相続税と贈与税の賢い節税術7選!相続時精算課税制度も徹底解説

生前贈与

相続税と贈与税は、財産を次世代に引き継ぐ際に避けては通れない重要な税金です。

特に2024年から制度改正により贈与財産の相続財産への加算期間が延長されるなど、大きな変更点が加わりました。相続時精算課税制度の変更点も見逃せない内容です。

本記事では、両税の基本的な仕組みから計算方法、生前贈与の活用術、不動産贈与の注意点まで、知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。

これから相続対策や資産移転を考えている方にとって、必ず参考になる必見の内容です。

それでは、無駄な税金の支払いを避けるべく徹底的に解説していきますので、最後までご覧ください。

目次

相続税・贈与税の仕組みと重要な違い

相続贈与メイン

財産の移転には「相続税」と「贈与税」という2種類の税金がかかります。両者の基本的な性質を表で比較してみましょう。

項目相続税贈与税
発生時期お亡くなりになった時点財産譲渡の合意時点
課税対象基礎控除を超えた相続財産年間110万円超の贈与財産
納税義務者財産を受け継いだ相続人財産を受け取った譲受人
税率の特徴比較的低率相続税より高率

相続税は被相続人がお亡くなりになった際に発生する税金です。相続人の人数によって基礎控除額は変動します。たとえば相続人が一人なら3,600万円まで、二人なら4,200万円までは相続税がかかりません。

一方で贈与の場合は、贈与者が自由なタイミングで財産を譲渡可能です。年間110万円までの贈与であれば贈与税は非課税となります。計画的な贈与を行うことで、節税効果が期待できます。

申告*・納付のタイミングの違い

両税の申告時期*と納付期限*について詳しく見ていきましょう。

区分相続税贈与税
発生時期死亡時点贈与合意時点
納付期限死亡を知った翌日から10ヶ月以内贈与年の翌年2/1~3/15

両者は財産移転のタイミングや申告期限が大きく異なります。相続税は被相続人の死亡時点で自動的に発生し、意思表示の有無にかかわらず、法定相続人に財産が引き継がれます。

ただし、基礎控除額以下の場合は課税されません。申告と納付は、死亡を知った翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

一方、贈与税は贈与者と受贈者の合意があった時点で発生します。口頭での合意も有効ですが、トラブル防止のため贈与契約書の作成をお勧めします。

申告と納付は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに行います。年間110万円以下の贈与は非課税となります。

*贈与税を申告しなければならないけど、計算が苦手で贈与税額を計算するのが不安という人も多いかと思います。その場合は、国税庁の提供する「確定申告書等作成コーナー」の贈与税額自動計算を利用しましょう。ご利用の詳細はこちらからご覧ください。

対象者の範囲に関する重要な違い

財産移転の対象者について、両者を比較してみましょう。

制度対象範囲
相続法定相続人のみ
贈与関係性を問わない

贈与は、血縁関係の有無にかかわらず実施できます。相続には法定相続人という制限があり、配偶者や子どもが第一順位となります。子どもがいない場合は両親へと相続権が移ります。

税額の計算方法と実質的な負担

同額の財産移転でも、税負担は大きく異なります。1億円の財産移転を例に見てみましょう。

税種別計算例(1億円の場合)
相続税*(相続人1名)1,220万円
贈与税*(特例贈与)4,799万5,000円

贈与税は相続税に比べて税率が高く設定されています。相続人が複数いる場合、相続税はさらに軽減されます。

生前贈与を活用した節税の可能性

計画的な生前贈与により、総額の税負担を抑えられる場合があります。たとえば1億円の財産を25回に分けて年間400万円ずつ贈与すると、総税額は837万5,000円となります(算出に必要な詳細の税率や控除額は出典をご確認ください*)。一括相続との比較は以下の通りです。

移転方法税負担総額の例
一括相続1,220万円
分割贈与837万5,000円

適切な財産移転の方法を選択することで、税負担を最適化できる可能性があります。相続と贈与、それぞれの特徴を理解し、状況に応じて活用することが重要です。

相続税と贈与税の税額計算を徹底比較

財産移転の際の税負担を把握するには、実際の税額計算が欠かせません。相続税と贈与税では、計算方法や適用税率が大きく異なります。

財産移転の方法によって税負担が変わるため、具体的な数値をもとに最適な方法を検討することが重要です。以下で、それぞれの税金について実際の計算例を見ていきましょう。

相続税の具体的な計算方法

遺産総額1億円、法定相続人が子ども2人のケースで相続税額を計算してみます。

計算項目金額の例
遺産総額1億円
基礎控除額4,200万円(3,000万円+600万円×2人)
課税対象額5,800万円(1億円-4,200万円)

