
相続と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは、自宅や土地といった不動産、銀行に預けている預貯金かもしれません。実際の相続の現場では、それ以外の財産が関わってくることも多いです。今回の記事で取り上げる「農地」のケースでは、引き継ぐ際に注意が必要になります。
農地は一般的な宅地や山林と異なり「農地法」という特別な法律によって、厳格にルールが定められているのです。相続した後の扱い方を誤ると、自由に売却できなかったり、第三者に貸し出せなかったりする可能性があります。
その結果として、使い道のない土地を維持管理し続ける負担を背負わされることになりかねません。農業を継がない相続人にとっては、大きな悩みの種になることもあります。さらに近年では、相続における対象財産の範囲そのものが広がってきています。従来の不動産や金融資産だけでなく、ネット銀行口座、証券口座などの「デジタル遺品」も、適切に整理しておかなければ、スムーズに承継できないケースが目立ってきました。
パスワードが分からなければ、アクセスすらできず、気づかないまま凍結されてしまう危険もあります。今回の記事では、農地相続に伴う特有の注意点や手続きの流れを確認するとともに、見落とされがちなデジタル遺品の整理についても解説します。
農地相続の基本ルール

農地は一般の土地と違い、その売買や贈与にあたっては「農地法」に基づいて、農業委員会の許可を受けなければなりません。しかし例外的に、相続によって農地を取得する場合は、原則として自由に承継することが認められています。
この点だけを見ると「それなら、特に気にせず相続できるのでは」と考える方は多いでしょう。実際には、その後の活用方法によって、追加の手続きが必要となるため、注意が必要です。たとえば、相続した農地を耕作し続ける場合は問題ありませんが、相続人自身が農業を行わない場合、その農地を第三者に貸し付けたり売却したりするには、改めて農業委員会の許可や届出を行わなければなりません。
そうでなければ、思うように活用や処分ができず、管理の負担や固定資産税だけが残るリスクがあります。また、2024年4月からは「不動産登記の義務化」がスタートしました。これによって、農地を含む不動産を相続した場合にも、名義変更をきちんと行うことが求められるようになりました。これを怠って、相続登記を長期間放置すると、行政指導や過料が科される可能性もあります。
登記を済ませていないと、売却や担保設定といった処分行為も行えないため、早期に対応しておくことが望ましいです。農地相続では「引き継ぐこと自体は自由だが、その後の活用には制限が伴う」という前提を理解しましょう。農業を継ぐ意思があるのか、それとも処分を検討するのかを早い段階で整理しつつ、登記義務化にも対応するのが重要です。
農地相続で起こりやすい問題

農地の相続は、一般の不動産と異なる性質があります。まず、相続人自身が農業を継続しない場合です。農地は宅地のように、すぐに売却したり転用したりできるわけではありません。
耕作しなければ、やがて雑草が生い茂り、いわゆる「耕作放棄地」になります。こうした土地は、害虫や景観悪化の原因につながります。近隣住民にとって、迷惑の種となるだけでなく、所有者には、固定資産税をはじめとした維持コストがかかり続けるため、大きな負担になるでしょう。
次に、農地を複数人で共有する場合の問題です。兄弟姉妹や親族で共有名義になった農地は、誰が耕作するのか、貸すのか、売るのかといった利用方針で、意見が一致せず、トラブルや意見対立に発展します。
農業を続けたい人と処分を希望する人が混在している場合、その調整には、時間や労力がかかります。結果的に、農地が有効に活用されないまま宙に浮いてしまうケースも少なくありません。
さらに、農地を長期間放置してしまうと、所有者としての管理義務を果たしていないと見なされて、行政から指導を受けるケースがあります。場合によっては「農地法」に基づく、行政処分の対象となる可能性もあるのです。管理が行き届いていない農地は、地域全体の農業環境に悪影響を及ぼすため、厳格な対応が求められます。
このように、農地は「ただ持っているだけ」でも継続的にコストやリスクが発生する資産です。放置すればするほど、問題が深刻化していきます。そのため、農業を継がない人にとっては、早い段階から管理・活用・処分の選択肢を整理しなければなりません。将来に備えた対策を検討しておくことが重要です。
農地相続税の基礎と対策

