デジタルフォレンジック調査がもたらす相続手続きの新たなアプローチ

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仮想通貨ウォレットやデジタルコンテンツといった、さまざまな形態の資産もデジタル上に保管される傾向が強まっています。こうしたインターネットやデジタル空間に存在するものは「デジタル資産」と呼ばれています。従来の物理的な資産に加えて、現代の相続問題においても無視できない重要な存在です。

しかし、これらのデジタル資産は多くの場合、強固なパスワードや複雑な暗号化技術によって厳重に保護されています。家族が相続手続きを進める際に、その存在や詳細をすぐに把握することが難しいケースが増えています。

特に、故人が使用していた複数のデバイスやアカウント情報が把握できなければ、それらのデジタル資産に関する、正確な内容の把握やアクセスは非常に困難です。

こうした状況で頼りになるのが「デジタルフォレンジック調査」という専門的な技術とサービスです。

デジタルフォレンジック調査は、現代の複雑化する相続問題における重要な解決手段として注目されています。デジタル資産の適切な取扱いや相続の公平性を確保するための、必須技術となっているのです。

目次

デジタルフォレンジックとは一体何か?基礎から解説

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デジタルフォレンジックとは、専門の技術を用いてデジタル機器からデータを抽出・解析する技術のことです。もともとは犯罪捜査や情報漏洩調査のために発展してきましたが、近年では相続分野においても重要な役割を果たしています。

故人のスマホやパソコンにアクセスできなくても、専門家が調査を行うことで、デジタル資産に関する情報や、大切な思い出のデータを取り戻すことが可能になるのです。

相続で注目されるデジタルフォレンジックの重要性

相続人にとって、見落としてしまいがちなのが「デジタル資産」です。これを把握できないと、相続の資産が正しく分配されなかったり、未払いの課税リスクを抱えてしまったりする恐れがあります。また、データの中には家族にとって、心の支えとなる思い出も含まれており、その存在は、金銭的価値以上に大きな意味を持つでしょう。

消えた写真を取り戻すデジタルフォレンジック技術

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スマホに保存されている写真は、何気ない日常や大切な思い出を記録した、かけがえのないものです。しかし、相続の場面だけではなく、スマホの故障や水没、システムのトラブルによって、突然その写真が消えてしまう場合があります。

一方で、消えたデータは必ずしも『完全に失われた』とは限りませんが、最新機種や高度な消去方式では復元が困難な場合もあります。目に見えなくなっても、スマホ内部の記録領域には、痕跡が残されていることがあるのです。それを手掛かりとして、復元を試みるのが「デジタルフォレンジック技術」です。この技術を活用することで、スマホから消えた写真を取り戻せる可能性があります。

スマホに眠る記録の意味

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私たちが日常的に使っているスマホには、思っている以上に多くの「人生の記録」が眠っています。撮影した写真や動画、家族や友人とのメッセージのやり取り、過去の通話履歴といった日常の断片は、その人の歩みを物語る大切なアーカイブです。

家族にとっては、故人の声や思い出に触れる貴重な手がかりになります。また、スマホは思い出だけでなく、社会的・経済的な意味を持つデータの入り口でもあります。しかし、そこには故人が誰にも見せたくなかった秘密や、未整理のデータが含まれている場合もあるでしょう。

家族がアクセスすることは、プライバシーとの境界に揺れる難しい選択を伴うことも少なくありません。スマホに眠る記録は、単なるデータの集合体ではなく「思い出」「資産」「プライバシー」という多面的な価値を持っています。その意味をどのように捉えて向き合うかは、これからの課題といえるでしょう。

デジタルフォレンジック技術を活用した実際の事例

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デジタルフォレンジックは、単なる技術解説だけでは、なかなかその価値が伝わりにくい分野です。しかし、実際の現場でどのように活用されて、どのような成果をもたらしたのかを知ることで、その重要性をより具体的に理解できます。スマホやパソコンのロック解除、削除されたデータの復元など、ここでは、デジタルフォレンジック活用事例を紹介します。

  • 事例1:削除済みの家族写真を復元して思い出を取り戻す

ある家族では、故人が生前にスマホから削除していた写真が多く、残された家族は「もう見ることはできない」と諦めかけていました。しかし、専門家によるスマホ解析を行った結果、削除済みの写真や動画が復元されることが判明したのです。

