エンディングノートに「そのまま」書いてはいけない情報がある
「家族が困らないように、パスワードも全部書いておこう。」
実は、この親切心が思わぬリスクにつながることがあります。
終活を始めようと、エンディングノートを書き始めた方も増えています。資産情報、葬儀の希望、家族へのメッセージ——多くの項目は、思いついたままに書いていけば問題ありません。
しかし、たった1か所だけ、書き方を誤ると危険な項目があります。それが「パスワード」です。
「家族のために、できるだけ詳しく書いておこう」——その気持ちは正しいのですが、書き方を間違えると、ノートを紛失したり第三者の目に触れたりした場合に、大切な資産が悪用されてしまうリスクがあります。
この記事では、エンディングノートにデジタル情報を書く際の正しい方法と、絶対に避けるべき書き方について、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事でわかること
✅ エンディングノートにパスワードを「そのまま」書く危険性
✅ 安全にデジタル情報を伝える3つの記載方法
✅ 紙とデジタル、それぞれのエンディングノートのメリット・注意点
✅ 何を書くべきか・何を書いてはいけないかの具体的な仕分け
✅ 家族が困らないエンディングノートの作り方
なぜパスワードを「そのまま」書くと危険なのか

エンディングノートは「紛失・盗難」のリスクを抱えている
エンディングノートは、自宅の本棚や引き出しに置いておくことが多いものです。しかし、自宅は空き巣や災害のリスクと無縁ではありません。
国民生活センターや金融機関でも、悪用を防ぐため暗証番号・パスワードなどはそのまま書かないことが基本的な注意点として挙げられています。クレジットカードや銀行口座の暗証番号をそのまま記載しておくと、ノートが盗まれたり紛失したりした場合に、銀行口座から不正に資金が引き出されるなどの重大な被害につながる可能性があります。
家族以外の人の目に触れる可能性がある
エンディングノートは、生前は本人が管理していても、死後は様々な人の手に渡る可能性があります。葬儀や相続の手続きの過程で、本人以外の親族や、場合によっては専門家が内容を確認することもあるでしょう。
「家族にしか見せない」というつもりで書いたパスワードが、想定していなかった人の目に触れてしまうリスクは、常に意識しておく必要があります。
エンディングノートに「直接書いてはいけない」情報
まず、絶対にそのまま書いてはいけない情報を確認しましょう。
- 銀行口座の暗証番号
- クレジットカードの暗証番号・セキュリティコード
- ネット銀行・証券口座のログインパスワード
- スマートフォンの解除パスコード(そのまま記載は避ける)
- 暗号資産の秘密鍵・シードフレーズ
これらは、書かないことが原則です。ただし、「何も書かない」では家族が一切アクセスできなくなってしまいます。そこで重要になるのが、次に紹介する「安全な伝え方」です。
安全にパスワードを伝える3つの方法

方法①:ヒント形式で記載する
パスワードそのものではなく、「本人と家族にしかわからないヒント」として記載する方法です。
例えば「母の旧姓と結婚記念日の数字を組み合わせたもの」「愛犬の名前のローマ字とお気に入りの数字」など、抽象的な手がかりだけを残します。完全に伏せるのではなく、思い出すきっかけを残すことで、家族も対応しやすくなります。
ヒントを設定したら、実際に家族に見せて「これでわかるか」を確認しておくと安心です。曖昧すぎるヒントでは、いざというときに開けられない事態になってしまいます。
方法②:保管場所だけを記載する
パスワードや暗証番号は別の紙やメモに記載し、エンディングノートには「保管場所」だけを書く方法です。
「パスワード一覧は寝室の金庫」「貸金庫の鍵はリビングの引き出し」のように、保管場所のみを記載します。この方法であれば、ノート自体が他人の目に触れても、肝心の情報は別の場所にあるため安全性が高まります。
ただし、保管場所が分散すると、家族が情報をすべて見つけられない可能性もあります。保管場所の一覧は、信頼できる家族一人にだけきちんと共有しておきましょう。
方法③:パスワード管理アプリと連携する
スマートフォンやパソコンに慣れている方であれば、1PasswordやBitwardenなどのパスワード管理アプリを活用し、エンディングノートには「マスターパスワードの保管場所」や「管理アプリの名称」だけを記載する方法もあります。
実際の管理は専用のアプリに任せ、エンディングノートはあくまで「アプリへの入口を示す案内」として使う考え方です。マスターパスワードそのものはエンディングノートへ直接書かず、別に安全な場所へ保管しておくことが重要です。詳しい引き継ぎ方法はアプリによって異なるため、利用しているサービスの仕様を事前に確認しておきましょう。
デジタル資産別:書くべき項目と書き方

