人生100年時代ともいわれる現代、誰もが認知症になる可能性をもっています。認知症になり、判断能力が低下すると、生活のあちこちに支障をきたすかもしれません。
少し前までは、資産管理の困り事としては「銀行の暗証番号を忘れてしまう」のが問題だったでしょう。しかし昨今は、銀行口座のオンライン化やデータのクラウド保存、スマホ上で管理していた証券口座、毎月引き落とされるサブスクサービスなど、スマホのパスワードを忘れると様々な問題が発生します。
本記事では、認知症になる前にデジタル資産の生前整理サービスを申し込む必要性やメリットについてご紹介します。
デジタル資産とは?放置するリスクも解説

デジタル資産という言葉を聞いたことがありますか?まずは、どのようなものなのか、放置するリスクとともに確認しておきましょう。
金銭的な価値があるもの
- ネット銀行の預金
- ネット証券の株式、投資信託
- 暗号資産
- 電子マネーの残高、ポイント
これらは金銭的価値のあるデジタル資産で、相続の対象になります。
しかし、その存在を知らなければ、永久に放置されいずれ失効するか休眠口座として凍結されるなど、本来引き継げるはずの財産が消滅してしまうリスクがあります。
継続課金などの負の遺産になるもの
動画配信サービス、アプリの有料会員などの月額制サブスクリプションや、クレジットカード情報が紐付いた自動更新サービスなどは、解約しない限り口座からお金が引き落とされ続けます。
思い出や記録に関するもの
スマホ内の写真・動画、SNS(Facebook, Instagram, Xなど)のアカウント、メール、クラウド上の書類。これらは家族にとっての心の拠り所となりますが、アクセスできなければ「一生見られない思い出」になります。
デジタル資産は「死亡後になんとかする」のが困難

人によっては、「死んだあとに家族がなんとかしてくれるだろう」と考えるかもしれません。しかし、デジタル資産に関しては、家族がなんとかしたくても難しいケースが多いです。詳しく見ていきましょう。
認証の突破が難しい
スマホを介して利用するサービスのセキュリティは極めて強固です。本人のスマホが開かなければ、サービスにログインすることすらできません。
認知症が進行すると、これまで難なく行えてきた手続き等が難しくなり、パスワードのような数字を思い出すことも困難になるケースが多いです。
本人すらスマホのロック解除ができない状況では、プロ業者に頼んでもお手上げになる可能性が高いです。

法律と契約の問題

多くのネットワークサービスでは、アカウントの利用権は本人のみに帰属します。認知症になって判断能力が失われたという理由で、家族が代わりにログイン操作することは、厳密には利用規約違反にあたる可能性が高いです。
家族間の口約束だけでは不十分
以上の問題に加えて、デジタル資産では家族間での口約束だけでは解決できない問題があります。ネット証券の口座の閉鎖や暗号資産を円に換金する手続きなどは、本人の委任状や法的な代理人の証明が求められます。こうした問題は事前に別の対処が必要となるでしょう。
よくあるトラブルの例として、認知症の親のスマホを特定の子どもだけが操作し、家族間の揉め事に発展するという問題です。本人のためによかれと思って行ったことでも、本人が覚えていなければ「勝手に口座からお金を引き出した」などと疑われる可能性があります。
デジタル資産生前整理サービスの役割とメリット

デジタル資産の生前整理サービスでは、本人が元気なうちに自分が管理しているデジタル資産のリストや万が一の際の取り扱い指示を登録しておくことができます。
具体的には、
- 資産情報の安全な保管
- 死後や認知症発症後にあらかじめ指定した受取人への通知
- アカウントの削除や凍結支援
などができます。

