AIに終活を手伝ってもらう時代——ChatGPTやClaudeを活用した「デジタル終活」の最前線

Img261025

「エンディングノート、買ったんだけどね。まだ1ページも書けていないの」

介護の現場で、このような声を何度かお聞きしてきました。
書きたい気持ちはあるのに、白紙のページを前にすると手が止まる——終活のいちばん最初にある壁です。

その壁を越える方法の1つが、「AIに終活を手伝ってもらうこと」です。

いまは、ChatGPTやClaudeといった生成AIと会話しながら終活を進められる時代になっています。
AIが質問役になってくれるので、「何から書けばいいか分からない」が「聞かれたことに答えるだけ」に変わるからです。

ただし、便利さの裏には個人情報を入力してしまうリスクという落とし穴もあります。
国の機関である個人情報保護委員会も、生成AIの使い方について注意喚起を出しているほどです。

私は介護福祉士として15年以上現場に立ち、いまは仕事の下調べや文章の下書き、事業の運営に生成AIを毎日使っています。
この記事では、AIを終活に活かす具体的な方法と、入力してはいけない情報の線引き、そしてAIに任せてはいけないことをお伝えします。

読み終えるころには、お手元のスマホやパソコンで、今日から安全にAI終活を始められるようになるはずです。

目次

AI終活とは|生成AIと会話しながら進める新しいデジタル終活

終活・デジタル遺品の写真

AI終活とは、ChatGPTやClaudeのような生成AIに相談しながら、エンディングノートづくりや財産の整理を進める方法のことです。
デジタル終活の新しい入り口として、注目が集まっています。

生成AIとは、質問や指示を文字で入力すると、文章で答えてくれるサービスを指します。
スマホのアプリやインターネットの画面から使え、多くのサービスは無料から始められます。難しい操作はなく、メッセージを送る感覚で使えます。

なぜ終活と相性がいいのでしょうか。
終活が止まるいちばんの原因は「何を書けばいいか分からない」ことで、生成AIはその「何を」を質問してくれるからです。

白紙を前にすると書けない人でも、聞かれれば話せる——AIは、終活の苦手な部分だけをちょうど埋めてくれる相談相手になってくれます。

データで見る|エンディングノートは9割近くが「用意していない」

とはいえ、「エンディングノートを書けずにいるのは自分だけでは?」と思われるかもしれません。

エンディングノートとは、ご自身の希望や大切な情報を、自由な形式で書き残しておくノートのことです。

財産の一覧、医療や介護の希望、葬儀のこと、家族へのメッセージ——書く内容にも書き方にも、決まりはありません。

市販のノートでも、スマホのメモアプリでも作れます。
ただ、これだけ自由で手軽なのに、実際に書いている人はごくわずかです。

データで現状を確認してみましょう。

少し前になりますが、楽天インサイトの2018年の調査では、エンディングノートを知っている人は82.8%にのぼるという結果が出ています。
一方で、用意していない人は86.0%と9割近くを占めました。

「いつか書こう」と思ったまま、何年も経ってしまう。
多くの方が、この状態で止まっているということです。

この「いつか書こう」を「今日から書いてみよう」に変える道具として、生成AIは心強い存在です。

なお、エンディングノートの詳しい説明や遺言書との役割の違いは、別の記事で解説しています。

ChatGPTやClaudeを終活に活かす活用術3つ

3ステップ図=「AI終活の始め方を3ステップで示した図。ステップ1は生成AIに、エンディングノートを作りたいので必要な項目を1つずつ質問してくださいと話しかける。ステップ2はAIからの質問に話し言葉で答える。ステップ3はここまでの内容をまとめてくださいと頼んで下書きを受け取る。書くのではなく会話しているうちに書き上がるのがポイント」

では、具体的に生成AIを終活にどう使えばいいのでしょうか。
ここからは、今日から試せる活用術を3つ紹介します。

生成AIを使うコツは、「文章を書かせることではなく、質問させる」ことです。
このコツを頭に置いて、活用術を順番に見ていきましょう。

活用術①エンディングノートの下書き|AIに質問役を頼む

エンディングノートづくりでは、AIにこう入力してみてください。

「エンディングノートを作りたいです。必要な項目を1つずつ質問してください。私の答えをまとめて、下書きにしてください」

すると、AIが「大切にしてきたものは何ですか」「医療について希望はありますか」など、一問一答で聞いてくれます。
あなたは、聞かれたことに話し言葉で答えるだけです。

ひととおり答えたら「ここまでの内容をまとめてください」と頼めば、下書きが出来上がります。

書くのではなく、会話しているうちに書き上がっている——ここがAI活用のいちばんの魅力です。

活用術②財産リスト(遺産リスト)の整理を手伝ってもらう

財産リストづくりでは、AIは抜け漏れのチェック役として活躍します。

まず「財産リストに載せるべき項目を挙げてください」と頼みます。

並ぶのは預貯金・保険・不動産といった定番の項目だけではありません。ネット銀行・ネット証券・スマホの有料サービスといった、見落としやすいデジタルの財産まで一覧にしてくれます。

デジタルの財産は通帳のような形が残らないため、ご家族が存在に気づけないことも珍しくありません。
AIに項目の一覧を出してもらい、ご自身で1つずつ「ある・ない」を確認していくやり方がおすすめです。