相続財産の中でも「農地」は、特殊な扱いを受ける資産です。宅地や建物と違って、農地法や税法上の特別なルールがあり、評価方法や優遇制度によって相続税額が大きく変わります。
「思ったより税金がかからなかった」という人もいれば、「制度を知らずに多額の税負担を背負った」という人も多いです。ここでは、農地相続税の仕組みと注意点、そして対策について解説します。
農地の相続税評価方法

農地は、相続税の評価において、宅地とは異なる基準で評価されます。評価の基本は「農地としての利用価値」に基づいて算出されます。その際には、農地の位置や利用状況に応じて、4つの区分に分類されるのです。
まず「純農地」は、農業にしか利用できず、宅地転用がほぼ不可能な土地になります。このため、相続税評価額は低めに設定されます。固定資産税評価額に一定の評価倍率をかける「倍率方式」で評価される仕組みです。
たとえば、固定資産税評価額400万円の農地に対して、評価倍率が2.5倍であれば、相続税評価額は1,000万円です。
次に「中間農地」は、農地利用も可能ですが、将来的に宅地化の可能性が見込まれる地域の農地です。こちらも倍率方式で評価されますが、純農地よりは高めに評価される傾向があります。
「市街地農地」は都市計画区域内にあり、すでに宅地転用許可が出ているか、届け出だけで転用可能な農地です。この区分の評価は「宅地比準方式」が用いられます。農地を宅地とした場合の価格から、造成費用を差し引き、その結果に面積をかけて評価額を算出します。宅地並みの、高い評価額となる場合が多いです。
最後に「市街地周辺農地」は、市街地に近接して、宅地化の可能性が高い農地であり、市街地農地の評価額の80%程度で評価されます。
同じ農地でも、このように区分によって、評価額が数倍異なります。相続税の計算や納税計画を立てるうえで、非常に重要なポイントです。これらの評価倍率や計算方法は、国税庁が公開する「路線価図・評価倍率表」、都道府県ごとの資料を基に定められています。
農地相続で利用できる優遇制度

農地には「農地の納税猶予制度」という特別な制度があります。これは、相続人が被相続人から農地を相続し、その農地で引き続き農業を営むことを条件に、相続税の支払いを猶予できる仕組みです。
具体的には、相続税の申告期限までに必要な手続きを行い、一定の要件を満たすことで、相続税の納税を先送りにできるだけでなく、農業を続けている間は納税義務自体が免除されます。
さらに、猶予期間の20年間(または特定の地域の場合は農業相続人が生存する限り)にわたって農業経営を継続し、制度の定める一定の条件を満たす場合には、猶予されていた相続税の納付が免除されるケースもあります。
これにより、農業を継承する相続人に対して、経済的な負担を大幅に軽減し、農地の適正な利用と農業の持続を促進する狙いがあります。
一方で、この制度には注意点もあるのです。もし相続人が農業をやめて、農地を手放したり、農業経営が続けられなくなったりすると、猶予されていた相続税は一括して支払わなければなりません。利子税も課されることがあります。そのため、農地の相続にあたっては、農業を継続できるかを慎重に検討し、将来的な計画を含めて、専門家に相談しながら進めましょう。
この納税猶予制度は、農業後継者への支援策として、税制上の特例が設けられているため、農地相続における重要なポイントです。適用要件や期限、手続きの詳細は複雑になります。税理士や司法書士、行政書士などの専門家の助言を受けながら、対応することがおすすめです。
相続人が農業を続けない場合の税負担

