
近年、墓じまいを検討する方が増えています。少子高齢化や核家族化により、墓を維持する人手が足りなくなったことが一因です。また、遠方に住んでいて管理が難しい場合や、子や孫に負担をかけたくないと考える方も少なくありません。
墓じまいは、単に墓石を撤去するだけではなく、遺骨の移動や供養方法の変更など、多くの手続きと費用が発生します。そのような場合に、どのくらいの費用がかかるのかは、多くの方が最も気にするポイントです。
今回の記事では、墓じまいにかかる費用の相場や内訳、節約方法や手続きの流れまでを詳しく解説します。これを読むことで、事前に費用感を理解して、家族と相談しながら、安心して計画を進められるでしょう。
墓じまいの基礎知識

近年、終活という言葉が広く知られるようになり、自身や家族の「お墓のあり方」を見直す人が増えています。これまで日本では、「先祖代々のお墓を守るのが家族の務め」と考えられてきました。しかし、少子化や核家族化、都市部への人口集中などにより、墓を維持・管理していくことが、難しい家庭も多いです。
お墓参りに行くにも、距離や時間の制約があり、管理費や修繕費といった経済的負担も無視できません。また、「子どもに負担をかけたくない」「遠方の墓を将来どのようにすべきか悩んでいる」といった理由から、元気なうちに整理を検討する人も増えています。
こうした流れの中で注目されているのが「墓じまい」です。単なるお墓の撤去ではなく、故人の遺骨を、新しい形で供養し直す「現代に合わせた供養の選択」ともいえるものです。では、具体的に「墓じまい」とは、どのようなことを指して、どのような手続きが必要なのでしょうか。ひも解いていて、解説していきます。
墓じまいとは?

「墓じまい」とは、先祖代々のお墓や個人墓を撤去して、そこに納められている遺骨を、他の墓地や納骨堂へ移したり、永代供養墓・樹木葬など、別の方法で供養したりすることです。
近年では、単に墓石を壊す行為ではなく、供養の形を新しく整えるという意味合いで使われます。少子化や核家族化が進む現代社会では、墓を継ぐ人がいない、遠方に住んでいて、管理が難しいという事情から、維持や管理の負担を減らすために、墓じまいを選択する家庭が増えています。
墓じまいを検討する理由

墓じまいを検討する理由は、家庭によってさまざまです。近年では、社会の変化やライフスタイルの多様化を背景に、同じような悩みを抱える人が増えています。
ここでは、多くの人が墓じまいを考えるきっかけとなる、代表的な理由を見ていきましょう。
- 維持費の負担が大きい
お墓を所有していると、毎年の管理料や清掃・修繕費など、思いのほか多くの費用がかかります。特に、霊園や寺院が管理する墓地では、永代使用料に加えて、雑草の手入れや、墓石の補修などの費用が発生することもあります。
年金生活や収入の変化により「このまま維持し続けるのは厳しい」と感じて、負担を減らすために、墓じまいを決断するケースも少なくありません。
- 後継者がいない
子どもがいない、遠方に住んでいる、海外に移住しているなど、墓を継ぐ人がいない家庭も多いです。お墓の継承は、法律上の義務ではありませんが、誰も管理する人がいなくなると、雑草が生い茂ったり、墓石が倒壊してしまうなど、無縁墓になるリスクがあります。「次の世代に負担を残したくない」「自身の代で整理しておきたい」という思いから、墓じまいを選ぶ人が増えているのです。
- 遠方で管理が困難
地方に実家の墓があり、自身は都市部に住んでいるというケースもよくあります。お盆やお彼岸のたびに、長距離を移動して掃除やお参りをするのは、時間的にも経済的にも、負担が大きいです。
特に高齢になると、遠方まで出向くのが難しくなり、「この先も管理を続けられるのか不安」という声が多いです。そのため、自宅近くの納骨堂や永代供養墓に移すなど、暮らしに合わせた方法を検討する人が増えています。
- 土地活用や売却を考えている
お墓が建っている土地が個人所有の場合、墓じまいを行うことで、土地を更地に戻して、売却や他の用途に活用できる可能性があります。
特に地方では、祖父母の代から受け継いだ土地を「空き地のままにしておくよりも、整理して有効活用したい」と考える人も少なくありません。お墓の整理をきっかけに、家族の資産全体を見直すケースも多いです。
このように、墓じまいは、単なる経済的な判断だけでなく、「家族の将来」や「供養の在り方」を見つめ直す手段でもあります。それぞれの家庭の事情に応じた、最適な形を選ぶことが大切です。
| 理由 | 主な問題・背景 | よくある対応策・考え方 |
| 維持費の負担が大きい | ・管理料や清掃・修繕費など、毎年の出費がかさむ ・年金生活などで、支出が負担になる | ・墓じまいで費用を整理 ・永代供養墓など、維持費のかからない形へ移行 |
| 後継者がいない | ・子どもがいない、または遠方・海外在住 ・将来誰も管理できない不安 | ・自身の代で墓じまいを実施 ・無縁墓を防ぐため、永代供養へ改葬 |
| 遠方で管理が困難 | ・実家の墓が地方にあり、掃除・お参りに行きづらい ・高齢での移動が大変 | ・自宅近くの納骨堂に移す ・アクセスしやすい場所に改葬 |
| 土地の活用・売却を考えている | ・お墓のある土地を有効利用したい ・相続後、空き地のまま維持するのは非効率 | ・墓じまいで更地に戻して売却 ・土地活用や資産見直しのきっかけにする |
墓じまいに関わる法律と手続きについて