実際にどう書けばよいか、資産の種類別に整理します。
ネット銀行・証券口座
- 書くべき項目:銀行名・証券会社名・口座番号・登録メールアドレス
- 書かない項目:残高・暗証番号・ログインパスワード
スマートフォン・パソコン
- 書くべき項目:端末の種類・Apple IDやGoogleアカウントの登録メールアドレス
- 書かない項目:画面ロックの解除パスコードそのもの(ヒント形式や別保管が安全)
暗号資産
- 書くべき項目:利用している取引所名・保有銘柄の種類
- 書かない項目:秘密鍵・シードフレーズ(これらはハードウェアウォレットや金庫など別の場所で物理的に保管)
SNSアカウント
- 書くべき項目:利用しているSNSの一覧・死後の対応方針(削除・追悼アカウント化など)
- 書かない項目:ログインパスワードそのもの
サブスクリプションサービス
- 書くべき項目:契約しているサービス名・月額料金・解約の必要性
- 書かない項目:決済に使っているクレジットカード番号
紙のエンディングノート vs デジタルエンディングノート

エンディングノートには、紙とデジタルの2種類があります。それぞれの特徴を整理しておきましょう。
紙のエンディングノート
書店や文具店で手軽に購入でき、手書きの温かみがある点が魅力です。デジタル機器の操作が苦手な方でも、すぐに書き始めることができます。一方で、保管場所をしっかり決めておかないと紛失のリスクがあり、内容を更新する際には書き直しの手間もかかります。
デジタルエンディングノート
スマートフォンアプリやウェブサービスを利用したデジタル版のエンディングノートも、近年人気が高まっています。情報を一元管理しやすく、検索機能で必要な情報にすぐアクセスできる点が大きな特徴です。
なかには、遺族がアプリ会社に身分証明書を提示しないと情報を開示できない仕組みを採用しているサービスもあり、セキュリティ面で工夫がされています。
ただし、デジタル機器の操作に不安がある方には不向きな面もあり、サービス自体が終了するリスクもあります。そのため、重要な情報はデジタルだけに頼らず、紙のメモや家族への口頭伝達など、複数の手段を組み合わせて管理しておくと安心です。
家族に確実に伝えるための3つの工夫

エンディングノートを完璧に書いても、家族がその存在に気づけなければ意味がありません。最後に、確実に伝えるための工夫を紹介します。
工夫①:保管場所だけは事前に伝えておく
すべての内容を見せる必要はありませんが、「どこにあるか」だけは伝えておくことが何より重要です。「リビングの引き出しにあるよ」と一言伝えておくだけで、いざというときにスムーズに見つけてもらえます。
工夫②:定期的に見直す
パスワードを変更したり、新しいサービスに登録したりするたびに、エンディングノートの内容も更新する必要があります。年に一度、誕生日や年末年始など決まったタイミングで見直す習慣をつけましょう。
工夫③:遺言書とあわせて整理する
エンディングノートは、あくまで「想いと情報を伝えるための手紙」であり、法的な効力はありません。財産の分割など、確実に実行してほしい事柄がある場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成し、両方を組み合わせて備えることが基本です。
まとめ:「書きすぎない勇気」が家族を守る
エンディングノートにデジタル情報を書く際、最も大切なのは「すべてを正直に書くこと」ではなく、「安全に伝わる形で書くこと」です。
パスワードをそのまま書いてしまえば、確かに家族はすぐにアクセスできるようになります。しかし、その手軽さの裏には、紛失や盗難によって悪用されるリスクが潜んでいます。
ヒント形式で書く、保管場所だけを示す、専用のアプリと連携する——こうした工夫を取り入れることで、家族にも安全にも配慮した情報整理ができます。
「もっと安全な書き方を知っていればよかった」と後悔する前に、今日から少しずつ、デジタル情報の整理を始めてみてください。その一歩が、将来の家族を守ることにつながります。
エンディングノートは「すべてを書くノート」ではありません。家族が困らず、第三者には悪用されない状態を作ることが、本当の終活です。
「家族が困らないこと」と「情報を守ること」。その両方を実現する書き方が、現代の終活には求められています。
デジタル資産の整理、一人で抱え込まないで

「自分のやり方で本当に安全なのか不安」「何を書いて、何を書かないべきか判断が難しい」——そんな方には、専門家のサポートを借りる方法もあります。
デジタル資産の生前整理サービスならデジ・タクセル は、パスワードをはじめとするデジタル情報の整理を、ご本人の意思に基づいてサポートするサービスです。「何を書けばいいか」「何を書かない方がいいか」まで、専門家が一緒に整理します。安全な伝え方や保管方法までアドバイスを受けることができます。
「自分の場合は何を整理すればいいのかわからない」という方は、まずはサービス内容を確認してみてください。元気なうちに準備を始めることで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
この記事の執筆者

田原 日出夫
現代文・小論文講師/終活・相続ライター 30年以上にわたり国語教育に携わり、東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学など難関大学合格者を多数輩出。誌面ライター13年、Webライター約8年の経験を持ち、終活・相続・デジタル遺産・シニア向けIT活用などの分野で執筆を行う。複雑な制度や専門用語を、初めての方にもわかりやすく伝えることを信条としている。
参考資料(2026年6月閲覧)
- 小さなお葬式「エンディングノートには何をどう書く?パスワードの管理方法についても解説」
- 税理士法人レガシィ「エンディングノート(終活ノート)の書き方」
- 行政書士法人Legal Life Agency「エンディングノート 書き方」
- ALSOKジョイライフ「エンディングノート(終活ノート)とは?書くべき内容とメリット」
- ユーキャン「エンディングノートとは?作成するメリット・書き方のコツ・注意点」

