「おひとりさまの終活」いう言葉をよく耳にするようになりました。
孤立死の回避や自身の望む最期を迎えるための準備として、おひとりさまの終活の必要性が高まっています。しかし、具体的に何をすべきか、どのくらいの費用がかかるのか、不安に感じる方も多いでしょう。
本記事では、おひとりさまの終活に必要な11の項目や費用の目安を詳しく解説します。内閣府が行った調査によると、2019年度中に東京23区内で自宅にて亡くなったおひとりさまの高齢者は3,936人*に上り、この数字は終活の緊急性を如実に物語っています。
おひとりさまの方が安心して終活に取り組めるよう、具体的なアドバイスと情報をお届けします。
おひとりさまの終活は必要なのでしょうか?
おひとりさまの終活は、すべての人が必ず取り組まなければならないものではありません。しかし、孤独死を防ぎたい方、あるいは自身の意向に沿った葬儀や遺品の整理を望む方にとっては、終活に取り組むことは有益な選択肢です。
ここでは、終活の概念や関心が高まっている要因、おひとりさまが終活に取り組まなかった際に生じうるリスクについて詳細に解説していきます。
終活の定義とは何でしょうか?
終活とは、人生の最終段階に向けて準備する活動を指します。具体的には、身の回りの整理整頓、葬儀や墓の手配、財産相続の計画などが含まれます。
現代社会では、高齢化が進む中で「老い」への関心が高まっています。同時に、おひとりさまの高齢者の孤独死や相続に関するトラブルといった社会問題も増加傾向にあります。
このような状況に対応するため、社会全体に広がりつつあるのが終活です。では、実際におひとりさまの孤独死の現状はどのようになっているのでしょうか。
孤独死とおひとりさまの現状について
内閣府が2018年に行った調査結果*によれば、60歳を超える男女の約3分の1が、孤立死を身近な課題として「ある程度認識している」「強く認識している」と答えています。おひとりさまに限ると、この比率は約半数にまで上昇します。
首都圏23区において、おひとりさまで孤立死と推測される65歳以上の方の死亡例も、年を追うごとに増加の一途*をたどっています。
内閣府の統計データでは、2019年には東京23区内で約4,000人*ものおひとりさま高齢者が自宅で最期を迎えたとされています。
西暦 | 東京23区内のおひとりさま高齢者の 自宅での死亡者数 |
---|---|
2019 | 3,936人 |
このデータが示すところによれば、おひとりさまにとって孤独死は極めて切実な課題として浮上しつつあることが見て取れます。
おひとりさまが終活をしないと発生するリスクとは?
おひとりさまが終活をしなかった場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
- 孤独死して誰にも気づいてもらえない状況に陥る
- 財産の相続が自分の希望とは異なる形で行われてしまう
- 自身の死亡や認知機能の低下により、親族や家主など周囲の人々に負担をかけてしまう
孤独死を避けるためには、社会とのつながりを維持することが重要です。この目的を達成するために、以下のような具体的な方策を検討できます。
- 宅配サービスや訪問看護などの訪問型サービスを利用する
- 遠方に住む親族に安否を伝えられる見守り機能付き家電を活用する
- 地域のイベントに参加して、近隣の人々とコミュニケーションを取る
遺産の承継に関しては、法的な効力を持つ遺言状を作成することにより、自らの希望に添った相続の実現が可能となります。
周囲の人々に負担をかけないようにするには、元気なうちから生前整理や不要品の処分、終活ノートの作成などを通じて、自分の希望を第三者に伝えられるようにしておくことが効果的です。
おひとりさまの終活で取り組むべき11の項目
おひとりさまの終活で取り組むべき11の項目をご紹介します。すべてを一度に始めるのは難しいかもしれません。費用がかからないものや、自分で取り組めそうなものから少しずつ始めてみるのがおすすめです。
身の回りの整理を行う
身の回りの整理とは、生きている間に所有物を整理整頓することを指します。整理整頓により、日常生活でものを探し回る手間が省けます。
身の回りの整理にかかる費用は、自分で行う場合は自治体などで定められた処分費用のみです。アドバイザーに相談する場合は、1日あたり1万円ほどかかります。
業者に作業を依頼すると、住居の広さによって異なりますが、おひとりさまがよく利用する1Kタイプなら3万円以上、一般的な3LDKタイプなら約10万〜50万円が相場です。
業者に依頼する際は、複数の会社から見積もりを取ることをおすすめします。