墓じまいを進めるうえでは、感情的な整理だけでなく、法律や行政上の正式な手続きを正しく踏むことが、とても重要です。お墓は個人の所有物のように見えても、実際には「墓地埋葬法」という法律のもとで厳格に管理されており、自由に移動や撤去を行うことはできません。
手続きを誤ると、トラブルや罰則の対象になることもあるため、事前に流れをしっかり理解しておく必要があります。ここでは、墓じまいに関わる法律や手続きを見ていきましょう。
- 墓地埋葬法
「墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」は、墓地の設置や遺骨の取り扱い、改葬(遺骨の引越し)に関する基本ルールを定めた法律です。この法律により、遺骨を勝手に移動したり、許可のない土地に埋葬したりすることは禁じられています。
つまり、墓じまいを行う際には、法律上「遺骨を別の場所へ移す=改葬」とみなされて、自治体からの正式な許可を得なければなりません。
- 改葬手続き
お墓を別の場所へ移す場合は、市区町村役場で「改葬許可申請」を行います。この申請には、現在のお墓の管理者から発行される「埋葬証明書」と、新しい墓地や納骨堂の受け入れ証明書(受入証明書)が必要です。申請書とこれらの書類を提出して、自治体から「改葬許可証」が交付されて、はじめて遺骨を移動できます。
この許可証がないまま遺骨を移動すると、法律違反(墓地埋葬法第21条違反)となる可能性があるため、注意が必要になります。また、改葬手続きには自治体ごとに細かい違いがあるため、あらかじめ市区町村役場や墓地の管理者に、確認しておくと安心です。
- 霊園・寺院の規約
墓じまいを行う際は、各霊園や寺院ごとに定められた、独自の規約や慣習にも従う必要があります。たとえば、撤去工事の方法、石材業者の指定、閉眼供養の実施など、宗教的・実務的な取り決めがある場合があるのです。
また、墓石撤去費用や管理料の精算など、費用面の条件も霊園によって異なります。トラブルを避けるためにも、事前に必ず管理者に相談して、必要な書類や流れを明確にしておきましょう。
| 項目 | 内容 | 注意点・ポイント |
| 墓地埋葬法 | 墓地の設置・埋葬・改葬(遺骨の移動)などを定める法律。 | ・許可なしに遺骨を移動・埋葬するのは違法(墓地埋葬法第21条)になる。 ・墓じまいは「改葬」に該当して、自治体の許可が必要である。 |
| 改葬手続き | 遺骨を他の墓地や、納骨堂に移すための正式な申請手続き。 | ・市区町村役場で「改葬許可申請」を行う。 ・埋葬証明書(現管理者発行)・受入証明書(新墓地発行)が必要な書類になる。 ・許可証が交付されてから、遺骨の移動が可能になる。 |
| 法律違反のリスク | 許可証なしで遺骨を移動すると、違法行為になる。 | ・墓地埋葬法第21条違反の可能性。 ・自治体ごとに手続き・書類が異なるため、事前確認が重要になる。 |
| 霊園・寺院の規約 | 墓じまいには、各施設の独自規約や宗教的慣習がある。 | ・撤去工事の方法、石材業者指定、閉眼供養の実施などが条件。 ・費用(撤去費・管理料精算)が霊園によって異なる。 ・管理者に事前相談して、必要書類・流れを確認するのがおすすめ。 |
墓じまいにかかる費用を4つの分野で解説