解析により、子ども時代の写真や家族旅行の思い出の数々が、再び見られるようになりました。家族は、失われたと思っていた思い出を取り戻すことができたのです。故人の記録を安全に保存する方法についても、家族で考えるきっかけになりました。

  • 事例2:故人のスマホから重要な写真を発見して相続手続きに活用

故人が生前に契約書や証券情報をスマホで、撮影・保存していました。しかし、家族はその存在に気づいておらず、相続手続きを進める上で資料が不足していました。デジタルフォレンジックによるスマホ解析を通じて、これらの写真が発見されたのです。

契約書の内容や証券口座情報を、正確に把握することが可能になりました。結果として、相続手続きや相続税申告に必要な資料を揃えることができて、手続きをスムーズに進められました。この事例は、写真が単なる思い出だけでなく、相続手続きにおいても、重要な情報源になり得ることを示しています。

故人のスマホから探るオンライン証券口座と相続の実態

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近年、投資の手段として利用者が急増しているオンライン証券口座は、相続の場面において、新たな課題を生み出しているのです。紙の証券会社の取引明細とは異なり、取引履歴や残高の確認は、ほとんどがスマホやパソコンを通じた、オンライン管理に移行しています。

家族がその存在を把握できないまま、資産が眠ってしまうケースも少なくありません。故人のスマホには、重要な手がかりが残されていることが多いです。相続人にとっては、資産の全体像を把握する上で、欠かせない情報源になります。こうした実態を知ることは、デジタル時代の相続を考えるうえで、避けて通れないテーマといえるでしょう。

オンライン証券をめぐる相続手続きのハードル

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口座の存在や残高が、家族にわからない場合があります。故人がどの証券会社で口座を持っていたのか、またどの程度の資産があるのかを把握できないことも多いです。ログインIDやパスワード、二段階認証といったセキュリティも設けられています。そのため、家族だけでアクセスすることは非常に難しいのが現状です。

法的には、オンライン証券口座も相続の対象になります。しかし、実際には、発見や引き継ぎが大きな課題となることが多いです。相続手続きが滞る原因になっています。このような場合、専門家によるスマホ解析やデジタルフォレンジックを活用することで、証券アプリの存在確認や残高・取引履歴の抽出が可能になる場合があります。ただし、証券会社の規約や法的手続きに従う必要があり、円滑な相続手続きに役立つケースも増えています。

事例で見るオンライン証券口座の相続

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近年、銀行だけでなく、オンライン証券に資産を持つ人が増えています。しかし、相続の場面では、これらの口座の存在に家族が気づかないことも多いです。ここでは、事例を通して、オンライン証券口座の相続で直面する内容を見ていきます。

  • 事例1:故人のスマホから証券アプリを発見し残高を確認


あるご家族は、亡くなった父親の資産整理を進める中で、オンライン証券口座の存在に気づいていませんでした。専門業者に依頼して、スマホ解析を行ったところ、父親のスマホに、証券口座のアプリがインストールされていることを発見したのです。解析によって口座の残高も確認できました。家族は初めて、正確な資産状況を把握できたのです。この発見により、相続手続きがよりスムーズに進められました。

  • 事例2:取引履歴の抽出で相続税申告をスムーズに


故人のオンライン証券口座の残高は把握できたものの、過去の取引履歴が不明で、相続税申告に必要な資料が不足していました。デジタルフォレンジック業者によるスマホ解析によって、取引履歴を抽出できたのです。税務申告に必要な情報も、正確に取得しました。これにより、税務上のトラブルを未然に防げました。

事例状況・課題デジタルフォレンジックによる対応得られた結果・効果
事例その1故人の資産整理を進める中で、証券口座の存在に気づいていなかったスマホ解析により、証券口座アプリ及び口座残高を確認家族が故人の資産を正確に把握できて、相続手続きがスムーズに進行
事例その2証券口座の残高は確認できたが、相続税申告に必要な過去の取引履歴が不明であったスマホ解析により、証券口座の取引履歴を抽出税務上、必要な情報が揃い、相続税申告を円滑に実施。税務トラブルを未然に防止

