
「SNSアカウント終活とは?」
「放置するとどうなるの?」
このような疑問を持つ方向けに、本記事では、相続や終活の知識がなくても大丈夫なように、SNSアカウントの終活についてわかりやすく解説します。
SNSアカウントの「終活」とは?
デジタル終活の中でも重要なSNS整理
SNSアカウントの整理は、今やデジタル終活の中でも特に大切なテーマのひとつです。
理由は簡単で、私たちの生活にSNSが深く関わっているからです。
Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、LINEなど、毎日のように使うツールがそのまま放置されると、大きな問題を引き起こす可能性があります。
たとえば、SNSアカウントが残ったままだと、故人の名前でスパムが投稿されたり、悪意のある第三者によって乗っ取られるリスクもあります。
総務省の「令和5年版 情報通信白書」では、個人が日常的に利用しているインターネットサービスとしてSNSが高い割合を占めており、特に若年層では利用率が8割を超えるとされています。総務省|令和5年版 情報通信白書|データ流通量の爆発的増加
また、家族が突然故人のSNSを目にしたとき、「どう扱えばいいのかわからない」「削除していいのかわからない」と悩んでしまうケースもあります。
SNSの整理は「単なるデータの削除」ではなく、残された人への配慮であり、自分の意思を残すための重要な準備でもあるのです。
なぜ今、SNSアカウントの終活が必要なのか
SNSアカウントの終活が必要とされている理由は、利用者数の増加と、デジタル情報の「遺品化」が進んでいるからです。
前述した通り、ほとんどの人が、何かしらのSNSに情報を残している状態なのです。
こうしたSNSは、本人が亡くなった後でも自動で削除されることはありません。
多くのSNSには「追悼アカウント」や「アカウント削除の申請」がありますが、申請を行えるのは、基本的に配偶者や法定相続人などに限られています。
しかも、申請には身分証明書や死亡証明書などが必要となるため、手続きが煩雑で放置されることも多いです。
たとえば、Instagramでは本人が亡くなったあと、家族が「追悼アカウント」への切り替えを申請できます。
しかし、必要書類がそろわなければ申請が通らず、結局アカウントがそのままになってしまうという問題が起きています。
また、月額課金されている有料サービス(例:音楽アプリ、動画配信アプリなど)と紐づいているケースもあり、SNSアカウントを放置することで知らないうちに請求が続いてしまうこともあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、SNSアカウントの終活は「今すぐ始めるべき準備」のひとつなのです。
放置されたアカウントがもたらすリスク

乗っ取り・悪用の危険性
使われなくなったSNSアカウントを放置しておくと、第三者に乗っ取られて悪用される危険性があります。
これはとても深刻な問題です。
SNSアカウントには、名前、メールアドレス、写真、時には位置情報など、たくさんの個人情報が含まれています。
パスワードが弱かったり、長い間ログインされていなかったりするアカウントは、悪意のある人にとって「狙いやすい標的」です。乗っ取られると、次のようなことが起こり得ます。
・本人になりすましてメッセージを送られる
・詐欺やウイルスリンクの拡散に使われる
・知人や家族の個人情報まで流出する可能性がある
総務省の「情報通信白書(令和5年版)」によると、サイバー攻撃の中でも「なりすまし」や「アカウントの不正使用」は増加傾向にあり、SNSを使ったトラブルの件数も年々増えています。
生前に使っているSNSアカウントをリストアップし、不要なものは削除する、もしくはパスワードを強化して家族に引き継ぐ方法を決めておくことが大切です。
SNSアカウントの「終活」は、セキュリティの面でも大きな意味を持つのです。
家族や友人への心理的影響
SNSアカウントが亡くなった人の名前でそのまま残っていると、それを見た家族や友人は大きなショックを受けることがあります。
これは、いわゆる“デジタル遺品”が心理的負担になるケースです。
SNSの投稿には、その人の言葉、写真、思い出が詰まっています。
亡くなった方のアカウントがタイムラインに流れてきたり、誕生日の通知が来たりすると、「もういない」という事実を改めて突きつけられるようで、つらく感じる人が多いのです。
特にLINEのようなコミュニケーションアプリでは、グループトークに故人の名前が残っていたり、過去のメッセージが見返せてしまったりすることで、気持ちの整理がつかない人もいます。
このような心理的負担を避けるためには、SNSのアカウントを「どう扱ってほしいか」を本人があらかじめ決めておくことが重要です。
終活の中で家族に伝えておくことで、気持ちよく見送る手助けにもなります。