墓じまいを検討する際に、まず気になるのが費用の問題です。墓じまいの費用は、墓の大きさや立地条件、使用する供養方法などによって、大きく変動します。また、単に墓石を撤去するだけではありません。
改葬手続きや永代供養の手配、運搬費用などもかかるため、全体の費用は、思った以上に高額になるケースがあります。ここでは、これから墓じまいを行う方が事前に把握しておきたい、一般的な費用の内訳を4つのテーマに分けて、わかりやすく解説していきます。
墓石の撤去費用

墓石の解体・撤去には、墓石の大きさや材質によって、費用が大きく変わります。
- 小規模墓(1㎡程度):10万〜30万円(目安)
- 中規模墓(2〜3㎡程度):30万〜50万円(目安)
- 大規模墓(4㎡以上):50万〜100万円(目安)
石材が御影石や特殊加工されている場合、解体作業に手間がかかるため、さらに費用が上がることがあります。墓石を搬出する際の、重機使用や運搬費も含めて、見積もりを確認することが重要です。
永代供養・納骨の費用

墓じまいを行った後は、これまでお墓に納められていた遺骨を、どのように供養・安置するのかを決めなければなりません。かつては、先祖代々の墓に納め直す「改葬」が一般的でしたが、近年では、少子化や核家族化の影響により、跡継ぎのいない家庭や、子どもに負担をかけたくないという理由から、新しい供養の形を選ぶ人が多いです。
代表的な供養方法としては、永代供養墓、樹木葬、共同納骨堂といった選択肢があります。これらは、従来の「個人のお墓」を持たずに、遺骨を安置・供養してもらう形式です。
たとえば、永代供養墓は、寺院や霊園が責任を持って、永続的に供養と管理を行ってくれる仕組みです。将来的な墓守りが不要な点が大きな特徴になります。費用の中には、永年の管理料や合同法要などの供養費が含まれている場合が多く、追加費用が発生しにくいという安心感があります。
樹木葬は、自然の中で眠ることを希望する人に人気があり、墓石の代わりに樹木を墓標とするため、環境や景観にも配慮された供養方法です。共同納骨堂は、比較的費用を抑えやすく、屋内施設で天候に左右されずにお参りできる点から、都市部を中心に需要が高まっています。
| 供養方法 | 費用(※目安) | 特徴 | メリット |
| 永代供養墓 | 約10万〜50万円 | 寺院や霊園が永続的に供養・管理を行う形式。個人での墓守が不要。 | ・将来的な管理負担が不要。 ・合同法要などの供養が含まれる場合が多く、追加費用が少ない。 ・「家族に負担をかけたくない」と考える人に人気。 |
| 樹木葬 | 約20万〜60万円 | 樹木を墓標として、自然の中で供養する形式。個人墓・合同墓のタイプがある。 | ・自然志向・環境配慮型。 ・墓石が不要で景観に馴染む。 ・明るく開放的な雰囲気を好む人に向く。 |
| 共同納骨堂 | 約5万〜20万円 | 室内施設で複数の遺骨をまとめて安置する形式。 | ・費用を抑えやすい。 ・屋内で天候に左右されず、お参りが可能。 ・都市部で人気が高まっている。 |
手続き・申請にかかる費用

墓じまいを進めるうえで欠かせないのが、行政機関への「改葬許可申請」です。遺骨を別の場所に移す際には、現在のお墓がある市区町村役場で「改葬許可証」を取得する必要があります。これにかかる費用は、数百円〜数千円程度になります。
しかし、申請書の作成や必要書類の収集には一定の手間がかかり、墓地の管理者から「埋葬証明書」や「受入証明書」などの書類を揃えなければなりません。
自身で手続きを行うことも可能ですが、遠方の墓地にある場合や、複数の遺骨をまとめて改葬するケースでは、書類の取り寄せや、提出作業に時間がかかるかもしれません。そのため、こうした手続きをスムーズに進めたい場合は、行政書士などの専門家に依頼する方法もあります。
行政書士に代行を依頼した場合の報酬は、おおよそ1万円〜3万円程度が相場です。書類の作成・申請・役所への対応などを、一括で行ってくれます。また、寺院や霊園によっては、独自の申請ルールや提出書類を求められる可能性があります。
費用そのものは大きくありませんが、申請に不備があると手続きが遅くなり、納骨や永代供養のスケジュールにも影響が出るため、慎重に準備を進めましょう。
その他の費用

