デジタル資産の調査などに使われるデジタルフォレンジックとは、さまざまなデバイスやサーバーに保存された記録などを保全、調査する技術です。警察庁の捜査などにも応用されています。
近年、「仮想通貨の不正流出」や「NFTの盗難」「オンライン証券口座の情報流出」といったニュースが相次いでいます。2025年5月には、大阪に住む80代の男性がネット証券の口座を何者かに乗っ取られ、300回以上にわたって身に覚えのない株の売買が行われてしまう事件も起きました。
数千万円規模の被害も珍しくなく、被害者が泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。では、こうした事件の「証拠」はどのように追跡できるのでしょうか? ここで登場するのが「デジタルフォレンジック
という技術です。
一見すると難しそうな言葉ですが、実は私たちの身近な生活や、将来的に避けて通れない「相続」の場面にも深く関わってきます。
本記事では、デジタルフォレンジックの基本から、仮想通貨やデジタル資産の調査でどのように活用されているか、さらには相続の観点も交えて解説します。
参考URL NHK WEB特集 相次ぐ証券口座乗っ取り 被害者のパソコン解析で分かったこと(2025年5月20日 16時23分)
デジタルフォレンジックとは
デジタルフォレンジック(Digital Forensics)とは、コンピュータやスマホなどのデバイス上に記録されたデータなどを科学的に調査・解析し、証拠として利用できる形で保全する技術です。サーバー攻撃の原因を調べたり、不正アクセスの調査を行ったりと、近年欠かせない大切な技術として注目されています。この章ではデジタルフォレンジックについて、主な調査内容を中心に詳しく解説します。
デジタルフォレンジックの調査内容とは
デジタルフォレンジックはサイバー攻撃や不正アクセスなどが起きた際に、原因の調査だけではなく、被害内容の特定も目的としています。仮にご自身のオンライン上で取引していた証券口座に不正取引が確認できた場合、データを保管していたパソコンやスマホだけではなく、サーバーやクラウドなども広く網羅して調査を行い、被害の経緯や内容の詳細について証拠を収集します。
「フォレンジック(Forensic)」という言葉はラテン語で法廷や裁判を意味し、「法的に有効な証拠を扱う」という意味もあります。つまり、ただデータを調べるのではなく、後に裁判や交渉で証拠能力を持つ形で記録・保存する点が特徴です。警察庁の捜査でも導入されています。
参考URL 警察庁 デジタルフォレンジック
なぜデジタル資産の調査にデジタルフォレンジックが必要なのか?
従来の現金や不動産のように「目に見える財産」と異なり、近年はパソコンやスマホで取引をする金融資産の市場が急拡大しています。仮想通貨やNFTといったデジタル資産は 形がなく、ネット上にのみ存在することが大きな特徴です。デジタル資産は不動産などと比較すると流動性が極めて高く、いつでも気軽に売買できます。一方でハッキングなどのリスクや、法規制が追い付いていないなどのデメリットもあります。
特にデジタル資産は盗難や不正が発生してもデジタル資産に関する技術を知らなければ、調査ができないことが一般的です。そこで、デジタルフォレンジックが必要となります。ログ解析やブロックチェーン調査などを行い、有効な解決方法を模索するためにも欠かせません。
知っておきたい|デジタルフォレンジックの主な手法
デジタルフォレンジックはまだまだ広く知られていない用語ですが、実際に調査で用いられる技術には、どのような方法があるのでしょうか。この章で詳しく解説します。
調査の手
ログ解析
- 不正プログラムの特定
- 捏造や改ざんされたデータの特定
- 情報が漏洩した経路の特定
- パスワード解除やごみ箱の復元
- 削除データの復元、必要データの抽出 など
ログ解析ではアクセス履歴や操作履歴を追跡し、不正プログラムの特定ではマルウェアや不正スクリプトの存在を明らかにします。また、捏造や改ざんされたデータの特定により改ざんの痕跡を確認し、情報漏洩経路の特定では機密情報がどこから流出したかを追跡します。
さらに、パスワード解除やごみ箱の復元、削除データの復元や必要データの抽出などの手法を組み合わせることで、失われた情報や隠された証拠も回収可能となり、トラブル対応や法的証拠の確保に役立てています。