農地を相続した場合に相続人が農業を継続しないと、納税猶予の特例を利用できなくなります。この場合、農地は農地としての評価ではなく、宅地に近い評価額で課税されることが多いです。相続税の額が大幅に高くなるおそれがあります。つまり、農業を続けないことで税負担が増えて、経済的な負担が相当大きくなる可能性があるのです。
さらに、農地を持ち続けること自体にも、固定資産税や管理費用といった維持コストが継続的に発生します。リスクやコストを避けるためには、相続前の段階で「誰が農地を引き継ぐのか」や「農業を継続する意志があるのか」を、家族間で明確にしてください。早期に話し合いを行い、農地活用の方向性を決めておくことで、無駄な税負担やトラブルが避けられます。農地を売却、または貸し出すことも検討しつつ、最適な相続・管理プランを考えましょう。
農地相続で兄弟姉妹がもめる理由と解決のポイント

農地の相続は、土地の価値や利用方法、維持管理の負担などが複雑に絡み合うため、兄弟姉妹間で意見が食い違いやすいテーマです。とくに農業を続けたい人とそうでない人、都市部に住む人と地元に残る人など、それぞれの立場の違いが大きな溝となります。
深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。ここでは、なぜ農地相続で兄弟姉妹がもめやすいのか、その背景と円満に解決するためのポイントを整理して解説します。
農地を兄弟姉妹で相続する際の課題

農地を兄弟姉妹で相続する際の課題は多岐にわたります。まず最大の問題は「分割の難しさ」です。農地は1枚の土地として存在しているため、物理的に均等に分けることが困難であり、多くの場合は共有名義とせざるを得ません。こうした共有状態は、管理や耕作、利用に関して「誰が何をするのか」が曖昧になりやすく、兄弟姉妹間のトラブルの温床となることが多いです。
また、農地の利用に関して「公平性の問題」も生じやすいです。たとえば「長男が農業を継ぐから良いが、次男や三男には実際のメリットがない」といった不満が表面化しやすいです。この不公平感は、放置できない大切な課題になります。
「換価の難しさ」も見過ごせません。農地は宅地のように市場で簡単に売れるわけではありません。相続財産を現金化して、兄弟姉妹に均等に分配することが、現実的に難しいのが現状です。売却する場合でも、需要の少なさや価格の変動、手続きの煩雑さから短期間での売却が難しく、遺産分割の障害になることがよくあります。
よくある兄弟姉妹間のトラブルの例

兄弟姉妹間の農地相続において、さまざまなトラブルの事例があります。「長男が農地を独占」している場合、次男や他の兄弟姉妹からの不満が起きやすいです。農業を継ぐという状況で、長男が農地の所有を、一手に引き受けることが多いです。これに対して、他の兄弟姉妹が納得せず代償金の支払いが十分でない場合に、対立が激化しやすくなります。
次に、相続人の一人が農業を継ぐものの、他の兄弟姉妹に代償金を払えない、あるいは、代償金の額で合意できないケースもあります。このような状況では、代償金を巡るトラブルで、調停や裁判に発展することも少なくありません。
さらに、農地を共有名義で相続した結果、誰も管理や耕作を行わずに放置される例も多いです。この場合、土地は耕作放棄地となります。維持管理がされないまま、放置されることで、近隣住民や行政からの指導や、改善命令の対象となりかねません。
農地法による売却制限があるため、兄弟姉妹間で話し合っても農地の売却が難しく、解決策が平行線をたどるケースも散見されます。宅地のように容易に売れない農地は、換価が難しいため、相続人間の話し合いがつかず、長期間にわたり相続問題が解決しない場合もあるのです。
トラブルを避けるための解決策