墓じまいでは、永代供養や改葬手続き以外にも、思いのほか多くの費用が発生します。遺骨を新しい納骨先まで移動させる際、近距離であれば、自身で持ち運ぶことも可能です。しかし、遠方の場合や複数の骨壷を移す場合は、専門の運送業者に依頼するケースもあります。
距離や便の方法によって、費用は変わりますが、数万円程度が目安となります。航空便や宅配を利用する場合は、取り扱い条件を事前に確認しておくと安心です。
次に、墓地の整地・清掃費です。墓石を撤去したあと、土地をきれいに整える必要があります。雑草の除去や更地化、簡易的な整備などを行います。費用の目安は、1万〜5万円程度です。寺院や霊園によっては、契約上、原状回復が義務づけられている場合もあるため、注意が必要です。
また、業者への依頼費用も想定しなければなりません。墓じまいの一連の流れ(墓石撤去・行政手続き・遺骨の運搬・永代供養先の紹介など)を専門業者に一括で依頼する場合、仲介手数料を含めて、5万〜10万円程度が一般的です。複数業者に見積もりを取り、対応範囲や費用内訳を比較することで、無駄のない予算計画を立てられます。
| 費用の項目 | 内容・目的 | 費用の目安 | 注意点・ポイント |
| 遺骨の運搬費 | 遺骨を新しい納骨先へ移動させる費用。 近距離は自身で運搬可能、遠方や複数壺は、業者依頼が一般的になる。 | 数万円程度 | ・距離・運搬方法(陸送・航空便・宅配)で金額が変動する。 ・宅配利用時は、取り扱い条件の確認が必要になる。 |
| 墓地の整地・清掃費 | 墓石撤去後に土地を整える費用。 雑草除去・更地化・簡易整備などを実施する。 | 約1万〜5万円 | ・霊園や寺院の契約で、原状回復が義務の場合がある。 ・撤去後の管理条件を事前に確認するのがおすすめ。 |
| 業者への依頼費(代行費) | 墓石撤去、行政手続き、運搬、永代供養先紹介などを、一括で依頼する場合の費用。 | 約5万〜10万円 | ・仲介手数料を含むことが多い。 ・複数業者の見積もり比較で、費用と対応の範囲を調べる。 |
墓じまいの費用のシミュレーション

墓じまいを検討する際に、具体的にどれくらいの費用がかかるのか、イメージしづらいという人も多いでしょう。費用は、墓の大きさや石材の種類、立地条件、供養方法などによって大きく変動します。単純な目安だけでは把握しきれません。ここでは、異なる条件や状況に応じた3つのケースを、簡単に紹介していきます。
- ケース1:都市部の一般墓(中規模・夫婦墓)
都市部にある一般墓(中規模・夫婦墓)の場合、墓じまいの費用は、おおむね75万円前後が目安となります。まず、墓石の撤去に約40万円、遺骨を20kmほど移動させるための運搬費に約5万円、永代供養墓への納骨費用として約30万円、さらに、行政手続きや書類の発行費に、およそ5千円程度がかかります。
これらを合計すると、合計でおよそ75万5千円ほどです。墓の立地や作業内容によって、前後する場合もありますが、都市部では、このくらいの規模の費用感を想定しておくと安心です。
- ケース2:郊外の小規模墓
郊外にある小規模なお墓の場合、墓じまいにかかる費用は、おおよそ40万円前後が目安となります。具体的には、墓石の撤去費用が約15万円、遺骨を50kmほど移動させるための運搬費が1万円、移転先となる樹木葬への納骨費が25万円、さらに行政手続きや書類作成に5千円程度がかかります。
これらを合計すると、およそ41万5千円です。都市部に比べると、全体的な費用を抑えやすく、自然環境に囲まれた樹木葬を選ぶことで、維持管理の負担を軽減できる傾向があるでしょう。
- ケース3:郊外の大規模墓から永代供養への切替
郊外にある大規模なお墓を永代供養へ切り替える場合、墓じまいの費用は、およそ140万円前後になることが多いです。墓石撤去に約80万円、遺骨を100kmほど移動させるための運搬費に約10万円、移転先となる永代供養墓への納骨費用が約50万円、そして、行政手続きや書類作成に、約1万円程度がかかると想定します。
これらを合わせると、合計で約141万円ほどです。規模が大きい分、撤去費用が全体の中で、大きな割合を占めますが、永代供養に切り替えることで、今後の管理負担や後継者問題を解消できます。
| ケース | 合計費用目安 | 主な内容・特徴 |
| 都市部の一般墓(中規模・夫婦墓) | 約75万5千円 | 墓石撤去40万+運搬5万+永代供養30万+書類5千円。都市部は、費用が高くなる傾向がある。 |
| 郊外の小規模墓 | 約41万5千円 | 撤去15万+運搬1万+樹木葬25万+書類5千円。費用は控えめになる。 |
| 郊外の大規模墓から永代供養へ | 約141万円 | 撤去80万+運搬10万+永代供養50万+書類1万。撤去費が高額になるが、管理が不要になる。 |
墓じまい費用を節約する方法