故人のスマホから探る仮想通貨相続の手がかり

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デジタルフォレンジック技術で、故人のスマホやパソコンから、仮想通貨の相続に関わる重要な手がかりを見つけ出すことが可能です。仮想通貨資産は、ウォレットの場所や取引履歴がわかりにくく、パスワードや二段階認証で保護されていることが多いです。

また、ブロックチェーンフォレンジックの手法を用いると、公開されているブロックチェーンの取引履歴から、仮想通貨の移動を追跡できます。その送受信履歴や残高を特定することで、隠されている資産の存在や流れを把握できるのです。

故人のスマホからの解析とブロックチェーン上の取引解析を組み合わせることで、仮想通貨の相続において、重要な手がかりを効果的に探し出せます。これらの技術は、専門家の手によって、慎重かつ法律に則った手続きで行われるため、安全に相続手続きが進められるでしょう。

デジタル資産としての仮想通貨の相続ハードル

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近年で仮想通貨は、その利便性や革新性の高さから、多くの人々に利用されるようになりました。その性質上、従来の現金や銀行預金とは大きく異なる管理・保管形態を持っています。一般的なお金の場合、残高や取引履歴は、金融機関の帳簿に記録されます。

仮想通貨の場合は、所有しているウォレットや取引所のアカウント情報が、家族に知られていないことも珍しくありません。故人が、どの仮想通貨ウォレットに資産を保管していたのか、どの取引所やサービスを利用していたのか、その詳細が不明であるケースは、非常に多いです。これが、相続の際の大きな障壁となっています。

仮想通貨のセキュリティは、高度で複雑なものが多いです。パスワードの他に、二段階認証や秘密鍵の暗号化など、多層的な防御策が行われることが一般的です。このため、家族が単独で、これらのウォレットや取引アカウントにアクセスして、資産を確認することは非常に困難と言えます。

現実の相続手続きにおいては、そうした仮想通貨資産を特定して、引き継ぐ作業が大きな課題です。特に、仮想通貨の所有者が、その資産情報を遺言や文書で明確に残していない場合や、ウォレットの場所やアクセス方法がわからない場合には、相続が滞るリスクが高まります。

このため、仮想通貨を含むデジタル資産の相続は、専門的な知識が必要なデジタルフォレンジックによる、調査・解析が重要な役割を果たします。仮想通貨を持つ人が増える現状で、こうした専門業者の支援や技術は、ますます重要性を増していくでしょう。

項目内容
仮想通貨の普及利便性や革新性の高さから利用者が急増している。
従来のお金との違い現金や銀行預金は金融機関の帳簿に記録されるが、仮想通貨は個人のウォレットや取引所アカウントに依存する。
資産の所在不明の問題故人が利用していたウォレットや取引所が家族に知られていないケースが多発している。
相続の障壁遺族が資産の全体像を把握できず、相続手続きが滞る要因となる。
セキュリティの特徴パスワード、二段階認証、秘密鍵の暗号化など、多層防御で保護されている。
アクセスの難しさ家族が単独でアカウントやウォレットにアクセスするのは、極めて難しい。
相続での課題遺言やメモなどで資産情報が残されていない場合、相続が進まないリスクが高い。
解決策の方向性デジタルフォレンジックによる調査・解析が必要になる。
専門業者の役割今後は、デジタル資産の相続支援を行う専門業者や技術が、一層重要になる。

相続トラブルになった仮想通貨の事例

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仮想通貨は、インターネット上のウォレットや取引所で管理されるため、銀行口座や証券口座とは異なります。相続時に資産の存在自体が、把握しづらい特徴があります。さらに、アクセスに必要なパスワードが残されていない場合、相続人が資産を引き出せないという深刻な問題につながるでしょう。ここでは、相続手続きをめぐってトラブルとなった仮想通貨事例を紹介します。

  • 故人のスマホから仮想通貨のウォレットアプリを発見

専門家に依頼して亡くなった父親のスマホを解析したところ、仮想通貨ウォレットアプリがインストールされていることが確認できました。解析によりウォレットの存在と残高が把握できたのです。結果として、父親の資産は、より正確に整理されて、相続手続きも円滑に進められました。