ただし、このとき口座番号や暗証番号そのものをAIに入力してはいけません。
理由は次の章で詳しくお伝えします。

活用術③家族へのメッセージをいっしょに整える

「伝えたい気持ちはあるのに、文章にすると照れくさい」——そんなときもAIの出番です。

伝えたいことを箇条書きで入力して、「手紙の形に整えてください」と頼んでみてください。
「かしこまりすぎない口調で」「短めに」といった注文もできます。

そして、出てきた文章をそのまま使う必要はありません。
しっくりくる言葉だけを拾って自分の言葉に直せば、世界に1つのメッセージになります。

ここまで、AIの終活における便利な使い方を見てきました。

AIに入れてはいけない個人情報|国も注意喚起を出している

「生成AIに入れていい情報と入れてはいけない情報の早見表。入れていいのは財産の種類・家族の続柄・希望や気持ちといった、種類やおおまかな内容。入れてはいけないのは氏名・住所・電話番号、口座番号・暗証番号・パスワード類、マイナンバーや保険証などの番号。種類だけを書いて番号や名前は伏せるのがポイント」

AIを使うにあたって、最低限注意すべき点——
それは、生成AIに「個人を特定できる情報や、財産の番号を入力しない」ということです。

個人情報を守る国の機関である個人情報保護委員会は、2023年(令和5年)6月、生成AIサービスの利用について注意喚起を出しました。
一般の利用者に向けた留意点には、次のように書かれています。

生成AIサービスでは、入力された個人情報が、生成AIの機械学習に利用されることがあり、他の情報と統計的に結びついた上で、また、正確又は不正確な内容で、生成AIサービスから出力されるリスクがある。

かみ砕くと、入力した内容がAIの学習材料になり、思わぬ形でほかの誰かへの回答に混ざる可能性がゼロではない、ということです。
終活の相談は財産や家族の話が中心になるだけに、入力する内容には注意が必要です。

具体的には、次の情報は入力しないでください。

  • 氏名・住所・電話番号(ご自身だけでなくご家族の分も)
  • 口座番号・暗証番号・パスワード類
  • マイナンバーや保険証などの番号

といっても、難しく考える必要はありません。
「A銀行に普通預金がある」のように、種類だけを書いて番号や名前は伏せる——この線引きだけでも、リスクは大きく減らせます。

番号などの具体的な中身は、AIの画面ではなく、手元のノートや安全なサービスに残しましょう。

また、生成AIサービスの中には、入力内容を学習に使わせない設定を選べるものもあります。
注意喚起でも利用規約などの確認が呼びかけられているので、お使いのサービスの設定画面を一度のぞいてみてください。

AIに任せてはいけないこと|下書きはAIでも決めるのは自分

バツのポーズをとる女性

個人情報のほかにも、AIに任せてはいけないことが3つあります。

1つめは、事実の確認です。
先ほどの注意喚起でも、AIの回答には不正確な内容が含まれるリスクが指摘されています。制度やお金の数字は、必ず公式サイトなどで確かめてください。

2つめは、決断です。
医療の希望も、財産の分け方も、決めるのはAIではなく、あなたとご家族です。AIの答えは、考えるための材料にとどめましょう。

3つめは、法的な効力が必要な書類づくりです。
エンディングノートには法的効力がなく、財産の行き先を法的に決めるには遺言書が必要になります。
そして遺言書は、書き方(方式)が法律で厳格に決まっているため、AIが作った文面を印刷しただけでは遺言書として通用しません。

AIが書いたエンディングノートや遺言書の法的な扱いは、別の記事で詳しく解説します。

「下書きはAI・確認と決断は自分」——役割分担さえ間違えなければ、AIは終活の強い味方になります。

介護の現場から|AIを毎日使って感じること

パソコンで説明する女性と高齢者夫婦

ここまでお伝えした使い方も注意点も、じつは私が毎日実感していることです。
私自身、仕事の下調べや文章の下書き、そして介護タクシーの事業運営に、生成AIを毎日使っています。

使い続けて感じるのは、AIは答えを出す機械というより、頭の中を言葉にしてくれる聞き役だということです。
ぼんやりした考えを話しかけると質問が返ってきて、答えているうちに、自分の考えが形になっていきます。

介護の現場では、「子どもに迷惑をかけたくない。でも、何から手をつければいいか分からない」という声をたくさん聞いてきました。
白紙のノートを前に固まってしまう方にこそ、話しながら進められるAIという選択肢を知ってほしいと思っています。

道具は新しくても、やっていることは昔ながらの聞き書きと同じです。
身構えず、雑談のつもりで話しかけてみてください。

まとめ|AI終活は「下書きはAI・決めるのは自分」で始めよう

最後に、AI終活のポイントを整理します。

【ChatGPTやClaudeでできること】

  • エンディングノートの下書き(AIに質問役を頼む)
  • 財産リスト(遺産リスト)の抜け漏れチェック
  • 家族へのメッセージの推敲

【AIを使う上で必ず守りたい注意点】

  • 氏名・住所・口座番号・暗証番号などの個人情報は入力しない
  • AIの回答をうのみにせず、事実は公式の情報で確認する
  • 決断と、法的な効力が必要な書類はAIに任せない

AIで下書きした財産リストの中身——口座やID・パスワードといった大切な情報は、AIの画面ではなく安全な場所に残す必要があります。
デジタル終活サービス「デジ・タクセル」なら、デジタル資産の情報を整理して、大切なご家族に確実に引き継ぐ準備ができます。

難しく考えなくて大丈夫です。
まずは今夜、スマホの生成AIに「エンディングノートに必要な項目を、1つずつ質問してください」と話しかけてみてください。

その一言が、止まっていた終活を動かす第一歩になります。

この記事の監修者

監修者用写真

yusuke /介護福祉士・FP3級

介護福祉士として15年以上、介護現場でご利用者やご家族と接してきました。
現在は個人事業主として介護タクシーを運営。介護の現場で見てきた「本当に困ること」をもとに、終活・介護・お金の話を、わかりやすくお伝えしています。

出典

目次