遺品整理を進める際には、遺言書の確認やデジタル資産のアクセス解除など、注意すべきポイントが多く存在しています。お困りの際は専門家に相談しながら安全に進めましょう。
遺品整理は、亡くなられた大切な人を偲びながら遺された財産や生活用品を整理するための作業です。相続人が複数いる場合は、遺品整理と遺産分割が連動するため、適切に財産を分ける作業でもあります。
そこで、本記事では作業を始める前に知っておきたい「遺品整理の注意点」について詳しく解説します。困った時の相談先についてもあわせて紹介しますので、ぜひご一読ください。
遺品整理はここに注意!押さえておきたい4つのポイント
遺品整理を進める場合は、家族内や法的なトラブルに遭わないためにも、押さえておきたい注意点があります。この章では4つにわけて注意点を解説します。
1.遺言書の存在を確認すること
被相続人(故人)が遺言書を残している場合、遺言書の内容に沿って遺産の分配を進めていく必要があります。また、法的な効力は持たないものの「付言事項」と呼ばれる遺言書内のメッセージ部分には、特定の遺品の処分方法、葬儀に関する希望などが記されていることがあります。
被相続人の死亡後は、遺品整理に着手する前に遺言書の存在の有無を確認しましょう。遺言書の探し方と注意点は主に以下の通りです。
- 遺言書の探し方と注意点
遺言書の書式 | 探し方と注意点 |
公正証書遺言 | 探し方:公証役場で作成されるため原本が公証役場に保管されている。全国どこの公証役場からでも検索が可能。 注意点:家庭裁判所での「検認」手続きは不要 |
自筆証書遺言 | 探し方:机や金庫など。自筆証書遺言書保管制度を利用している場合、法務局で保管。 注意点:法務局保管以外の自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが必要。発見しても自分で開封せず、封筒に入ったまま家庭裁判所に提出し検認を申立てすること。自筆証書遺言は書式が有効か確認要。 |
秘密証書遺言 | 探し方:机や金庫など。 注意点:家庭裁判所での検認手続きが必要。発見しても自分で開封せず、封筒に入ったまま家庭裁判所に提出し検認を申立てすること。秘密証書遺言は書式が有効か確認要。※秘密証書遺言は、作成時に公証人と証人2名の立会いが必要ですが、内容は秘密にできます。ただし、発見後は家庭裁判所での検認が必要です。 |
2.意外なものが相続財産に含まれること
相続財産(遺産)は現金や預貯金、不動産など明確に資産とわかるものだけではなく、多岐にわたるものが含まれます。遺品整理を進める前には、以下の相続財産をうっかり処分しないように注意が必要です。
- デジタル資産
暗号資産や電子マネー、ネットバンキングなどの資産も相続財産に含みます。これらの財産はわかりやすい通帳やカード類がないため、被相続人のデバイスや契約書類のファイルなどを確認することが大切です。
- 著作権
被相続人が生前に漫画や音楽などを制作・配信などを行っていた著作権が発生している場合があります。著作権も相続の対象ですので、遺品整理時には調べておくことが大切です。
- 慰謝料や損害賠償の請求権
被相続人が生前に、不法行為などによって慰謝料や損害賠償を請求できる権利を持っていた場合、その権利も相続財産に含まれます。交通事故などを理由にお亡くなりになられた場合、損害保険や訴訟に関する手続きを引き継ぎます。
- 債務(借金)
相続ではプラスの財産だけでなく、住宅ローンや消費者金融からの借入、クレジットカードの未払金、連帯保証債務などのマイナスの財産も相続の対象となります。保管されている書類や借入明細、相続人宛に届いた督促状などは破棄せず、弁護士への相談が望ましいでしょう。
3.相続人の同意なく進めないこと
被相続人の相続財産は、遺言書がない限り、原則として遺産分割協議が完了する前は「相続人全員の共有財産
となります。そのため、特定の相続人が単独で遺品を処分したり、預貯金を引き出したりすることは、他の相続人とのトラブルの大きな原因となります。
例えば、被相続人の指輪やネックレスなどを形見分けしてほしい場合、高価なものや金銭的価値のあるものについては、後々のトラブルを避けるためにも遺産分割協議の中で話し合うのが賢明です。
4.相続放棄・限定承認に注意すること
被相続人に生前高額の債務があった場合、相続人はマイナスの財産も相続する必要があります。しかし、相続放棄や限定承認のいずれかの方法を家庭裁判所に申立てすることで、相続財産の一切を放棄したり、プラスの財産の相続範囲内でのみマイナスの財産を相続したりすることも可能です。
相続放棄・限定承認を選択する可能性がある場合、もしマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続人は以下の選択肢を検討する必要があります。