  • パスワード解析で未使用の仮想通貨を復元

故人が利用していたウォレットがパスワードで保護されており、家族ではアクセスできませんでした。専門業者によるスマホ調査と、デジタルフォレンジックによるパスワード解析で、一部の古いウォレットや脆弱な暗号化では解析できる場合がありますが、最新の強固な暗号化ウォレットでは解除が不可能なことも多いです。これにより、長年使われていなかった仮想通貨資産を復元できました。この事例は、デジタル資産相続における「パスワード管理」の重要性も示しています。

事例の概略内容効果と結果
故人のスマホからウォレット発見スマホ解析でウォレットアプリを確認して、残高を把握資産状況を正確に整理できて、相続手続きがスムーズに進行
パスワード解析で資産が復元専門業者がフォレンジック調査を行い、パスワードを解析失われていた仮想通貨を復元して、パスワード管理の重要性を再認識

デジタルフォレンジック技術で行うスマホ解析の基礎プロセス

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デジタルフォレンジックによる解析は、単なるデータ復元ではありません。科学的に証拠を保全・検証するプロセスを踏んで行われます。その基礎プロセスについて、簡単に紹介していきます。

プロセス内容目的・効果
1. 証拠保全(イメージング)スマホや機器内部のデータを、ビット単位で正確に複製する。オリジナルには、一切手を加えない。解析作業中のデータ改ざん・破損リスクを防ぎ、証拠価値を維持する。
2. 解析と復元メール履歴、SNSやりとり、写真、動画、位置情報、削除済みデータ、暗号化ファイルなどを、専門ツールで抽出・復元する。行動履歴や通信状況、重要な証拠の収集が可能になる。
3. タイムライン分析操作履歴やデータの作成・変更・削除日時を整理する。スマホ内の出来事を時系列で、再構築していく。不正操作や隠蔽行為の発見、一連の流れを把握していく。
4. 相関分析他の端末、クラウド、ネットワークログと照合する。データ間の関連性や因果関係を検証していく。情報の整合性の確認、多角的な視点から信憑性を強化する。
5. 報告書作成誰が、いつ、どの操作を行ったかを、第三者に分かる形で文書化する。法的提出を想定している。裁判・手続きで証拠として利用可能になる。相続、詐欺、不正アクセスなど、さまざまなケースで活用できる。

これらのデジタルフォレンジック解析の作業は、単なるデータの復元作業にとどまりません。法的にも有効な証拠として認められるために、厳密かつ科学的な手順を踏んで行われる高度なプロセスです。これにより、情報の信頼性や正確性が担保されます。また、不正な改ざんや操作が行われていないことを証明できるようになっているのです。

最初のステップとして「証拠保全(イメージング)」があります。この段階では、対象となるスマホやデジタル機器の内部データを、ビット単位で正確に複製します。このとき、オリジナルのデータには一切手を加えず、完全なコピーを作成するのです。

解析作業中に、オリジナルが変更されたり破損したりするリスクを防止します。この手法により、後からデータを解析しても、元の情報の状態が保たれたまま、解析が進められます。結果的に、証拠としての価値が高まるのです。

「解析と復元」の段階では、専門的なツールやソフトウェアを用いて、スマホ内にあるメールの送受信履歴や暗号化されているファイルなど、幅広い情報を抽出・復元していきます。これにより、故人の行動履歴やネット上での交信状況といった、重要な証拠を得ることが可能です。

その後、「タイムライン分析」によって、抽出された操作履歴やデータの作成・変更・削除日時などを詳細に整理します。これによって、一連の操作の流れを明確に把握できます。「相関分析」では、スマホのデータだけでなく、クラウドストレージの情報など、複数の情報源を照らし合わせるのです。

これにより、情報の整合性を検証して、異なるデータ間の関連性や因果関係を突き止めることができます。最後の「報告書作成」では、専門的かつ第三者にも理解しやすい形で、文書化します。この報告書は、法的な手続きや裁判の場で、証拠として提出されることを想定して作成されるのです。

こうしたプロセスを通じて得られた解析結果は、相続手続きのみならず、詐欺や不正アクセスの疑惑など、さまざまな法的問題の解決にも、有効に活用されます。

スマホ解析から広がる価値とデジタルフォレンジックの力

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デジタルフォレンジックによるスマホ解析は、技術の進歩に伴い、その能力が格段に向上しています。単にスマホ内のデータを取り出すだけでなく、一度「削除されたデータや暗号化ファイルを復元できる場合がありますが、すべてのケースで可能とは限りません。