活用するメリットは以下のとおりです。
- 遺族の精神的、経済的な負担を軽減できる
- 資産を正しく引き継げる
- 隠したい情報を整理し尊厳を守れる
- 自分の「もしも」に対する不安が軽減でき今を充実させられる
遺族の精神的、経済的な負担を軽減できる
デジタル資産の整理を放置したまま本人が管理能力を失うと、残された家族には計り知れない負担がかかります。家族がロックされたスマホやログインできない口座を前に、途方に暮れずに済みます。また、故人のプライベートな領域を覗き見なければならないという心理的抵抗感も減らすことができます。
資産を正しく引き継げる
デジタル資産の特徴は「通知(郵便物)が来ない」ことです。そのため、家族がその存在にすら気づかず、遺産分割協議から漏れてしまうリスクが非常に高くなります。
デジタル資産の生前整理サービスを利用すると、ネット証券や暗号資産、FX、ポイント、電子マネーなど、実体のない資産をプロの視点でリストアップします。これにより、せっかくの財産が誰にも知られず消滅するのを防げます。
また、単にリストを作るだけでなく、法的に有効な形式(公正証書遺言との連携など)で情報を残すアドバイスもしてもらえます。これにより、家族が金融機関に対して正当な相続人としてスムーズに手続きを行えるようになり、資産が凍結されて引き出せなくなる事態を回避できます。
隠したい情報を整理し尊厳を守れる

デジタル空間には、家族であっても見られたくないプライバシーが詰まっています。これらを適切に処理できるのは、生前整理サービスならではの大きなメリットです。
「このフォルダは消去し、この写真フォルダだけを家族に残す」といった、きめ細やかな設定をプロが技術的にサポートします。死後に見られたくないデータが家族の目に触れることを防ぎ、最後まで自分自身のイメージと尊厳を守ることができます。
また、SNSアカウントの追悼アカウント化や完全削除の予約設定などを適切に行うことで、自分が去った後のデジタルタトゥーの管理を自らの意思で決定する、といったことも可能です。
自分の「もしも」に対する不安が軽減でき今を充実させられる

生前整理は、終わりのための準備ではありません。これからの人生を軽やかに生きるための整理です。
自分に「もしも」があった際、家族に見られたくない情報はきちんと隠せることが分かっていれば、今を楽しむことができます。重要な情報や資産が家族のために残せる状態が築ければ、その心配はなくなります。
「認知症になる前」でなければならない理由

認知症が進行してからでは、生前整理サービスの契約自体ができなくなります。なぜなら、法的効力のある契約や本人の意思確認を前提としたサービスは、判断能力が低下した状態で申し込んでも利用規約や説明の理解が難しいからです。認知症の診断がおりた後の契約は、状態によっては契約の有効性を争われるリスクもあります。
また、サービスの利用にあたり、自分がどのサービスを使っているのか思い出したり、IDを整理したりする必要もあります。これには、記憶力や集中力も求められます。
認知症の多くは進行する
認知症にもいくつか種類はあり、原因となる病気の種類によって進行のスピードやパターンは異なりますが、基本的には進行性です。
最も多いとされるアルツハイマー型認知症は、数年から十数年をかけて緩やかに進行するとされており、徐々に少しずつ生活に支障をきたす範囲が広がっていくのが特徴です。
そのため、「もう少し先でもいいか」と思っているうちに忘れてしまったり、判断能力が低下してサービスの契約すら難しくなってしまう可能性があります。
ある日突然認知症になることもある
認知症の原因は、1つではありません。例えば、脳血管性認知症の場合、脳梗塞や脳出血が原因で発症します。こうした病気は突然起こることが多く、後遺症によっては生活も一変します。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血を繰り返すたびに一気に症状が進む傾向にあるため、早めに対処しておく必要があるでしょう。

まとめ

デジタル資産の生前整理サービスでは、自分自身のプライバシーを守り受け継ぎたい資産を家族に遺すことができます。経済的な損失や混乱を防ぎ、万が一の際に自分の尊厳が保たれる仕組みを作っておくことは、現代的な重要な備えといえるでしょう。