墓じまいを検討する際、できるだけ費用を抑えたいと考える人は少なくありません。墓じまい費用は墓の大きさや立地、供養方法などによって大きく変わるため、工夫次第で総額を削減できる余地があります。
- 複数業者に見積もりを依頼
まず基本となるのは、複数の墓じまい業者に見積もりを依頼することです。業者によって、料金体系や作業内容、追加費用の条件は、大きく異なります。見積もりを比較する際には、単に総額だけを見るのではなく、作業の範囲や含まれるサービス、追加費用が発生する条件をしっかり確認することが重要です。
たとえば「墓石撤去後の整地費用が別料金になるのか」「遺骨の運搬費は含まれているのか」といった点を確認しておくことで、予想外の出費が生じるリスクを減らせます。
- 自治体・霊園の補助制度を活用
自治体や霊園によっては、墓じまい費用や永代供養への移行に対して、補助金を出す場合があります。特に、少子高齢化や跡継ぎ不在の問題を背景に、墓じまいを支援する制度を設ける自治体が増えているのです。
補助金の額や条件は、自治体ごとに異なるため、申請方法や必要書類を事前に確認して、利用できる場合は積極的に活用しましょう。
- 墓石の再利用やリユース
墓石を完全に処分するのではなく、別の墓地に移設する方法もあります。墓石の再利用が可能な場合、撤去費用や新たに墓石を購入する費用を、削減できるケースがあるのです。移設可能なのかは墓石の材質や形状、霊園の規約によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
- 供養方法を見直す
従来の個別墓にこだわらず、樹木葬や共同墓地などを選ぶことで、将来の管理費や維持費が削減できます。永代供養墓や樹木葬は、管理や供養を寺院や霊園に一任できるため、家族の負担も減らせます。また、自然に配慮した供養方法や都市部の共同納骨堂を選ぶことで、総額のコストを低く抑えられます。
【家族でトラブルが発生しないために】墓じまいの手順を紹介

墓じまいをスムーズに進めるためには、段階的に計画を立てて、正しい順序で準備を進めることが大切です。各ステップで必要な作業や注意点を理解することで、トラブルや追加費用の発生を防げます。ここでは、墓じまいの準備と対策を、時系列に沿って解説します。
- 家族・親族への相談
最初のステップは、家族や親族との話し合いです。墓じまいは故人や先祖に関わる大切な問題のため、感情的な意見のすれ違いが起こりやすいものです。早い段階で全員の意思を統一しておくことが、スムーズな進行の第一歩になります。
- 業者選定・見積もり比較
次に、墓じまいを依頼する業者を選定します。複数の業者に見積もりを依頼し、費用・作業内容・対応姿勢などを比較検討しましょう。
- 改葬許可申請
業者選定が済んだら、次は役所での改葬許可申請を行います。これは、遺骨を新しい納骨先へ正式に移動するために必要な手続きです。
- 墓石撤去・供養・納骨
改葬許可が下りたら、いよいよ現地での作業に入ります。専門業者による墓石の解体・撤去・運搬作業が行われ、遺骨を取り出します。安全かつ丁寧な作業が求められるため、信頼できる業者への依頼が重要です。
その後、遺骨は新しい供養先(永代供養墓・納骨堂・樹木葬など)に納められ、希望する供養方法に従って安置されます。この時点で僧侶に読経を依頼する場合もあります。
- 手続き完了後の報告・書類整理
すべての作業が終わったら、手続き完了の報告と書類整理を行いましょう。
改葬許可証、納骨証明書、業者との契約書などは、今後の供養や相続関連の手続きで必要になることがあります。
関係者に完了を報告し、書類をまとめて保管しておくことで、安心して墓じまいを終えることができます。
墓じまいは、感情面・費用面・手続き面のすべてにおいて慎重な対応が求められます。順序を守って計画的に進めることで、家族全員が納得できる形で先祖を供養することができるでしょう。
墓じまいでよくあるトラブルと注意点

