「葬儀が終わってからずっと、手続きに追われっぱなし。相続税のことまで、まだ手が回っていない」
大切な方を見送ったあとの数ヶ月は、想像以上にあわただしいものです。
最初に、いちばん大切なことをお伝えします。
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
この期限を過ぎると、本来の相続税に加えて、ペナルティにあたる税金が上乗せされます。
ただし、怖がる必要はありません。
罰則は「早く動くほど軽くなる」仕組みになっており、期限に間に合いそうにないときの対処法もあります。
私は介護福祉士として15年以上、介護の現場でご利用者やご家族と接してきました。
この記事では、相続税の申告期限の数え方・遅れた場合のペナルティの中身・間に合わないときの対処法をお伝えします。
読み終えるころには、ご自身の場合の期限がいつで、今なにをすべきかがはっきりするはずです。
相続税の申告期限は10ヶ月|亡くなったことを知った日の翌日から数える

冒頭でもお伝えした通り、相続税の申告は、被相続人(亡くなった方)が亡くなったことを知った日の翌日から、10ヶ月以内。
通常は、亡くなった日の翌日から数えて10ヶ月です。
たとえば1月6日に亡くなった場合、申告期限はその年の11月6日です。
期限の日が土日祝日にあたるときは、翌平日が期限になります。
あわせて、間違えやすいポイントが2つあります。
- 納税も同じ期限……申告書の提出だけでなく、税金を納めるのも10ヶ月以内
- 提出先は「亡くなった方」の住所地の税務署……相続人の住所地ではありません
10ヶ月と聞くと長く感じるかもしれません。
しかし実際は、葬儀や法要、財産の調査、遺産分割の話し合いと進むうちに、あっという間に過ぎていきます。
期限を過ぎると罰則がある|上乗せされる税金は2種類

では、この期限を過ぎてしまうと、なにが起こるのでしょうか。
期限を過ぎた場合のペナルティは、大きく2種類です。
- 無申告加算税……申告しなかったことに対する、罰金にあたる税金
- 延滞税……納付が遅れた日数に応じてかかる、利息にあたる税金
なお、財産を隠すなど悪質な場合には、無申告加算税に代えて、さらに重い重加算税がかかります。後ほど詳しく解説します。
その前に、前提をひとつ確認してください。
相続税の申告が必要なのは、遺産が基礎控除を超える場合などです。
基礎控除に収まるご家庭は、そもそも申告の必要がありません。
相続税がかかるかどうかの確かめ方は、基礎控除の計算をまとめた別の記事で解説しています。
ただし、注意がひとつ。
小規模宅地等の特例などを使って税額を0円にする場合は、申告が必要です。
「うちは特例を使って税額が0円だから関係ない」と思い込まないでください。特例の仕組みは別の記事で詳しく解説しています。
それでは、2つのペナルティを順に見ていきます。
無申告加算税|自分から申告すれば5%に軽減される
1つめのペナルティは無申告加算税。
期限までに申告しなかった場合に、本来の税額に上乗せされる税金です(国税通則法66条)。
税務調査を受けてから納めることになった場合、割合は原則として次のとおりです。
- 税額のうち50万円以下の部分……15%
- 50万円を超え300万円以下の部分……20%
- 300万円を超える部分……30%
ここで、覚えておいてほしい救済があります。
税務調査の事前通知が来る前に、自分から期限後申告をすれば一律5%まで軽くなります。
ほかにも段階がありますが、大切なのは「遅れたと気づいたら、すぐ申告するほど軽い」という原則です。
なお、期限に間に合わなかったことに正当な理由があると認められる場合は、課されないこともあります。
延滞税|納付が遅れた日数分の利息がかかる

