「スマホの中の写真や連絡先、それにネットで使っているサービス。もし自分に何かあったら、これはどうなるんだろう」
一人で暮らしていると、ふとそんな不安がよぎることはありませんか。
私は介護福祉士として15年以上、高齢者やそのご家族と接してきました。
その中で強く感じるのは、一人暮らしの方ほど「デジタルの備え」が後回しになりやすい、ということです。
スマホやパソコンの中には、写真や連絡先だけでなく、お金やサービスの契約まで詰まっています。
それを整理しないままにしておくと、亡くなった後に誰にも気づかれず、トラブルの種になってしまいます。
この記事では、一人暮らしの高齢者にこそ必要な「デジタル終活」について、現場の視点からお伝えします。
データで見る|一人暮らしの高齢者と「気づかれない」リスク

まずは、数字で確認しましょう。
内閣府の『令和5年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしは年々増えています。
2020年の時点で、65歳以上の男性の約15%、女性の約22%が一人暮らしでした。今後はさらに増え、2050年には男性の約26%、女性の約29%にのぼると見込まれています。
さらに、スマホやインターネットは、いまやシニア世代にも当たり前に使われています。
総務省の『令和6年版情報通信白書』によると、インターネットの利用率は60代で90.2%、70代でも67.0%にのぼります(2023年末時点の調査)。80歳以上でも36.4%が利用しており、その割合は、いずれの世代でも年々増えています。動画やSNS、ネットショッピングを楽しむ高齢者は、もう珍しくありません。
ここで問題になるのが、「一人暮らし」と「デジタル」が重なったときのリスクです。
警察庁が2025年に公表した『令和6年における一人暮らしの人の自宅における死亡者に関する集計』によると、2024年の1年間に自宅で亡くなった一人暮らしの人は全国で7万6,020人にのぼります。そのうち約76%にあたる5万8,044人が65歳以上でした。
(出典:警察庁)
さらに見過ごせないのが、発見までの時間です。
65歳以上の人のうち、亡くなってから発見されるまでに「1カ月以上」かかったケースが7.8%というデータもあります。
一人暮らしは、異変にすぐ気づいてくれる家族がそばにいません。
発見が遅れれば、その間もスマホやネットの中の情報・契約は、手つかずのまま残り続けます。
なぜ「一人暮らし」だとデジタル終活が重要なのか

一人暮らしのデジタル終活が大切な理由は、大きく3つあります。
①異変に気づく人が、そばにいない
同居の家族がいれば、「最近スマホをよく見ている」「この支払いは何だろう」と、自然に気づくきっかけがあります。
一人暮らしだと、その「気づき」がありません。
亡くなった後はもちろん、入院や認知症で判断が難しくなったときも、デジタルの情報はすぐにブラックボックスになってしまいます。
②手がかりが、本人のスマホの中だけにある
ネット上の契約は、紙の通知が届かないものがほとんどです。
「どこに、何があるか」が本人の頭とスマホの中だけにあると、家族は手がかりすらつかめません。
③課金や契約が、止まらないまま残る
多くの契約は、解約しないかぎり自動で課金が続きます。
気づく人がいなければ、ムダな支出が止まらないまま積み重なります。
一人暮らしの高齢者に起こりやすい「デジタルの困りごと」
実際に、一人暮らしの方の身に起こりやすいのは、次のようなケースです。
- スマホやパソコンにロックがかかり、誰も開けない
- ネット銀行・ネット証券の口座が把握されず、財産が宙に浮く
- サブスクや通信費が、解約されないまま引き落とされ続ける
- SNSやメール、写真がそのまま残り、止め方がわからない
- 有料アプリの「自動更新」に、家族がずっと気づかない
どれも、本人にとっては「いつものこと」です。
ですが、残された人にとっては、何から手をつければいいのかわからない大きな負担になります。
今日からできる|一人暮らしのデジタル終活 4ステップ