断捨離に取り組む
断捨離が話題になり、不要になったものをリサイクルショップに出品する方も増えています。
断捨離とは、ヨガの思想である「断行(不要なものを断つ)」「捨行(不要なものを捨てる)」「離行(物への執着をなくす)」の頭文字を取った言葉です。
不要品の整理に要する経費は、日常的な片付けと同じく、自ら実施すれば廃棄物の処理料金のみで対応できます。価値ある物は、中古品店で好条件での売却が見込める場合もあります。
遺言書や終活ノートを作成する
おひとりさまに限らず、終活で大切なこととして、遺言書や終活ノートの作成があります。
遺言書は法的要件を満たせば法的効力を持ち、終活ノートは自分の思いを記して終活の全体像を把握するためのものです。
法的に有効な遺言書を作成するために弁護士に依頼した場合、費用の目安は以下の通りです。
- 相談費用:1万円
- 遺言書作成費用:10万~20万円
- 遺言書保管費用:1万円
- 遺言執行にかかる費用:30万円~
- その他の費用:交通費実費分、日当は1日あたり3万から5万円
上記費用は事務所ごとに自由に設定でき、状況に応じて大幅に異なる場合があります。 初回相談無料の弁護士事務所もあるため、まずはお気軽に問い合わせしてみましょう。
終活ノートは、1冊のノートから始めることができます。
医療・介護の意思表示をする
おひとりさまの終活では、家族がいる方以上に医療・介護の意思表示が重要です。家族がいる場合は、これまでの言動から助言してもらえる可能性もありますが、おひとりさまの場合は難しいでしょう。
まずは自分が望む医療・介護を受けるために、意思表示をしておくことが大切です。
おひとりさまの場合、医療・介護サービスを受ける際に身元引受人が求められることがあります。適任者が見つからない状況では、身元保証サービスの利用も選択肢となります。
このようなサービスにおける「医療介護等に関する意思表明書」などの作成には、概ね3万円を超える費用が発生するとされています。
葬儀やお墓について検討する
ひとり暮らしの方が終活を考える際、葬儀とお墓の決定は欠かせません。最近では小規模な家族葬が人気を集めています。
家族葬にかかる費用は、通常100万円から300万円ほどです。この金額には以下のものが含まれます。
- 葬儀そのもの
- 香典返し
- 供花
ただし、選ぶプランや内容によって実際の費用は変わります。
お墓の新規購入に関しては、以下の費用を合わせると100万円から300万円ほどになります。
項目 | 内容 |
---|---|
土地代 | 永代使用料 |
墓石代 | 石材の種類で変動 |
工事費 | 設置にかかる費用 |
お墓の価格は地域や石材の種類で大きく異なります。さらに、定期的な管理費用も忘れずに計算に入れましょう。
従来型のお墓以外にも、以下のような選択肢があります。
- 樹木葬
- 永代供養
これらの方法を希望する場合、費用は個別に確認が必要です。お墓の形にはさまざまな種類があるため、一概に金額をお伝えすることは難しいのです。
終活では、自分に合った方法を見つけることが大切です。費用面だけでなく、自分の希望や家族の意見も考慮しながら、最適な選択をしていきましょう。
高齢者の見守り・訪問サービス等に申し込む
ひとり暮らしの高齢者が孤独死を防ぐため、見守りや訪問のサービスを利用するのはとても賢明です。多くの地域で自治体がこうしたサービスを提供しています。
郵便局が提供する「みまもりサービス」は、家族や相談相手が近くにいない方々にとって心強い味方となります。
このサービスの特徴は以下の通りです。
- 定期的な安否確認
- 悩み事の相談対応
- 買い物のサポート
料金の目安は次のようになっています。
サービス提供元 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
郵便局 | 月額2,500円 | みまもりサービス |
自治体 | 原則無料 | 地域により異なる |
民間企業 | 月額2,000~14,000円 | 初回の契約料や機器代が必要 |
民間企業のサービスを選ぶ際は、初回の契約料や見守り用センサーなどの機器代金が別途かかることがあるので注意が必要です。
サービスの内容は提供元によって大きく異なります。自分に合ったものを選ぶために、以下の点を確認しましょう。
- 見守りの頻度
- 緊急時の対応方法
- 追加サービスの有無
- 料金プラン
プランやサービスの内容は様々なので、十分な比較検討をおすすめします。
身元保証サービスを検討する