2つめのペナルティは延滞税。
延滞税は、納付が遅れた日数に応じてかかる利息にあたる税金です。
割合は年によって変わります。2026年(令和8年)は次のとおりです。
- 納期限の翌日から2ヶ月以内……年2.8%
- 2ヶ月を経過した後……年9.1%
2ヶ月を過ぎると、割合が3倍以上に跳ね上がります。
たとえば期限内に申告した税額100万円の納付が1年遅れると、延滞税はおよそ8万円です。
放置した分だけ、確実に増えていきます。
無申告加算税と同じく、延滞税も「早く納めるほど軽い」仕組みです。
※延滞税は日数で計算されます。金額は目安としてお考えください。
財産を隠すと重加算税|最も重い40%
もうひとつ、知っておいてほしい税金があります。
財産を意図的に隠したり、書類を偽装したりしたうえで申告しなかった場合は、無申告加算税に代えて重加算税40%が課されます。
加算税の中で最も重いペナルティです(国税通則法68条)。
「名義だけ家族にした預金なら分からないだろう」は通用しません。
税務署は金融機関の記録を調べられます。
「正直に、期限内に」
結果的に、この考え方が税金も安く済む、いちばん安心な道です。
期限に間に合わないときの対処法|分け方が決まらなくても申告はできる
「10ヶ月以内に遺産の分け方がまとまりそうにない」——実は、これが期限に遅れるいちばん多い理由です。
残念ながら、「分け方が決まっていないから」という理由では、期限は延ばしてもらえません。
ただ、分け方が決まっていないままでも、申告書は提出できます。
方法は次のとおりです。
- 法定相続分(法律で決まった割合)で財産を取得したものとして、いったん期限内に申告・納税する
- 申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておく
- 分け方が決まったら、実際の内容で修正申告や更正の請求をして精算する
いったん申告しておけば無申告にはならず、小規模宅地等の特例なども、期限から3年以内の分割でさかのぼって適用できます。
ただし、分割見込書を出し忘れると、あとから分割しても特例は使えません。
財産の調査や書類集めに時間がかかりそうな場合も含めて、間に合わないかもと感じた時点で、早めに税理士に相談してください。
打つ手があるうちに動くことが、負担をいちばん小さくします。
介護の現場から伝えたいこと

看取りのあとの10ヶ月は、本当にあっという間です。
葬儀、役所への届け出、年金や保険の手続き、家の片づけなど——
このような手続きに追われるという話をよくお聞きします。
四十九日を終えて一息つくと、期限まで残り8ヶ月を切っています。
だからこそ、相続税がかかりそうかどうかの確認は、早めに済ませておいてほしいです。
かからないと分かれば安心できますし、かかりそうなら10ヶ月を計画的に使えます。
期限を守る一番の近道は、財産の全体像を早く把握すること——現場で手続きに追われるご家族を見てきた私の、率直な感想です。
まとめ|相続税の申告期限は10ヶ月・遅れるほど負担が増える
最後に、相続税の申告期限とペナルティのポイントを整理します。
【期限の基本】
- 申告と納税は亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
- 提出先は亡くなった方の住所地の税務署
- 分け方が決まらなくても期限は延びない(法定相続分でいったん申告できる)
【遅れたときのペナルティ】
- 無申告加算税……調査後は原則15%(最大30%)・自分から申告すれば5%に軽減される
- 延滞税……2026年は2ヶ月以内で年2.8%・2ヶ月を過ぎると年9.1%に跳ね上がる
- 重加算税……財産隠しは最も重い40%の上乗せ
10ヶ月を計画的に使う出発点は、財産の全体像の把握です。
ネット銀行や証券口座などのデジタル資産も含めた財産のリストづくりは、デジタル終活サービス「デジ・タクセル」を利用すれば効率よく進められます。
まずはカレンダーにご自身の場合の申告期限を書き込むところから始めてみてください。
期限が見えるだけで、10ヶ月の使い方が変わります。
この記事の監修者

yusuke /介護福祉士・FP3級
介護福祉士として15年以上、介護現場でご利用者やご家族と接してきました。
現在は個人事業主として介護タクシーを運営。介護の現場で見てきた「本当に困ること」をもとに、終活・介護・お金の話を、わかりやすくお伝えしています。