兄弟姉妹間の農地相続トラブルを避けるためには、事前にしっかりと話し合いの場を設けることが重要です。特に「誰が農業を継ぐのか」を明確にしなければなりません。農業を継がない兄弟姉妹に対しては、代償金や他の資産で補償する方法を検討することが円満な解決につながります。
代償分割という遺産分割方法を活用すれば、農地を継ぐ兄弟姉妹が現金やその他の資産を用いて、農業を継がない兄弟姉妹に対価を支払うことが可能です。この方法を使うことで、一人が農地を単独で所有し、管理・耕作の責任を負いながら、他の兄弟姉妹とは公平に財産を分配できます。
また、農業を自身で続けない場合の選択肢として、農地をほかの農家に貸し出したり売却したりして、その売却代金を兄弟姉妹で分ける方法もあります。しかし、農地は、農地法の規制により売買が制限されているため、売却に際しては、農業委員会への許可申請など複雑な手続きが必要です。こうした点も、あらかじめ専門家に相談し、適切に対処することが求められます。
さらに、話し合いを円滑に進めるためには、弁護士、司法書士、税理士といった専門家の助言や仲介を受けることが非常に有効です。専門家が介入することで、冷静かつ客観的に、遺産の全体像を整理できます。相続人の感情的な対立を避けるルール作りや、合意形成の場の設計もサポートしてもらえます。
| トラブルの対応策 | 内容 | 注意点・必要手続き | 
| 事前の話し合い | 誰が農業を継ぐのか明確にする | 感情的な対立を防ぐため、早めに協議しなければならない | 
| 代償分割の活用 | 農地を継ぐ兄弟姉妹が現金や他資産で、農業を継がない兄弟姉妹に補償する | 残された資産や現金の有無によって、実行可能性が変わる | 
| 貸与・売却 | 農地を他の農家へ貸したり売却したりして、代金を兄弟姉妹で分ける | 農地法の規制があり、売買には農業委員会の許可が必要になる | 
| 専門家の仲介 | 弁護士・司法書士などの助言を受けて、話し合いを円滑化させる | 感情的な対立を冷静化して、合意形成をサポートする | 
農地を相続放棄したらどうなるのか?

農地の相続は、宅地や預貯金とは異なり、利用や管理に特有の制約があるため、相続人にとって大きな負担となることがあります。そのため「農地の相続を放棄したい」と考える方も少なくありません。
しかし、相続放棄をすると農地だけでなく、故人のすべての財産や負債を引き継がないことになり、家族や他の相続人に影響が及ぶ場合もあります。ここからは、農地を相続放棄した場合にどうなるのか、その仕組みや注意点について、わかりやすく解説します。
相続放棄とは

相続放棄とは、故人が持っていた財産や借金などを、一切引き継がないと決めるための法的手続きです。家庭裁判所に申述書を提出して、受理されることで効力が生じます。相続を放棄すると、預貯金や家屋といったプラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産も、すべて相続しなくなります。
農地も不動産の一部にあたるため、相続放棄をすれば農地だけでなく、他の不動産や預貯金、動産など、すべての財産を引き継がないことになります。つまり「農地は放棄するが、預貯金は受け取る」といった部分的な相続はできません。そのため、相続放棄を検討する際には、財産全体の状況をふまえて判断することが大切です。
農地を相続放棄した場合の流れ

相続人の一部だけが、相続放棄をした場合、その人以外の相続人が、農地を含む財産を引き継ぎます。たとえば、一人が放棄しても、他の兄弟姉妹が相続する場合は、その人の持ち分として、農地が承継されます。
一方で、法定相続人が全員放棄すると、相続権は次の順位の親族へ移ります。兄弟姉妹や叔父・叔母、従兄弟姉妹などに順番が回り、誰かが相続を受け入れるまで続くのです。それでも、最終的にすべての親族が放棄した場合、農地は国に帰属します。
| 相続の状況 | 農地などの行方 | 
| 一部の相続人だけ放棄 | 放棄しなかった相続人が承継する | 
| 全員放棄 | 次の順位の親族へ移る | 
| 親族も全員放棄 | 農地は国庫に帰属される | 
| 管理者不在時 | 家庭裁判所が管理人を選任して処理する | 
農地相続放棄の注意点