仮想通貨・デジタル資産での活用事例とは
デジタルフォレンジックはすでに様々な場面で活用されています。
- 取引所ハッキング事件の調査大規模に仮想通貨が流出した事件では、ブロックチェーンを解析し、犯人のウォレットアドレスを追跡する調査が行われています。
- 不正送金の証拠保全個人間でのトラブルや詐欺被害で、どのアドレスに送金されたかを記録し、裁判で証拠として提出するケースがあります。
- 相続調査デジタル資産を持つ人が亡くなった際、家族がその存在を知らずに放置してしまうことがあります。フォレンジックによってウォレットの存在や資産の有無を確認することが可能です。
- 企業内部の不正調査や労働問題
- 企業内部の不正調査や労働問題では、社員による無断の秘密鍵持ち出しや不正送金などの行為だけでなく、過労やハラスメントといった労務問題も深刻なケースがあります。デジタルフォレンジックを活用することで、社内システムや端末のログ解析を通じ、社員の業務負荷や不正行為の痕跡を可視化できます。
実は重要!相続におけるデジタルフォレンジックの重要性
不正アクセス等のトラブルは詐欺事件の際に多く報道されています。実際に不正アクセスは近年の詐欺事件に多い類型ですが、私たちにとって身近な「相続」でもデジタルフォレンジックが欠かせない存在として注目されています。日本では仮想通貨をはじめとするデジタル資産を保有する人が増えており、相続財産に含まれるケースも少なくありません。しかし、現金や不動産と異なり相続人がその存在を知らなかったり、パスワードがわからないといったトラブルが多発しているのです。そこで、この章では相続の視点からデジタルフォレンジックを解説します。
相続時の財産調査にもデジタルフォレンジック
相続時には被相続人が所有していた財産を適切に把握する必要がありますが、デバイスのロックやアプリのパスワードなどが解除できず、資産の取引先や種類などの全容が把握できないことがあります。そこで、デジタルフォレンジックの出番です。
- 故人のパソコンやスマホからウォレットアプリの存在を確認
- メールやログから取引所のアカウントを特定
- 削除されたファイルを復元し、資産の痕跡を把握
このような手法を用いてデジタル資産を発見したり、復元したりすることで、適切な相続財産の把握に貢献しています。実際に「相続人が気づかないまま仮想通貨が放置され、何千万円分もの資産が眠っていた」という事例もあります。デジタルフォレンジックを用いた調査は、資産を守り、正しく相続するために不可欠な手段といえるでしょう。
相続においては仮想通貨などの扱いは税法上も議論が繰り返されており、隠匿などが起きないように国税庁も監視を強化する見込みです。今後適切な調査の強化が推進されると考えられます。将来的には、銀行口座の残高照会と同じように、デジタル資産の有無を確認するしくみが普及する可能性があります。
まとめ
デジタルフォレンジックとは、データの「科学捜査」ともいえる技術であり、仮想通貨などのデジタル資産の安全を守る上で欠かせない存在です。詐欺事件などの際には捜査にも役立っていますが、私たちに身近な相続の場面でも活躍しています。資産の有無を明らかにし、正しく受け継ぐために重要な役割を果たしているのです。
今後、仮想通貨やデジタル資産がより一般的になるにつれ、デジタルフォレンジックは「専門家だけの技術」ではなく、私たちにとっても身近な知識となるでしょう。被害を防ぐためのセルフ防衛や、相続に備えた準備の一環として理解を深めておきましょう。
「故人の財産が不自然に減っているように感じる」 「他の相続人からの説明が十分でない」 「故人が使っていたPCやスマホに、財産の手がかりがあるかもしれない」
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✔️ デジタル記録の調査 専門的なツールを用い、PCやスマートフォンに残されたデータを解析します。削除された可能性のある情報やファイルについても調査し、発見された内容を客観的な資料として報告します。
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