スマホ解析は、単純なデータ回収作業の枠を超えて、重要な証拠としての役割を果たします。事実の証明や資産の確認、事故の解明といった幅広い分野で活用されています。

また、暗号化されたファイルやアプリ内の隠されたデータも、解析の対象です。これらの情報が明らかになることで、従来では把握できなかった事実や状況を解明できるでしょう。こうした解析技術は、法的な捜査だけではありません。相続問題や企業のセキュリティ調査、個人のデジタル資産管理といった、多様な場面で求められています。その重要性は日に日に高まっているのです。

現代社会においては、生活のほぼすべての場面で、スマホが使用されています。その中に蓄積されるデジタルデータは、人の行動や意図、コミュニケーションの履歴など、多くの情報を含む可能性が高いです。つまり、スマホ解析がなければ、明らかにできない真実や事実関係が多く存在するかもしれません。

こうした背景から、デジタルフォレンジックによるスマホ解析は、残されたデジタル証拠を通じて、相続トラブルの解決や事件の解明など、重要な手段として広く注目されています。法執行機関や企業、専門業者の間でも、欠かせない技術なのです。

デジタルフォレンジックを利用する際の注意点

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デジタルフォレンジックは、非常に便利で大切な技術です。一方で、その利用にはさまざまな注意点が存在します。まず第一に、スマホやパソコンなどの端末を解析する際には、専門的な知識と高度な技術が必要です。そのため、一定の時間と費用がかかることを、理解しましょう。解析作業は、単純にボタン一つで終わるものではありません。

データの量や種類、保存状態、さらに暗号化レベルなどによって、所要時間や復元の可能性が大きく左右されます。特に、暗号化が施されているファイルやデータに関しては、復元や解除が極めて困難な場合もあります。そのため、すべてのデータが完全に復元できるとは限らない点に、注意してください。

また、法律や倫理の観点から、配慮も非常に大切です。故人が使用していた端末やアカウントであったとしても、第三者がアクセスを試みたり解析したりする行為は、利用規約や個人情報保護に違反する可能性があります。

トラブルや法的問題を引き起こすリスクがあるでしょう。特に、インターネットサービスのアカウントやクラウドストレージに保存された情報は、サービス提供者の規約に従わなければなりません。そのため、端末やデータにアクセスする際は、必ず正当な手続きや許可を得ることが不可欠です。

デジタルフォレンジックでスマホ解析したい場合は、信頼できる専門業者に依頼しましょう。法律的な知識と技術を兼ね備えており、依頼者の要望に沿って、慎重に解析を行います。プライバシー保護や法令遵守にも配慮します。これにより、家族や関係者が安心して、円滑な相続や問題解決につなげられるのです。

デジタルフォレンジックの技術的な限界

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デジタルフォレンジックは、削除されたデータの復元や暗号化ファイルの解析など、想像以上の力を持つ技術です。しかし、どのような高度な技術であっても、万能というわけではありません。強力な暗号化やクラウド環境の複雑さなどが、大きな壁となることがあります。

  • 完全なデータ復元は不可能な場合がある

デジタルフォレンジックは、削除済みデータの復元や暗号化データの解析が可能です。しかし、強力な暗号化や安全消去が標準で実装されていると、復元が極めて困難です。

  • クラウド・分散環境の複雑さ

現代のデータは、スマホやPCにとどまらず、クラウドや複数の端末に分散しています。そのため、解析対象となる情報を、一元的に収集することは非常に難しいです。アクセス権が制限されていたり、ログが存在しなかったりする場合、重要な証拠や思い出のデータまで、たどり着けない可能性があります。

  • 新しい技術・アプリへの対応

OSやアプリは日々アップデートされており、新しい仕様や暗号化方式に対して、解析ツールが対応できないことが少なくありません。デジタルフォレンジック技術でも、最新の環境に対応できないことがあります。そのため、結果としてスマホやPCの解析が十分に行えないのです。