デジタル情報も“形を持たない遺品”として、家族の心に影響を与える存在です。
大切なのは、残された人が安心して故人を思い出せる環境をつくることです。
SNS終活の基本ステップ【初心者向け】
使っているSNSのリストアップ
SNSの終活を始めるとき、まず最初にやるべきことは「自分が使っているSNSの整理」です。
私たちは日々、LINEやInstagram、X(旧Twitter)など複数のSNSを使っており、知らないうちに登録したまま忘れているサービスもあるかもしれません。
亡くなったあと、どんなSNSを使っていたか家族が把握できないと、アカウントはそのまま放置され、さまざまなリスクにつながります。
リストアップの際は、以下のようなポイントを紙やスマホのメモアプリに記録しておくのがおすすめです。
- 利用しているSNSの名前(例:LINE、Facebook、Instagramなど)
- アカウント名(ユーザー名や登録名)
- 登録しているメールアドレス
- 今後、削除したいか残したいかの希望
この作業をするだけでも、家族が対応しやすくなり、自分の意志を伝える準備が整います。
残す・消すの判断とパスワード管理
SNSアカウントを整理したあとは、「このアカウントは残したいのか、それとも削除するのか」を自分で決めておくことが大切です。
たとえば、InstagramやFacebookには「追悼アカウント」という仕組みがあり、削除せずに思い出として残すこともできます。
一方、個人的な投稿が多く、他人に見られたくない場合は削除を希望する人もいるでしょう。
残すと判断した内容は、忘れずにログイン情報とあわせて控えておきましょう。
SNSはセキュリティが高く、たとえ家族であってもログインできない仕組みになっています。
そのため、生前にパスワードやIDの保管方法も決めておくことが重要です。
パスワードの管理方法には次のような手段があります。
- 紙に書いて、エンディングノートや封筒に入れて保管する
- 家族と共有する方法をあらかじめ決めておく
- パスワード管理用のアプリを使う(ただし家族にも使い方を伝えておく)
こうして整理しておくことで、いざというときも慌てることなく、アカウントの削除や管理がスムーズに行えます。
エンディングノートや共有メモの活用法
SNS終活の情報を記録するには、エンディングノートやスマホのメモアプリを活用すると便利です。
特別な道具や知識がなくても、すぐに始められるという点で、誰にでも取り組みやすい方法です。
エンディングノートには、使っているSNSやアカウント名、削除してほしいもの、残してほしいもの、ログイン情報をまとめておくと良いでしょう。
これにより、家族がアカウントにどう対応すればいいか迷わずにすみます。
なお、東京都福祉保健局など公共機関でも、無料でダウンロードできるエンディングノートのテンプレートが公開されています。
こうした信頼できる資料を活用するのもおすすめです。
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/r5-2-7-1acp
また、デジタルに慣れている方であれば、Googleドキュメントなどを使ってクラウドに記録し、家族と共有する方法もあります。
ただし、セキュリティ対策としてパスワードや閲覧権限の設定には十分注意してください。
SNS終活は難しいものではありません。
必要な情報を「見える化」して、家族が安心できるようにしておくことが一番の目的です。
主要SNSの終活方法【Facebook/Instagram/X/LINE】
<h3>追悼アカウント・削除依頼のやり方</h3>
前述の通り、主要なSNSには、利用者が亡くなった場合のための「追悼アカウント」機能や、アカウント削除申請の仕組みが用意されています。
各SNSの対応方法は以下の通りです。
- 「追悼アカウント」または「アカウント削除」を選択可能。
- 追悼アカウントに設定すると、プロフィールは“思い出”として保存され、友人がコメントを残せます。
- 申請には死亡証明書や本人との関係を示す書類が必要です。亡くなった家族のFacebookアカウントについて削除をリクエストする
- 「追悼アカウント」に変更することで、投稿は残したまま誰もログインできなくなります。
- 削除申請も可能ですが、同様に証明書類が求められます。Instagramでの追悼アカウントについて
X(旧Twitter)
- アカウント削除のみ対応。追悼設定はありません。
- 家族または法的代理人が申請し、死亡証明書などを提出する必要があります。
亡くなられたユーザーのアカウントについてのご連絡方法
LINE
このように、SNSごとに対応方法や申請条件が異なるため、あらかじめ知識を持っておくことが非常に重要です。
大切なのは、「どのアカウントをどうしたいか」を自分で決めておき、家族に伝えておくことです。
これだけでも、残された人の負担は大きく減らせます。