農地の相続放棄は「関係を断ち切れる」と考えられがちですが、実際には大きな落とし穴があります。放棄しても、すぐに管理責任が完全に消えるわけではありません。次の相続人が決まるまでの間は、放置に伴うリスクを負う可能性があります。
農地をそのまま放置すれば、雑草や害虫の発生、鳥獣による被害などが起きやすく、近隣住民からの苦情や損害賠償トラブルにつながる危険性もあるのです。市町村などの行政から、管理や改善を求められるケースもあり、思わぬ対応を迫られるかもしれません。
さらに、相続人が誰もいなかったり全員が放棄した場合には、最終的に農地を含む相続財産は国に帰属します。しかしその手続きが完了するまでには空白期間があり、その間は家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任して管理を行います。
つまり、その間は放棄したつもりでも、相続人が一時的に責任を問われることがあるのです。農地相続の放棄を検討する際には、「すぐに義務から解放される」と安易に考えてはいけません。放置による近隣トラブルや、行政対応のリスクがあることを、十分理解しておくことが必要です。
農地以外にもある「相続で見落とされやすい資産」

農地と同じように、相続の場面で見落とされやすいのが「デジタル遺品」です。農地の場合、見た目として実体が存在するため、管理や手続きが必要だと意識しやすいです。一方で、デジタル遺品は目に見える形がなく、相続人が存在にすら気づかないケースが多いのが特徴です。
デジタル遺品の具体例としては、ネット銀行やネット証券の口座、暗号資産などの新しい金融資産が挙げられます。クラウド契約や動画・音楽のサブスクリプションサービスも含まれます。また、SNSやメール、クラウドに保存された写真や動画データといった情報も、デジタル遺品です。
農地の相続放棄において「放置による管理リスク」があるように、デジタル遺品の場合も「存在に気づかず放置されるリスク」が大きな問題です。ネット銀行や証券口座に残高があっても、パスワードやアカウント情報が分からなければ、相続人はその資産を引き出せません。
利用していないサブスクリプションが自動更新され続けたり、大切な思い出の写真や動画が二度と取り出せなくなったりするケースも多いです。特に、暗号資産やNFTは、秘密鍵やウォレット情報を失えば、法的に相続権があってもアクセス不能となります。実質的に、承継できないリスクがあるのです。
農地が適切に管理されなければ、近隣トラブルや行政対応を招くのと同様に、デジタル遺品も「引き継ぎ準備を怠ると、手に負えなくなる」という共通点があります。相続を考える際には、農地のような実体のある財産だけではなく、見えにくい資産について「放置しない仕組み」を事前に整えることが重要です。
| デジタル遺品について | 内容と例 | 特徴 | 
| 個別の項目 | ネット銀行・ネット証券、暗号資産、NFT、クラウド契約、サブスク、SNS・メール、クラウド保存の写真・動画 | 目に見えず、存在を把握しにくい | 
| 把握の難しさ | アカウント情報・パスワードが整理されていないと、相続人は存在に気づけない | 放置や失権につながりやすい | 
| 想定される問題 | ・口座残高を引き出せない ・サブスク費用が延々と引かれる ・写真や動画にアクセス不能 | 資産や思い出が失われる | 
| 暗号資産の特有リスク | 秘密鍵・ウォレット紛失で、アクセス不能になる | 法的に相続権があっても、実際には承継不可能である | 
| デジタル遺品の三大リスク | ①存在が分かりにくい ②アクセスに専門性が必要 ③失えば取り戻せない | 現代特有の存在 | 
デジタル遺品整理の必要性