相続税の計算では法定相続人の数が重要な要素となります。税額は以下の手順で算出します。

算出例:

  1. 課税遺産を法定相続分で按分
    • 5,800万円÷2人=2,900万円(一人あたり)
  2. 各相続人の税額を計算
    • 2,900万円×15%-50万円=385万円(一人あたり)
  3. 相続税の総額を算出
    • 385万円×2人=770万円
*出典:

贈与税の具体的な計算方法

親から18歳以上の子どもへ2,000万円を贈与するケースで考えてみましょう。

計算項目金額の例
贈与額2,000万円
基礎控除額110万円
課税対象額1,890万円

贈与税は年間の贈与額から基礎控除を差し引いて計算します。この例では以下のように算出されます。

算出例:

  1. 課税対象額の確定
    • 2,000万円-110万円=1,890万円
  2. 税率の適用(特例贈与の場合)
    • 1,890万円×45%-265万円=585万円

計画的な贈与を行えば、年間110万円までは非課税となります。贈与時期を分散させることで、税負担を最適化できる可能性があります。

なお、特定の目的に応じた贈与の特例制度も設けられています。状況に応じて、これらの制度を活用することで税負担を軽減できる場合もあります。

移転方法メリット
相続基礎控除が大きい
贈与計画的な実施が可能

生前贈与が効果的なケースと活用のポイント

生前贈与

財産移転の方法として生前贈与が特に有効なケースがあります。以下の条件に該当する方は、生前贈与の活用を積極的に検討してみましょう。

条件メリット
贈与者が若く健康長期的な計画が可能
収益不動産所有将来的な資産増加の抑制
複数の受贈者非課税枠の最大活用

計画的な生前贈与は、相続税負担の大幅な軽減につながる可能性があります。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

元気なうちから始める資産の贈り方

年間110万円までの贈与税非課税制度を活用すれば、財産の世代間移転を効率的に進められます。ただし、計画的な贈与には以下のような注意すべきポイントがあります。

  1. 贈与者に関わる相続上の留意点*
    • 生前贈与から3年以内に贈与者が死亡した場合、当該贈与財産は相続財産に算入されることとなります。 2027年より、贈与時から相続時までの加算期間が段階的に延長され、最終的に7年間まで拡大されます。
  2. 税務上のリスク管理
    • 税務署から一括贈与と判断されないために、以下の3つの対策が効果的です。
対策具体的な方法期待される効果
贈与契約書の用意贈与の意思を書面で明確化贈与の事実を証明できる
贈与時期の工夫毎年異なる時期に実施定期的な贈与と判断されにくい
贈与金額の調整毎回金額を変える計画的な贈与と見なされにくい

このような対策を講じることで、税務調査でも適切な贈与として認められやすくなります。

複数の受贈者がいる場合の活用術

子や孫が多い場合、非課税枠を最大限活用できます。たとえば、受贈者が5人いる場合は以下表の通りです。

受贈者数年間非課税額計算方法
5人550万円110万円×5人

受贈者が多いほど、短期間で効率的な資産移転が可能になります。世代を超えた財産移転の手段として有効です。

収益不動産所有者の賢い活用法

賃貸物件などの収益不動産を所有している場合、生前贈与は特に効果的です。その理由は以下の通りです。

  • 将来的な家賃収入による資産増加の抑制
  • 相続財産の早期移転による相続税負担の軽減
  • 相続時精算課税制度の活用可能性

不動産の贈与における選択肢は下記2点です。

  • 通常の生前贈与
  • 相続時精算課税制度(特別控除額2,500万円)

収益物件を早期に承継することで、相続税の課税価格を効果的に圧縮することが可能です。その際は、贈与税の課税影響を勘案し、相続時精算課税制度等の税制優遇措置の適用についても併せて精査することをお勧めいたします。

相続時精算課税制度の仕組みと活用ポイント

相続時精算課税制度は、2,500万円という大きな特別控除枠を活用して、世代間の資産移転をスムーズに進められる制度です。制度を最大限活用するには、基本要件の理解が不可欠です。

利用できる方の条件と制度内容は以下の通りです。

対象者年齢要件特記事項
贈与する側60歳以上父母・祖父母に限定
贈与を受ける側18歳以上子・孫が対象

制度の特徴として、贈与者ごとに2,500万円までの特別控除が設けられています。例えば、父母それぞれから贈与を受けた場合、合計で5,000万円までの特別控除が可能となります。

