「うちの場合、相続人は誰になるんだろう。それぞれ、いくら受け取れるんだろう」
親の介護が始まったり、ご自身の終活を考え始めたりすると、ふと気になる疑問ではないでしょうか。
結論からお伝えします。
誰が相続人になるかと、受け取れる割合の目安は、民法で決まっています。
「配偶者は常に相続人、そのほかの家族は3つの順位で決まる」——仕組みはこれだけです。
ただし、注意点が2つ。
1つめは割合はあくまで目安で、必ずそのとおりに分けるわけではないということ。
2つめは「長男だから多くもらえる」のような、思い込みと法律が食い違うポイントもたくさんあるということ。
私は介護福祉士として15年以上、介護の現場でご利用者やご家族と接してきました。
この記事では、法定相続人の範囲と相続順位・法定相続分の計算方法・よくある疑問に対する答えを解説していきます。
読み終えるころには、ご自身の家族構成で「誰が・いくら」の見当がつけられるようになるはずです。
ご家族で話し合うときの土台として、まずは範囲から確認していきましょう。
法定相続人とは|遺産を受け取れる人は民法で決まっている
法定相続人とは、民法で定められた、遺産を相続する権利をもつ人のことです。
遺言書がない場合、遺産は法定相続人のものになります。
誰が法定相続人かを知ることが、相続の話し合いの出発点です。
遺言書がないまま相続を迎えると何が起こるかは、別の記事で詳しく解説しています。
そして、いちばん大切なルールをひとつ。
配偶者は、常に相続人になります(民法890条)。
夫または妻が亡くなれば、残された配偶者は必ず相続人になるということです。
相続順位は3段階|子→親→兄弟姉妹の順で決まる

では、配偶者以外の家族はどう決まるのでしょうか。ここで「順位」が登場します。
配偶者以外の相続人は、次の相続順位で決まります(民法887条・889条)。
- 第1順位……子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位……父母などの直系尊属(父母がいなければ祖父母)
- 第3順位……兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)
ルールはシンプルです。
上の順位の人が1人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。子がいる場合、親や兄弟姉妹は相続人にならない、ということです。
もうひとつ、知っておきたいのが代襲相続です。
本来相続人になるはずだった人が先に亡くなっている場合、その子が代わりに相続します。
- 子が亡くなっている……孫が相続。孫も亡くなっていれば、ひ孫へと引き継がれる
- 兄弟姉妹が亡くなっている……甥・姪が相続。ただし、甥・姪の子には引き継がれない(一代限り)
相続人が誰かは、このような相続順位で決まります。
法定相続分の計算方法|家族の組み合わせで割合が変わる

では、次は「いくら受け取れるのか」です。
法定相続分とは、民法が定めた遺産の取り分の目安です(民法900条)。
配偶者と、誰が一緒に相続するかの組み合わせで変わります。
- 配偶者と子……配偶者2分の1・子2分の1
- 配偶者と直系尊属……配偶者3分の2・直系尊属3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹……配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1
同じ立場の人が複数いるときは、その取り分を人数で均等に分けます。子が2人なら、2分の1をさらに半分ずつです。
配偶者がすでに亡くなっている場合は、その順位の人たちだけで、遺産全体を均等に分けます。
言葉だけでは分かりにくいので、次は実際の金額で見てみましょう。
遺産6,000万円の計算例|家族構成で取り分はこう変わる
遺産6,000万円を、3つの家族構成で計算してみます。
【①相続人が妻と子ども2人】
- 妻……6,000万円 × 2分の1 = 3,000万円
- 子……6,000万円 × 2分の1 ÷ 2人 = 各1,500万円
【②相続人が妻と父母】(子のないご夫婦で、親が健在の場合)
- 妻……6,000万円 × 3分の2 = 4,000万円
- 父母……6,000万円 × 3分の1 ÷ 2人 = 各1,000万円
【③相続人が妻と兄1人】(子がなく、親も他界している場合)
- 妻……6,000万円 × 4分の3 = 4,500万円
- 兄……6,000万円 × 4分の1 = 1,500万円
同じ遺産でも、家族構成しだいで妻の取り分は3,000万円から4,500万円まで変わります。
「どの組み合わせか」を知っておくことが、そのまま相続の見通しになります。
よくある疑問を解消|長男でも取り分は同じ