相続放棄・限定承認は、原則として『自己のために相続の開始があったことを知った時』から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。この期間を過ぎると、単純承認とみなされる可能性があります。いずれかの方法を選択する場合は遺品整理を進めてしまうと単純承認をしたとみなされ、借金を放棄できなくなるため注意が必要です。
関連記事:相続放棄申述書の作成から提出まで!5つのステップで分かる手続きの流れ
遺品整理で苦労を感じやすいポイント
遺品整理は、相続財産となるものをリストアップしたり、不要となるものを処分するなど、大変な労力を感じる作業です。思い入れのあるものでも処分が必要となることが多く、多くの人が心身に負担を抱えます。そこで、この章では遺品整理で苦労を感じやすいポイントを解説します。
処分品の仕分け
残された遺品を仕分けする際には、長年蓄積されていた衣類や書籍、家具家電類などを処分することがあります。思い出が詰まった品は、たとえ実用性がなくても手放しがたく、処分に罪悪感を抱えることも少なくありません。
その上、粗大ごみや燃えないゴミなどを仕分けして処分する必要があります。処分にも費用が掛かるため注意が必要です。
遺品整理のタイミング
遺品整理をいつ始めるか、いつまでに終えるかというタイミングも、苦労を感じやすいでしょう。
特に賃貸物件の場合、家賃の発生や原状回復義務の関係で、期限内に退去する必要があり、遺品整理を早急に進める必要があります。また、遠方に暮らしている場合は何度も足を運んで遺品整理をすることが難しく、放置してしまうケースも少なくありません。
関連記事:今月制作の遺品整理のタイミング記事を入れる
感情の整理
遺品整理は、お別れのための作業でもあるため、思い出や感情と向き合う時間でもあります。この「感情の整理」もご家族にとっては負担に感じやすいものです。
「もっと何かしてあげられたのではないか」「もっと話しておけばよかった」といった後悔や自責の念に駆られることもあります。
遺品整理に困ったらどうする?主な相談先とは
遺品整理はご家族だけで抱え込まず、必要に応じて専門家や関係機関の助けを借りることも大切です。状況に応じて、以下のような相談先を検討しましょう。
遺品整理専門業者
遺品整理専門業者は、遺品の仕分けや梱包、処分などを行ってくれる専門家です。家電用品や家具類を買取してくれる場合もあります。
業者によって請け負う作業内容には違いがありますが、仏壇・仏具などの処分も、宗派や地域の慣習に配慮して対応してくれる業者もあります。ただしすべての業者が対応できるわけではないため、事前に確認が必要です。
費用がかかるものの、ご年齢などによっては作業が難しい遺品整理もスムーズに進められます。
デジタル資産の専門業者
パソコンやスマホ内には、デジタル資産が眠っている場合があります。また、大切な写真などのデータが保存されていることも少なくありません。
被相続人が生前に使用していたデバイスは、デジタル資産の専門業者へ依頼すると、パスワードのロック解除などをサポートしてくれます。
デジタル知識がない高齢の方でも、オンライン上の資産や情報を適切に整理できるため、被相続人が生前にデバイスを所有していたら、まずは気軽に相談してみることがおすすめです。
※デジタル資産の専門業者とは、スマホ・PCのロック解除や仮想通貨ウォレットの復旧支援などを行うITリテラシーの高い業者を指します。
弁護士
相続に関する法的な問題が生じた場合や、相続人との間でトラブルが発生した場合には弁護士への相談も大切です。相続放棄や限定承認に関する相談もできます。
法的な観点から適切なアドバイスが得られ、複雑な法的手続きの代行も可能です。ただし、
弁護士費用がかかるためご注意ください。
最寄りの市区町村役場
地域の市区町村役場は相続手続きに関することや、一般ごみなどの分別に関するアドバイスを実施しています。不要となった遺品の処分方法については、各自治体でルールが異なっているため事前に確認されることがおすすめです。
各市区町村役場では弁護士や税理士など、相続手続きに関わることが多い士業による無料相談会も実施しています。遺品整理や相続手続きに法的な視点からアドバイスが欲しい場合は、こうした市民向けサービスを利用してみましょう。
まとめ
本記事では遺品整理時に知っておきたい注意点や、困った時に相談先などを詳しく解説しました。遺品整理は時に大変多くの労力を割く必要があり、誰かに相談したいと感じる人も多いでしょう。そんな時は、今回紹介しました相談先を頼って遺品整理を進めてみてください。専門家のアドバイスを受けることで、安全に相続手続きも進められます。