おひとりさまの終活では、信頼できる友人や知人に身元保証人を頼めるのが理想的ですが、高齢になるほど難しくなる可能性があります。
また、身元保証人には身元保証契約に定められた義務に従って一定の責任が生じます。契約で施設使用料などの支払いが滞った場合に身元保証人が責任を負うと定められていれば、身元保証人が代わりに支払う必要があります。
援助を求められる相手がいない状況では、専門家への委託も視野に入れるべきでしょう。
身元保証サービスの料金の目安は30万円から50万円ほどです。サービス内容としては、入院時や高齢者施設への入居時に身元保証人になることなどが挙げられます。
身元引受のみならず、電話や訪問による生存確認から、成年後見制度の活用に関する助言まで包括的なサービスを、100万円を上回る料金プランとして提供している事業者も存在します。
死後事務委任契約を検討する
死後事務委任契約は、亡くなった後の手続きを誰かに任せる仕組みです。この契約の特徴は、終末期から死後の整理までをカバーすることです。周りの人に負担をかけたくない方にとって、この契約は有効な選択肢となります。
この契約は、他の契約と組み合わせることもできます。
- 任意後見契約
- 財産管理等委任契約
ただし、以下の点で重複が起こる可能性があるため、注意が必要です。
- 遺品の整理と処分
- 賃貸契約の解約
費用の目安は次の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
契約書作成料 | 30万円 |
死後事務報酬 | 50万~100万円 |
預託金 | 150万~200万円 |
死後事務報酬は、依頼する内容によって変わります。また、預託金は葬儀費用などを前もって預ける費用です。
契約の形や内容によって、実際の費用は変動します。自分に合った契約を選ぶために、以下の点を確認しましょう。
- 契約に含まれる具体的な業務
- 費用の詳細な内訳
- 契約期間
- 解約条件
契約形態や内容により、費用は大きく異なりますので注意が必要です。
任意後見契約を検討する
任意後見契約は、特におひとりさまの方が認知機能の衰えに備えるための大切な選択肢です。この契約により、判断力が低下した際に代わりに意思決定をする人を、元気なうちに決めておくことができます。
この仕組みは、成年後見制度の一部である任意後見制度を利用したものです。費用については、主に3つの項目があります。
- 書類作成にかかる費用:
- 公証人への手数料:1契約あたり1万1,000円
- その他:印紙代などの実費
- 後見監督人を選ぶための費用:
- 申立手数料:800円
- その他:郵便切手代などの実費
- 必要な場合は精神鑑定費用:5万~10万円ほど
- 後見人と後見監督人への報酬:
- 成年後見人の基本報酬:月額約2万円
- 成年後見監督人の基本報酬:月額1万~2万円ほど
- 両者とも管理する財産の額に応じて増える傾向あり
費用の種類 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
書類作成費用 | 1万1,000円 | 1契約、実費 |
後見監督人選任費用 | 800円 | 実費や精神鑑定費用が 必要な場合あり |
後見人基本報酬 | 月額2万円 | 財産管理額により変動 |
後見監督人基本報酬 | 月額1万~2万円 | 財産管理額により変動 |
個々の状況により費用は大幅に変動するので、事前に専門家に相談することをおすすめします。任意後見契約は将来の安心につながる重要な決断です。
財産管理等委任契約を検討する
財産管理等委任契約は、年齢を重ねるにつれて自分の資産を管理することが難しくなったときに、サポートを得るための大切な取り決めです。この契約は、通常、当事者同士で交わしますが、金融機関によっては代理人の登録を求められる場合もあります。
財産管理等委任契約の特徴は以下の通りです。
- 目的:
- 高齢などの理由で財産管理が困難になったときのサポート体制を整える
- 自分の意思で信頼できる人に財産管理を任せる
- 契約方法:
- 基本的に当事者間で直接契約を結ぶ
- 金融機関によっては代理人の登録が必要な場合もある
- 専門家への依頼:
- 弁護士や司法書士に依頼する場合、月額5万~10万円ほどの報酬が必要
- 多くの場合、この費用は契約書の作成に限定されることが多い
項目 | 内容 |
---|---|
契約の目的 | 財産管理が困難な場合のサポート |
契約方法 | 当事者間での直接契約が基本 |
専門家への報酬 | 月額5万~10万円ほど |
報酬の対象 | 契約書作成に限定されることが多い |