ここからは、現場でもよく耳にする疑問をまとめました。
勘違いしやすいポイントなので、参考にしてください。
Q1. 長男だから多くもらえる?
A.いいえ。子の相続分は、生まれ順や性別に関係なく全員均等です。
Q2. 内縁の妻・夫も相続できる?
A.いいえ。婚姻届を出していない場合、どれだけ長く連れ添っても相続人にはなれません。財産を残したいなら遺言書が必要です。
Q3. 子の配偶者(嫁・婿)も相続できる?
A.いいえ。介護を担っていても、相続人にはなれません。
Q4. 離婚した元配偶者にも権利がある?
A.いいえ。元配偶者は相続人になれません。ただし、その間に生まれた子は相続人のままです。
Q5. 相続放棄しても順位は変わらない?
A.いいえ。放棄した人は、初めから相続人でなかったものとして扱われます(民法939条)。
同じ順位の全員が放棄すると、相続権は次の順位の人に移ります。なお、亡くなった場合と違い、放棄した人の子が代襲することはありません。
ほかにも細かい決まりがあるため、複雑なご家庭の事情がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に確認してください。
法定相続分はあくまで目安|話し合いや遺言で変えられる
そして、法定相続のいちばん大切な前提をお伝えします。
冒頭でもお伝えした通り、法定相続分どおりに分ける義務はありません。
相続人全員の話し合い(遺産分割協議)がまとまれば、分け方は自由に決められます。
「自宅は同居していた長女に、預貯金は長男に」といった柔軟な分け方も可能です。
また、遺言書があれば、原則として遺言の内容が優先されます。
ただし、配偶者や子などには遺言でも奪えない最低限の取り分(遺留分)がある——この点は別の記事で詳しく解説しています。
法定相続分は「もめたときの物差し」であり、「必ずそう分けろ」という決まりではない——この距離感で覚えておいてください。
介護の現場から伝えたいこと

介護の現場では「誰が相続人になるのかを家族の誰も正確に知らない」という話をよく聞きます。
特に、子のないご夫婦や、兄弟姉妹の多いご家庭では、「まさかこの人が相続人になるとは」という事実が、争いの火種になりがちです。
配偶者と義理の兄弟姉妹が遺産の話し合いをする——想像するだけで、気が重くなりませんか。
だからこそ、元気なうちにご自身の家族構成で相続人を確かめておくことをおすすめします。
相続人の範囲が分かれば、遺言書が必要かどうかの判断もつくはずです。
相続人が誰になるかを知ることは、家族への思いやりの準備だと感じています。
まとめ|法定相続人の範囲と法定相続分を知ることが相続の第一歩
最後に、法定相続人のポイントを整理します。
【範囲と相続順位】
- 配偶者は常に相続人
- そのほかは第1順位=子・第2順位=直系尊属・第3順位=兄弟姉妹の順
- 先に亡くなった相続人の分は子が引き継ぐ(兄弟姉妹の場合は甥・姪まで)
【法定相続分】
- 配偶者と子=各2分の1/配偶者と直系尊属=3分の2と3分の1/配偶者と兄弟姉妹=4分の3と4分の1
- 同じ立場が複数なら人数で均等(長男でも取り分は同じ)
- 法定相続分は目安。話し合いや遺言で分け方は変えられる
相続人の範囲も取り分も、正確に考えるには財産の全体像が欠かせません。
ネット銀行や証券口座などのデジタル資産も含めた財産のリストづくりは、デジタル終活サービス「デジ・タクセル」を使えば効率よく進められます。
まずは紙にご自身の家系図を書いて、相続人に丸をつけてみるところから始めてみてください。
その1枚が、ご家族の話し合いのいちばんの土台になります。
この記事の監修者

yusuke /介護福祉士・FP3級
介護福祉士として15年以上、介護現場でご利用者やご家族と接してきました。
現在は個人事業主として介護タクシーを運営。介護の現場で見てきた「本当に困ること」をもとに、終活・介護・お金の話を、わかりやすくお伝えしています。
出典
- 民法第887条・第889条・第890条・第900条・第939条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