墓じまいは、費用や手続きの面が複雑です。準備不足や確認漏れがあると、思わぬトラブルに発展することがあります。よくあるトラブル例として、まず、見積もりより高くなるケースです。
墓石の状態や立地条件によって、見積もり時よりも費用が高くなることがあります。たとえば、墓石が大きくて重い場合や、特殊な石材を使用している場合は、解体や搬出に手間がかかるため、追加費用が発生しやすいです。
また、山間部や坂道の多い墓地、車道から離れた場所にある墓地では、重機や人員の手配が難しいため、作業費が高くなる傾向があります。
次に、家族間での意思の不一致にも、注意しなければなりません。墓じまいでは、供養方法や費用負担を巡って、家族間で意見が食い違うことがあります。「どのような方法で供養するのか」「費用を誰が負担するのか」といった点で同意がない場合、手続きが進まず、トラブルに発展する場合があります。
法律や霊園規約の違反にも、注意が必要です。墓石を無断で撤去したり、改葬手続きを行わずに遺骨を移動したりすると、法律違反や霊園規約違反になります。改葬許可申請を行って、墓地管理者や新しい納骨先の承諾を得ることは必須です。
墓じまいを安全に進めるためには、事前準備と情報整理が欠かせません。費用や手続き、家族間の合意、業者選びなどを、一つひとつ丁寧に行うことで、トラブルを最小限に抑えて、安心して供養を終えられます。
墓じまいとあわせて考えたいデジタル遺品の整理

墓じまいは、物理的なお墓を整理して、新しい供養の形を考える大切な機会です。同じように、故人が残したスマホやPC、クラウド上の写真やメールなどの「デジタル遺品」も整理しておくことで、心残りのない供養につながります。
特に、個人情報や契約情報が含まれるデジタル遺品は、放置すると、トラブルの原因になることもあります。墓じまいのタイミングで、信頼できるデジタル遺品業者に依頼すればデータのバックアップや削除、アカウント解約などを安全かつ効率的に行えます。
物理的なお墓の整理と、デジタル遺品の整理を同時に進めることで、故人の遺産をまるごと整理できます。家族も安心して、供養や手続きを進められます。
まとめ

墓じまいは、費用や手続き、家族間の調整など、多くの要素が絡むため、初めて行う場合は複雑に感じるかもしれません。しかし、事前に情報を整理して、段階的に準備を進めることで、安心して進められます。費用は墓の大きさや立地、供養方法によって変動するため、複数業者から見積もりを取り、内容を比較することが重要です。
また、家族間で十分に話し合い、合意形成を行うことで、後々のトラブルを防ぐことができます。行政手続きや必要書類の確認を怠らないことも、スムーズな進行には欠かせません。墓じまい後も、永代供養や樹木葬、共同墓地など、多様な供養方法が選べます。
家族の状況や希望に合わせて、適切な方法を選ぶことで、故人をしっかりと見送りつつ、残された家族の負担も最小限に抑えられます。墓じまいは、準備と情報収集を丁寧に行うことで、費用や手続きの不安を軽減して、安心して進められる手続きであると言えるでしょう。
この記事の監修者
石坂貴史
マネーシップス運営代表・FP
証券会社IFA、2級FP技能士、AFP、マネーシップス運営代表者。デジタル遺品や相続をはじめとした1,100件以上のご相談、記事制作、校正・監修を手掛けています。金融や経済、相続、保険、不動産分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

