スマホ1台で完結するできる今、デジタル資産のお悩みが急増しています。特に相続時のトラブルは消費生活センターにも寄せられているため、あらかじめ対策が欠かせません。
スマホの普及とともに、年齢や性別問わずにインターネット上で金融資産の取引や保管が増加しています。
こうした「デジタル資産」はスマホ1台ですべてが完結するため便利である一方で、相続時には亡くなられたご家族の資産状況が把握できず、大きなトラブルに発展しています。
消費生活センターにも相談が急増しており、デジタル資産の在り方や相続には生前から注意が必要です。そこで、本記事では消費生活センターへの相談内容に触れながら、デジタル資産のよくあるトラブルを解説します
消費生活センターに寄せられる「デジタル資産」のトラブルとは
スマホやインターネットの普及により、私たちの生活は大きくデジタル化しています。銀行口座や暗号資産(仮想通貨)、サブスクリプション契約など、目に見えない「デジタル資産」が増える一方で、それにまつわるトラブルも増加傾向にあります。消費生活センターにも以下のような相談が多く寄せられています。
サブスクなどの契約を解約できない
ご家族が亡くなられると遺品整理を進める必要があります。多くの方が生前にスマホを所有しているため、サブスクやキャリアの契約の解約も行う必要があります。
しかし、契約の中にはロックがかかっており、どのような契約状況なのかわからないケースも少なくありません。「契約内容がわからず、解約の手続きが進められない」という相談は消費生活センターにも多く寄せられています。
IDやパスワードがわからず相続財産が不明
インターネットバンキングや暗号資産のウォレットは、ログイン情報がなければアクセスできません。本人しか知らないID・パスワードがあると、相続人が資産を把握できず、事実上「消失」してしまう可能性もあります。また、不明なまま放置していても税務署の調査で財産が発覚するおそれもあり「税務調査」が行われたり、追徴課税を受けたりするリスクもあります。
相続手続きをうまく進めてもらえない
一般的な金融機関や証券会社は相続手続きに慣れており、ご遺族向けの窓口を開設しています。必要書類の用意や解約もスムーズにできますが、サブスク契約など一部のサービスでは、本人死亡後の手続きに必要な書類や手順が不透明だったり、対応するスタッフが不慣れだったりして、相続がスムーズに進まないこともあります。
特に海外サービスや暗号資産の場合は相続にまつわる法律も大きく異なるため、相続手続きが思うように進まないというリスクもあります。
なぜデジタル資産のトラブルは起きる?
こうした問題はなぜ起きるのでしょうか。デジタル資産が増加する今、トラブルが起きてしまう背景にはいくつかの要因が絡んでいます。詳しくは以下のとおりです。
ロック解除に必要な情報が共有されていない
スマホやパソコンのロック解除に必要なパスワード、生体認証設定などが家族に伝えられていないと、必要な情報にアクセスできません。近年はセキュリティの強化により、第三者が解除することが難しくなっています。
相続手続きに不慣れな業者も多い
一部のオンラインサービスでは、相続に関するガイドラインが整っていない、対応が後手になるといったケースがあります。利用者が急増している一方で、サービス提供側の対応が追いついていないことも原因の1つです。
ゲームや音楽配信、SNSなど有料契約で提供されているサービスは多岐に上っており、解約漏れがないように注意する必要があります。
デジタル資産に関する知識不足
被相続人の生前の金融資産やサブスクなどの契約状況を把握していないだけではなく、デジタル資産の存在自体を知らない、相続対象になるという認識がない、といった相続人側の知識不足のケースも少なくありません。
知識不足が原因で放置された資産が、結果的に失われたり、相続トラブルになってしまったりすることもあるのです。
見えない契約に困惑されない4つのヒント
相続時は相続手続きだけではなく、遺品整理や賃貸契約の解約など、やらなければいけない多くのことが相続人側に発生します。1つでもトラブルが発生すると相続人の日常生活に大きな支障を及ぼすため、生前から「相続対策」を進めることが大切です。
そこで、本章では知っておきたい生前の備えとして4つのポイントを解説します。
エンディングノートの活用
パスワードや契約中のサービス、資産の一覧などを記録できる「エンディングノート」は、デジタル資産の管理にも役立ちます。
エンディングノートの法的拘束力はないものの、自由に記載でき、ノートがあれば作成できるため費用もかかりません。サブスクなどの契約状況、金融資産の場所やパスワードなどを記載し、保管場所をご家族に伝えておくことが重要です。
遺言書の作成
デジタル資産も相続の対象です。不動産や預貯金口座などと一緒に遺言書に記載することで、遺族が円滑に相続手続きを行えるようになります。
特に暗号資産や価値のあるオンラインアカウントを持っている場合は、早めの対策が必須です。
アカウントの継承者を指定する
一部のサービスでは、アカウントの継承者をあらかじめ指定できる機能があります(例:Google アカウントの「アカウント無効化管理ツール」など)。事前に設定しておけば、万が一の際にもスムーズに管理を引き継ぐことができます。
ご自身の死後に解約してほしいSNSなどがある場合も、こうした継承者サービスをあらかじめ登録しておくようにしましょう。
高額資産は早めに専門家に相談しておく
暗号資産や海外の証券口座など、専門性が高い資産を保有している場合は、弁護士や税理士に生前からしっかりと相談し、相続時の対策を万全な状態にしておきましょう。弁護士や税理士へ相談するメリットは、主に以下です。
- 遺言執行者の指定の相談、依頼ができる
- 相続税対策を相談でき、贈与などの生前からの対策もアドバイスが受けられる
- 相続人間の紛争に備えるなど、法律的なトラブル回避策がわかる
デジタル資産の専門家を知っておこう
相続の場面では、専門知識を持ったプロの力が必要になることもあります。特に年々増加傾向にあるデジタル資産については、「デジタル遺産」となり、相続手続きが始まった際のトラブルをあらかじめ防ぐためにも信頼できる専門家を知っておくことが重要です。
パスワードがわからない、などのお悩みは最寄りの消費生活センターに相談できます。しかし、相談を担当できる消費生活相談員などの専門家はデジタル遺産の調査や解約を担うことはできません。迅速な解決のためにも、デジタル遺産のお悩みを専門家に相談すべきメリットを知っておきましょう。(※)
※消費生活全般に関するお悩みで、詐欺など対応してもらえるケースもあります。悩んだら最寄りの消費生活センター(消費者センター)に相談、もしくは188に電話してみましょう
パスワード解除や暗号資産の悩みに強い
スマホやPCのロック解除、暗号資産のウォレットへのアクセスなど、特殊な技術が求められる場面では、ITやセキュリティに強い専門家が頼りになります。
特に相続開始後は解約や相続税申告に向けた計算、遺産分割協議などを行う必要があり、被相続人の生前の資産状況の確認作業が欠かせません。専門家に解除などのお悩みを速やかに相談しましょう。
法的にも安全に資産調査が可能
パスワードの解除やデジタル遺産の調査には、専門知識だけではなく法令順守も必要です。ご自身で調査を進めようとする不正アクセス禁止法違反に該当するおそれがあります。法的な手続きをふまえた調査や、適切な対応ができる専門家に依頼すれば、トラブルのリスクを最小限に抑えられます。
まとめ
デジタル資産は、目に見えないがゆえにトラブルのリスクも高くなります。しかし、生前のちょっとした準備や悩みは専門家のサポートを活用することで、多くの問題を未然に防ぐことが可能です。
「自分には関係ない」と思わず、今からできることを一つずつ始めてみましょう。
家族の安心にもつながる終活が大切です。
参考URL 独立行政法人 国民生活センター 今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-