「難しそう」と感じるかもしれませんが、やることはシンプルです。
一人暮らしの方でも、今日から始められる4つのステップを紹介します。
ステップ1:デジタル資産を書き出す
まずは、自分が使っているデジタルのものを、すべて書き出してみましょう。
スマホ・パソコンのほか、ネット銀行、ネット証券、サブスク、SNS、メールなど。
「何を使っているか」を見える形にすることが、第一歩です。
ステップ2:「ありか」と最低限の手がかりを残す
次に、それぞれの「ありか」をメモに残します。
パスワードそのものを書き出す必要はありません。「ここに一覧がある」「この銀行を使っている」と、たどり着くための手がかりを残しておくだけで十分です。
エンディングノートにまとめておくと、もしものときに役立ちます。
ステップ3:信頼できる人に「もしも」を託す
一人暮らしでいちばん難しいのが、この「託す相手」です。
パスワードそのものを伝える必要はありません。「もしものときは、ここを見てほしい」と、信頼できる誰か一人に伝えておくだけで十分です。
それだけで、残された人の負担はまるで違ってきます。
ステップ4:年に一度、見直す
サービスの契約は、知らないうちに増えたり減ったりします。
誕生日など、年に一度のタイミングで一覧を見直すと、情報が古くならずに済みます。
「一人だからこそ」専門家との事前連携が安心につながる
一人暮らしの終活でいちばんの壁は、「誰に頼めばいいか」です。
同居する家族がいないと、いざというときに動いてくれる人を、自分で決めておく必要があります。
だからこそ、元気で判断できるうちに、専門家と事前につながっておくことをおすすめします。
デジタル終活を専門にサポートするサービスなら、「何を準備すればいいか」「誰に何を託すか」を一緒に整理してくれます。
一人で抱え込まず、早めに相談しておくこと。それが、一人暮らしの方にとって、いちばん確実な備えになります。
介護の現場から伝えたいこと

ここで、現場で15年以上過ごしてきた私から、ひとつお伝えしたいことがあります。
私が関わってきた一人暮らしの方の中にも、亡くなった後、遠方のご家族が「スマホも開けない、どんな契約があるのかもわからない」と困り果てたケースがありました。
契約をひとつずつ調べ、解約するのに、何カ月もかかってしまったといいます。
そのご家族が口をそろえて言うのは、「元気なうちに、少しだけでも聞いておけばよかった」ということです。
デジタル終活は、難しい手続きではありません。
「ここを見てね」と、たった一つの手がかりを残しておくだけで、残された人の負担は大きく変わります。
一人暮らしだからこそ、そのひと手間が、家族や周囲への何よりの思いやりになります。
判断できる今だからこそ、落ち着いて準備を進められます。
まとめ
一人暮らしの高齢者にとって、デジタル終活は「もしも」への大切な備えです。
スマホやネットが当たり前になった今、デジタルの情報や契約は、誰の身にも残ります。
一人暮らしは、異変に気づいてくれる家族がそばにいない分、その情報が放置されやすくなります。
ここまで見てきたように、放置されたデジタルは——スマホが開けない、口座がわからない、課金が止まらない——という形で、残された家族の負担になります。
逆に言えば、生前にやることはシンプルです。
- デジタル資産を書き出す
- 「ありか」と手がかりを残す
- 信頼できる人に伝える
- 年に一度、見直す
判断できる今だからこそ、落ち着いて準備を進められます。
「一人で進めるのは不安」「何から手をつければいいかわからない」という方は、デジタル終活を専門にサポートするサービスに相談するのもおすすめです。
専門家と一緒に進めれば、見落としもなく、安心して備えを終えられます。
一人暮らしだからこそ、自分のためにも、大切な人のためにも。
判断できる今こそ、小さな一歩を踏み出してみませんか。
この記事の監修者

yusuke
介護福祉士・FP3級
介護福祉士として15年以上、介護現場でご利用者やご家族と接してきました。現在は個人事業主として介護タクシーを運営。FP3級。介護の現場で見てきた「本当に困ること」をもとに、終活・介護・お金の話を、わかりやすくお伝えしています。
出典
- 内閣府「令和6年版 高齢社会白書」(65歳以上の一人暮らしの割合)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_3.html - 総務省「令和6年版 情報通信白書」(年代別インターネット利用率)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b120.html - 警察庁による2024年の年間集計(自宅で亡くなった一人暮らしの人/2025年4月11日公表。報道:日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO87992270R10C25A4CM0000/


