つの行動

ここからは、具体的にやるべき3つの行動をお伝えします。
① スマホ・パスワードの整理
最初に取り組みたいのが、スマホとパスワードの整理です。
・スマホのロック解除コード(指紋認証だけでは対応できない場合があります)
・各種アプリのパスワード(メール、SNS、LINEなど)
・パソコン・タブレットのパスワード
これらを一覧にして、信頼できるご家族と共有しておくと安心です。
ノートに手書きで残す、エンディングノートに記載する、専門のサービスを利用するなど、方法はさまざま。ご本人が安心できる方法を選ぶのが大切です。
② ネット銀行・証券口座の棚卸し
次に、ネット銀行や証券口座の棚卸しです。
紙の通帳がない口座は、ご家族が存在を知らないと、そのまま放置されてしまいます。
・利用しているネット銀行・証券会社の一覧
・口座番号、ログインIDの記録(パスワードは別管理が安全)
・加入している保険、契約している金融商品
これらを整理しておくと、相続のときにご家族が困らずに済みます。
③ サブスクリプションの見直し
意外と見落としがちなのが、月額・年額のサブスクリプションです。
- 動画配信サービス(Netflix、Amazon Prime Video 、U-NEXT、Huluなど)
- 音楽配信サービス(YouTube Music、Apple Music、Spotify、LINE musicなど)
- クラウドストレージ(Google ドライブ、iCloud Drive、Microsoft OneDriveなど)
- 健康食品やサプリの定期購入
- 新聞・雑誌の電子版
サブスクリプションに加入されている高齢者は多くないですが、もし加入されている場合はクレジットカードの明細を見ながら、何に課金しているかを一度棚卸ししてみましょう。
不要なものは解約し、必要なものはご家族に伝えておくことで、亡くなった後の「請求が止まらない問題」を防げます。
家族との会話の進め方
「デジタル終活、話したいけれど、どう切り出せばいいかわからない」
そう感じるご家族からの相談も、現場で何度もありました。
ご家族の心情に寄り添うコツ
介護の現場で学んだのは、「終活の話」を「死の話」として切り出すと、ご本人が身構えてしまうということです。
代わりに、こんな切り口がおすすめです。
・「最近、ネット銀行のパスワードを忘れて困ったって、ニュースで見たんだけど」
・「うちもサブスク多いから、一度整理してみない?」
・「お父さんの口座、もしものとき開けるかな?」
軽い話題から始めて、自然に「整理しておこうか」という方向に持っていくのが、心理的負担も少なく済みます。
エンディングノートと専門家の活用
書き出しの整理には、市販のエンディングノートが便利です。書店や文房具店、ネット通販で1,000〜2,000円程度で購入できます。
ご家族だけで難しい場合は、相続診断士やデジタル終活の専門業者に相談する選択肢もあります。法的に正確な情報整理ができ、ご本人の意思を確実に残せます。
認知症が進行してしまった後の対応
「もう認知症が進んでしまった場合、どうすればいいのか」
そう感じる方も多いと思います。実は、いくつかの公的な制度を活用できます。
任意後見制度と成年後見制度
任意後見制度:ご本人の判断能力があるうちに、信頼できる人(ご家族や専門家)に「後見人」になってもらう契約を結んでおく制度
成年後見制度:すでに判断能力が低下してしまった場合、家庭裁判所が後見人を選任する制度
任意後見制度は元気なうちにしか結べないため、できるだけ早めの行動が肝心です。
ただし、これらの制度はデジタル資産すべてに対応できるとは限りません。法的な後見人がいても、スマホのパスワードがわからなければ、スマホ内データへのアクセスが難しいケースがあります。
だからこそ、「認知症が進む前」の準備が、ご家族の負担を大きく軽減することができます。
まとめ|小さな整理が、ご家族の安心につながる

デジタル終活は、何か特別な大きな作業ではありません。
・スマホとパスワードの整理
・ネット銀行・証券口座の棚卸し
・サブスクリプションの見直し
この3つを、ご本人が元気なうちに少しずつ進めるだけで、ご家族の負担は大きく変わります。
「もっと早く話しておけばよかった」というご家族の声を、何度も聞いてきました。
もしご自身やご家族のデジタル終活でお困りなら、専門業者への無料相談も選択肢のひとつです。
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ご家族の未来のために、今日できる小さな一歩から始めてみませんか。