分類概要課題点
データ復元の限界消去された情報や暗号化ファイルは、復元できる可能性がある高度な暗号化や、完全な消去処理が施されている場合、復元は事実上不可能になる
分散環境の複雑性情報は端末だけでなく、クラウドなどの場所に存在する権限の不足や記録が残っていないことで、肝心のデータにアクセスできない場合がある
新技術への課題OSやアプリは頻繁に更新されて、仕組みが変化していく専用ツールが改良に追いつかず、解析作業が思うように進まないことがある

技術と法律・倫理のバランスを考えるデジタルフォレンジック解析

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デジタルフォレンジックは、高度な技術を活用して、削除されたデータを復元したり、端末内の行動履歴を再現したりすることが可能です。しかし、データには、個人のプライバシーや機密情報が含まれており、無制限に扱うことは、人権侵害や情報の濫用につながる恐れがあります。デジタルフォレンジックには、技術的な限界だけでなく、法と倫理という枠組みによる制約も常に存在するのです。

  • プライバシー保護とのバランス

スマホやPCには個人のプライバシー情報が大量に含まれているため、無制限に解析することは許されません。特にクラウド上のデータや第三者とのやり取りを含む情報は、本人の同意や裁判所の令状が必要となる場合があります。これに違反すると、法的リスクが発生するだけでなく、解析結果が証拠として認められない可能性もあります。

  • 証拠能力の制約

デジタルフォレンジックで取得したデータであっても、手順が不適切であれば、裁判で証拠として採用されないことがあります。たとえば、データ取得時に改ざんの可能性がある場合や、ログの保全が不十分な場合です。技術的には取得できても、法的には「価値がない」と判断されるリスクがあるため、手順や記録の厳密な管理が求められます。

課題影響対策
技術と法・倫理の制約高度な解析が可能でも、プライバシー侵害や不適切利用につながる危険がある。技術利用を法令遵守と倫理基準に沿って実施して、活動範囲を明確に定義する。
プライバシー保護とのバランス本人の同意や裁判所の令状がない場合、解析そのものが違法となる恐れがある。分析した結果も、証拠として無効になる。明確な法的根拠や同意を必ず確保して、アクセス範囲を必要最小限に限定する。
証拠能力の制約データ取得手順に不備があれば、証拠能力を失い、裁判で採用されない。ログや取得プロセスを厳密に記録・保存して、改ざん防止措置を徹底する。

デジタルフォレンジック調査のメリットと料金の考え方

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さまざまなバランスを考えるなかで、デジタルフォレンジック業者に依頼する最大のメリットは、自力では難しいデータ解析や、復元を正確かつ効率的に行えることです。特に、仮想通貨ウォレットや暗号化されたストレージなど、技術的に高度な対象は、専門知識なしには太刀打ちできません。調査の過程を記録として残してくれるため、相続手続きの証拠資料として活用できます。

デジタルフォレンジック調査の費用は、依頼内容やデータの状況によって幅がありますが、数万円から数十万円程度が一般的です。証券口座や仮想通貨などの資産を発見できれば、十分に費用対効果が見込めるケースも少なくありません。大切な情報を失うリスクを防ぐための「投資」として考える価値もあります。

まとめ

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デジタル社会において、スマホやパソコンに眠る情報は、資産の管理から家族の思い出まで、多岐にわたるでしょう。相続においてそれらが見つからない、あるいはアクセスできないことは、金銭面だけでなく精神的な負担にもつながります。

デジタルフォレンジックは、そうした課題を解決する強力な手段です。実際に証券口座や仮想通貨の発見、写真や動画の復元といった成果は、家族にとって大きな安心と価値をもたらしてきました。今後さらにデジタル資産が増えることを考えると、この技術の必要性はますます高まっていくでしょう。

相続人にとって大切なのは、「困ったときに専門家に相談できる」という選択肢を知っておくことです。事前の備えや情報の整理とともに、デジタルフォレンジックを上手に活用することで、資産を守り、家族の絆を未来につなげていくことができます。

この記事の監修者

 

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石坂貴史

マネーシップス運営代表・FP

証券会社IFA、2級FP技能士、AFP、マネーシップス運営代表者。デジタル資産や相続をはじめとした1,000件以上の記事制作、校正・監修を手掛けています。金融や経済、不動産、保険、相続分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

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