農地相続では、管理が行き届かずに放置されると、害虫被害や近隣トラブルが発生して大きな問題になります。同じように、デジタル遺品も「気づかないまま放置される」ことで深刻なトラブルにつながるのです。
デジタル遺品の場合、単に残高や契約料金が失われるだけではありません。放置されたSNSアカウントやメールが、第三者に乗っ取られると、なりすまし被害や個人情報流出といったリスクに直結します。クラウド上に保存された写真や文書が漏えいすれば、家族や取引関係者を巻き込む恐れもあるでしょう。
こうした資産は、暗号資産やクラウド契約のように高度な専門知識が必要となる場合も多く、相続人が自力で把握・管理するのは難しいです。農地とデジタル遺品に共通しているのは、「存在を見落とすことで後になって大きなトラブルに発展する」という危険です。近年は専門の事業者に依頼して、故人のパソコンやスマホを調査して、利用していたオンラインサービスや、暗号資産を洗い出す方法も広がってきています。
専門的なサポートを活用することで、見落としを防ぎ、重要な資産や情報を確実に相続人に引き継ぐことができます。農地の管理や処分に早めの対応が不可欠なように、デジタル遺品の整理についても計画的に進めることが大切です。
| 項目 | 農地相続 | デジタル遺品相続 | 
| 放置によるリスク | 害虫の発生、鳥獣被害、雑草繁茂、近隣住民とのトラブル、行政からの改善要請 | 残高や契約料金の損失、SNS・メールの乗っ取りによるなりすまし被害、個人情報流出、クラウドデータの漏えい | 
| 管理の難しさ | 相続放棄しても、直後には責任が残る可能性がある。農地管理の負担が大きい | 専門知識やアカウント情報がないと存在の把握が困難、暗号資産やNFTは秘密鍵を失えば承継不可能 | 
| 必要な対策 | 雑草・害虫対策や適切な処分・管理を早期に行うこと | 専門業者による調査、不要な契約の解約、重要データ・資産の整理と安全な引き継ぎ | 
| サポートや相談窓口 | 相続財産管理人や農地の専門家への相談 | デジタル遺品の整理業者や専門技術者の支援 | 
| 早期対応の重要性 | 管理・処分の遅れは、近隣や行政とのトラブルに直結する | 整理を怠ると、資産喪失やセキュリティ被害が深刻化する | 
専門家・業者に相談するメリット

農地相続においては、専門家の役割を正しく理解して、適切に依頼することが重要です。たとえば、司法書士は、不動産登記手続きの専門家です。農地の相続登記や名義変更、共有持分の調整など、相続に欠かせない登記関連をサポートしてくれます。
税理士は、農地の評価額算定や相続税申告を担当します。農地に適用できる税制上の特例や、節税対策を組み立てるうえで、不可欠な存在です。農地特有の手続きとして、農地法に基づく許可・届出がありますが、これは行政書士の領域です。農業委員会への届出や関連する許認可手続きを代行しながら、遺言や相続関係書類の作成支援も受けられます。
近年では、農地相続と合わせて「デジタル遺品」の管理・承継も欠かせません。農地を相続したとしても、故人が利用していたネット銀行口座や、クラウド契約が放置されれば、費用の流出や個人情報漏洩といったリスクが残ります。こうした資産の調査や不要な契約サービスの解約、暗号資産ウォレットのアクセス支援などは、デジタル遺品整理の専門業者の役目です。
それぞれに適した専門家を活用することが、相続人の負担軽減につながります。まずは司法書士や行政書士に相談して基本的な枠組みを整えて、必要に応じて、デジタル遺品整理業者と連携することで、農地からデジタルまで広がる現代の相続を、安全かつ効率的に進められます。
まとめ

農地相続は通常の土地相続とは違い、農地法や登記義務など、特有のルールがあります。放置すれば、家族間トラブルや管理負担、税金の問題に発展する可能性があります。 現代では、農地や不動産と並んで「デジタル遺品」も重要な相続対象です。農地と同じく「見えにくいが放置できない資産」であり、専門業者を活用することで円滑な整理が可能になります。
相続は「資産を受け継ぐ」以上に、家族に余計な負担を残さないことが大切です。農地相続もデジタル遺品も、専門家に相談しながら早めに準備を進めることが、安心した資産承継につながるでしょう。
この記事の監修者

石坂貴史
マネーシップス運営代表・FP
証券会社IFA、2級FP技能士、AFP、マネーシップス運営代表者。デジタル遺品や相続をはじめとした1,100件以上のご相談、記事制作、校正・監修を手掛けています。金融や経済、相続、保険、不動産分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。
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