また、この制度は贈与者ごとに選択できます。父からの贈与は相続時精算課税制度を利用し、母からの贈与は暦年贈与を選択するといった柔軟な対応が可能です。

ただし、一度この制度を選択すると、その贈与者との関係では暦年贈与への変更はできません。そのため、資産の状況や将来の相続を見据えた慎重な検討が必要となります。

制度のメリットと2024年からの変更点

2024年1月からの制度改正により、さらに使いやすい制度となりました。主な特徴は以下の通りです。

項目詳細
特別控除2,500万円まで非課税
基礎控除追加年間110万円(2024年~)
控除の累積特別控除額まで何回でも可能
超過分の税率一律20%

基礎控除に関する重要なポイントは以下の通りです。

  • 2024年以降の贈与に適用
  • 既存利用者も対象
  • 年間110万円の追加控除

相続開始時における精算の流れ

相続開始時には以下の計算方法で精算が行われます。

計算項目内容
課税対象累積贈与額(基礎控除除く)+相続財産
精算方法相続税と贈与税の差額調整
還付可能性贈与税>相続税の場合

制度選択する際は下記の注意点を確認しましょう。

  • 贈与者ごとの選択が可能
  • 選択後の取り消し不可
  • 暦年課税との併用は不可

2024年からの災害関連税制の改正点

自然災害で被害を受けた資産の評価方法が大きく変更になりました。この改正により、被災した資産の価値をより実態に即して評価できるようになります。

新制度の基本的な枠組みは以下の通りです。

項目内容備考
対象資産被災した土地・建物証明書類が必要
適用期間2024年1月以降の災害遡及適用なし
評価方法相続時の価値で再計算被害状況を考慮

この制度の導入により、被災後の実際の資産価値が相続税の計算に反映されることになります。資産価値の変動に柔軟に対応できる仕組みとなっているため、被災者の方々の負担軽減が期待できます。

制度を効果的に活用するためには、資産状況に合わせた贈与計画の立案が重要です。特に、贈与者それぞれの事情を考慮した判断が求められます。また、将来の相続も見据えた総合的な対策を立てることで、より効果的な資産管理が可能となります。

なお、この制度を最大限活用するためには、税理士などの専門家への相談が不可欠です。資産状況や被災状況を詳しく分析し、最適な対応方法を見つけることができます。

不動産の生前贈与で知っておくべきポイント

不動産手のひら

不動産の生前贈与は、効果的な資産移転の方法の一つですが、起こりうる事象を十分理解した上で実施する必要があります。以下で具体的なポイントを解説していきます。

土地の生前贈与がもたらすメリット

不動産の生前贈与は、計画的な財産移転と相続税対策の両面で効果を発揮します。主なメリットは以下の通りです。

メリット内容
贈与先の自由選択法定相続人以外への財産移転が可能
迅速な財産移転短期間での資産移転を実現
相続税の軽減将来的な相続財産の圧縮効果

生前贈与では遺言書がない場合の法定相続や遺産分割協議と異なり、贈与者の意思で受贈者を決定できます。このため、以下のような柔軟な財産分与が可能になります。

  • 特定の家族への財産移転
  • 法定相続人以外への贈与
  • 計画的な資産分散

また、相続開始前に財産を移転することで、将来の相続税負担を軽減できる可能性があります。ただし、効果的な節税を実現するには、相続税と贈与税を比較した綿密なシミュレーションが必要です。

土地を贈与する際の税金の考え方

不動産の生前贈与では、税金面での慎重な検討が求められます。税負担が当初の想定を大きく上回る可能性があるため、贈与前の詳細な試算が重要となります

贈与時に発生する主な税金について、具体的に説明します。

税金の種類課税内容特徴
贈与税基礎控除を超えた部分に課税相続税より税率が高い
不動産取得税名義変更時に一度限り地域で税率が異なる

贈与税については、年間110万円までの基礎控除が設けられていますが、超過分には相続税より高い税率が適用されます。計画性を欠いた贈与は、予想以上の税負担を招く可能性があります。

また、不動産取得税は土地の名義変更時に一度限り課税されます。追加的な税負担として事前に考慮しておく必要があります。地域によって税率が異なる場合もあるため、所在地の確認も大切です。

このような税負担を抑えるためには、以下の対策が効果的です。まず、税額のシミュレーションを事前に行い、具体的な負担額を把握します。次に、贈与の時期を適切に選択し、特例制度の活用も検討します。

なお、不動産の生前贈与を考える際は、専門的な助言を得ることで効率的な財産移転が可能になります。

土地の生前贈与における相続時精算課税制度の活用法

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫への財産移転を支援する特別な制度です。2,500万円までの特別控除があり、不動産のような高額資産の移転に特に有効な手段となります