それぞれのSNSで注意すべき点
SNSアカウントの終活には、各サービスごとの注意点を理解しておく必要があります。
以下のようなポイントに気をつけましょう。
Facebookの注意点
- 追悼アカウントを設定するには、生前に「後継連絡先」(レガシーコンタクト) を指定しておく必要があります。指定していない場合、遺族が設定を進めるのが難しくなります。
Instagramの注意点
- 追悼申請をした後はアカウントの編集や投稿削除が一切できなくなるため、事前に整理しておくことが大切です。
X(旧Twitter)の注意点
- 削除しか選べず、アカウントの保存・閲覧用として残す手段はないため、事前に投稿を保存したい場合はスクリーンショットなどで対応する必要があります。
LINEの注意点
- 利用規約上、アカウントの操作は「本人のみ」となっているため、事実上、死亡後に家族が手続きをするのは困難です。必要な情報を家族と共有しておくことが重要です。
こうしたサービスごとの違いを理解しておくと、「どのアカウントを残すか」「どれを消すか」の判断がスムーズになります。
SNSごとの仕様を知ることも、終活の立派な一歩です。
SNS終活に役立つツール・サービス
エンディングノートアプリ/パスワード管理ツール
SNS終活をスムーズに行うためには、専用のツールやアプリを活用するのが効果的です。
とくに役立つのが「エンディングノートアプリ」と「パスワード管理ツール」です。
エンディングノートアプリは、紙のノートと違ってスマホやパソコンで簡単に記録ができ、万が一のときに家族がすぐ確認できるメリットがあります。
自分のSNSアカウント名やログイン情報、削除してほしい希望などもまとめて記録でき、クラウド上に保存すれば紛失のリスクも減らせます。
パスワード管理ツール(例:1Password、LastPassなど)を使えば、SNSやメールアカウントのパスワードを一括で管理できます。
多くのツールはマスターパスワードひとつで他すべてにアクセスできるため、家族にその1つだけを伝えておけば、終活後の手続きも非常に簡単になります。
ツールの活用は、自分自身の負担を減らすだけでなく、家族への思いやりのカタチでもあります。
情報をまとめる手段として、今すぐ導入しておきたい便利な方法です。
デジタル遺品整理サービスの選び方
もし自分でSNS終活の作業をするのが難しいと感じたら、専門の「デジタル遺品整理サービス」に依頼するという選択肢もあります。
デジタル遺品整理サービスとは、スマートフォンやパソコン、SNSアカウントなどのデジタル情報を専門的に整理・削除してくれる民間の業者です。
生前整理に対応しているところもあり、アカウントの一覧化、削除依頼代行、端末内の写真やデータの抽出などを行ってくれます。
総務省もデジタル遺品に関する課題を取り上げており、個人情報の保護と適切な取り扱いが求められる時代に対応したサービスのニーズが高まっています。https://www.soumu.go.jp/main_content/000700946.pdf
サービスを選ぶときは、以下の点に注意しましょう。
- 実績がある会社か(信頼できる口コミやメディア掲載など)
- 料金が明確に提示されているか
- プライバシー保護や個人情報管理が徹底されているか
たとえば、「デジタル遺品整理相談室」や「デジタル遺品ドットコム」などは、遺族対応にも定評があり、生前の相談にも応じています。
どこまで自分で行い、どこをプロに任せるかを判断することで、効率的に終活を進めることができます。
【まとめ】SNSアカウント終活で「情報の遺品化」を防ごう
少しの準備が大きな安心につながる
SNSアカウントの終活は、ほんの少しの準備をしておくだけで、家族や周囲の人の大きな助けになります。
特に、何の情報も残さずに突然亡くなってしまった場合、家族はどのSNSに何が残っているのか把握できず、アカウントの削除や管理に非常に時間がかかることがあります。
大切なのは、今のうちに自分のアカウント情報や意向をまとめておくこと。
手間はそれほどかかりませんが、残された人にとっては大きな安心になります。
今日からできる一歩を
SNSアカウントの終活は、難しく考える必要はありません。
今日からできる簡単なことから始めましょう。
- よく使うSNSを書き出してリスト化する
- 削除したい・残したいアカウントを決める
- ログイン情報や登録メールアドレスを確認する
- 家族に伝えておきたいことをメモに残す
これだけでも、終活の第一歩になります。
後回しにせず、小さなことからでも始めておくことで、いざというときに家族が困らずにすみます。
実際に、エンディングノートやメモアプリで情報を記録している人は増えており、今ではSNS終活は“特別なこと”ではなく、身近な生活準備の一部になりつつあります。
未来の自分と大切な人のために、できるところから準備をはじめましょう。