この契約を検討する際は、以下の点に注意しましょう。
- 信頼できる人を代理人に選ぶ
- 契約内容を十分に理解する
- 必要に応じて専門家のアドバイスを受ける
- 定期的に契約内容を見直す
ペットの将来を考える
おひとりさまでペットと暮らす方にとって、自分がいなくなった後のペットの行く末は大きな心配事です。ペットの幸せな未来のため、今からできる対策を見てみましょう。
ペットの預け先を決める重要性は次の2点です。
- ペットが衰弱死したり保健所に引き取られたりするリスクが上昇
- 心配のない老後を過ごすためにもペットの将来を考えることは大切
預け先の選択肢:
- NPO法人
- 動物愛護団体
- 民間企業のペット生涯預かりサービス
- ペット好きの知り合い
預け先の種類 | 特徴 |
---|---|
NPO法人 | 非営利で活動 ペットの幸せを第一に考える |
動物愛護団体 | 動物の福祉に特化 専門的なケアが期待できる |
民間企業 | 有料サービスで安定性がある 契約内容の確認が重要 |
知り合い | 信頼関係が築けている ペットの性格を理解している |
費用の目安:
- 1頭あたり100万円ほど
- 総額200万円以上からのサービスもある
- ペットの体重、種類、年齢などで費用が変わる
注意点:
- 高額なサービスが多いため、事前によく相談する
- 複数の選択肢を比較検討する
- 契約内容をしっかり確認する
- ペットの特性や好みを伝える
- 定期的に預け先の状況を確認する
ペット好きの知り合いがいる場合は、引き取ってもらえる可能性もあります。この場合、ペットの性格や習慣を詳しく伝え、必要な費用の話し合いも忘れずに行いましょう。
大切なペットの未来を守るため、今からできることを始めましょう。専門家に相談したり、ペットの預かりサービスの説明会に参加したりするのも良い方法です。
ペットとの幸せな時間を過ごしながら、その先の未来も見据えて準備を進めていきましょう。
おひとりさまの終活に関する4つのよくあるご質問
おひとりさまの終活について、多くの方が気になる4つの疑問にお答えします。終活に関する不明点や不安を和らげ、ご自身に適した方法で進められるヒントをご紹介いたします。
Q:女性のおひとりさまも終活は必要でしょうか?
終活は強制ではありません。ただし、関心をお持ちでしたら、できるところから始めてみるのはいかがでしょうか。
終活で確認したいポイントは、性別によって大きく異なることはありません。終活を進めておくことで、万が一のときでも、ご自身の希望をより確実に実現できる可能性が高くなります。
Q:終活の準備はどこから始めるのがよいですか?
終活に決まったルールはありません。まずは費用のかからないことから始めるのがおすすめです。
終活ノートの作成は、1冊のノートがあれば取り組めます。日頃からパソコンやスマホをお使いなら、ワードやメモ帳を活用するのも効果的です。
また、自治体などが開く無料相談会に参加するのも一案です。専門家のアドバイスを受けられる貴重な機会になるでしょう。
Q:終活に必要な費用はどれくらいになりますか?
人生の終盤に向けた準備に関する経済的負担は、通常10万円ほどから始まり、ケースによっては100万円単位に達する可能性もあります。
たとえば、お墓や葬儀にかかる費用は、地域や葬儀社、利用するサービス内容によって大きく変わります。
死後事務委任契約や任意後見契約を結ぶかどうかでも、終活にかかる全体的な費用に影響を及ぼすのです。
終活を進める際は、どの程度の予算を設けるか、あらかじめ概算を決めておきましょう。ご自身の希望と予算のバランスを考えながら計画を立てていくことが大切です。
Q:終活について誰に相談すればよいのでしょうか?
終活の相談先として、まずは自治体の福祉課や地域包括支援センターがおすすめです。東京都豊島区の「終活あんしんセンター」のような専用窓口も参考になります。
相続、遺言、葬儀など専門性の高い内容は、司法書士や弁護士に相談するのが適切です。おひとりさまの終活は、自分に合った進め方を見つけることが重要です。
まとめ
おひとりさまの終活は、孤独死の防止や希望通りの葬儀・遺品処理を実現するために重要です。
具体的には、身の回りの整理、遺言書や終活ノートの作成、医療・介護の意思表示、葬儀やお墓の検討、見守りサービスの利用などが挙げられます。
費用は項目によって様々ですが、自分でできることから始めるのがおすすめです。
終活は強制ではありませんが、自分らしい人生の締めくくりを準備し、周囲への配慮も含む大切な取り組みです。自治体や専門家に相談しながら、自分に合った方法で進めていくことが大切です。