制度概要内容
贈与者60歳以上の親・祖父母
受贈者20歳以上の子・孫
特別控除額2,500万円
控除適用限度額まで複数回利用可能

相続時精算課税制度で実現する計画的な資産承継

相続時精算課税制度は、大型不動産を次世代にスムーズに引き継ぐための効果的な方法です。この制度の活用により、計画的な資産承継が可能になります。

制度活用で得られる具体的なメリットは以下の通りです。

メリット詳細期待される効果
高額な資産移転2,500万円までの非課税枠まとまった資産を一括で贈与
分割トラブル防止生前の財産分与相続時の争いを未然に防止
承継者の明確化早期の権利確定将来の相続紛争を予防

この制度を効果的に活用するためには、資産状況に応じた計画が重要です。高額な不動産であっても一括での贈与が可能となり、将来の相続争いの原因となりやすい土地を早めに移転できます。

特に注目すべき点は、計画的な資産承継の実現です。贈与の時期や方法を工夫することで、円滑な世代交代が可能になります。将来を見据えた資産承継プランを立てることで、家族の将来に向けた安定的な資産管理が実現できます。

相続時精算課税制度の制約事項を理解しよう

相続時精算課税制度は便利な制度ですが、活用には慎重な検討が必要です。この制度特有の制約やデメリットを把握しておくことが大切です。

制度利用における主な制約は以下の通りです。

制約項目具体的な内容留意すべき点
税負担面相続時に贈与財産を加算節税効果は限定的
年齢要件贈与者・受贈者に条件設定年齢制限の確認が必要
制度選択暦年贈与との併用不可選択後の変更は不可能

相続発生時には贈与した財産と相続財産が合算されて課税対象となります。また、制度利用には贈与者と受贈者双方の年齢要件を満たす必要があり、一度この制度を選択すると暦年贈与への切り替えはできません。

ただし、この制度は必ずしも税負担の軽減だけを目的としていません。不動産の円滑な承継や将来の相続問題の予防、計画的な資産移転の実現など、長期的な視点での活用が効果的です。

不動産の生前贈与で押さえるべき重要ポイント

女性弁護士

不動産の生前贈与では、各種制度の理解とリスク管理が成功の鍵となります。以下、特に重要な事項を詳しく解説します。

生前贈与と加算制度の新ルール

税制改正により、2024年から贈与財産の相続財産への加算期間が7年に延長されました。この変更を踏まえた対応が必要です。

項目内容注意点
加算期間相続前7年以内の贈与従来の3年から延長
対象者相続人・遺贈受取人相続放棄者は対象外
対象財産すべての贈与財産非課税贈与も含む

早期からの計画立案と適切な贈与時期の選択が、これまで以上に重要となっています。

分割贈与のリスクと対策

不動産の分割贈与には様々なリスクが伴います。以下の対策を講じることで、安全な財産移転が可能となります。

リスク対策効果
贈与の中断計画の文書化継続性の担保
名義預金認定贈与証明の整備正当性の確保
追加費用事前の費用見積予算の適正化

確実な申告手続きのために

贈与税の申告は厳格なルールに従う必要があります。手続きを確実に行うため、以下の点に注意が必要です。

手続き期限・要件留意事項
申告期間翌年2月1日~3月15日期限厳守が重要
申告場所受贈者の管轄税務署所轄確認が必須
必要書類契約書・登記簿など早めの準備開始

不動産贈与の成功には、税理士や弁護士などの専門家による適切なサポートが不可欠です。特に複雑な権利関係がある場合や高額な財産移転の際は、必ず専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

相続税と贈与税は、財産移転時の重要な税金です。相続税は基礎控除が大きく税率が比較的低い一方、贈与税は年間110万円までの基礎控除で税率が高めに設定されています。

ただし、計画的な生前贈与や相続時精算課税制度を活用することで、効率的な資産移転が可能です。特に不動産の贈与では、2024年からの制度改正も踏まえ、専門家に相談しながら慎重に進めることが重要です。

将来の相続に備え、自身の状況に合った最適な財産移転方法を選択しましょう。

執筆者

Koh.W

Koh.W

専門分野: セールス及びマーケティング、不動産、ウェルネス

保有資格: MBA、宅地建物取引主任士

日米の上場企業でセールスやマーケティングの経験を持ち、現在はオーラルケアメーカー及びビジネスデベロップメント支援の会社を経営。自らもSEOライターとして活躍しており、特にセールス及びマーケティング、ビジネス、ウェルネスに関する記事作成に定評があります。多様な経験や知識を活かし、クライアント様にとって本当に価値のある製品やサービスを提供することをモットーにしています。

X (旧Twitter): @Koh_KODAWATARU
目次